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- 精神障害のある方と共に働く上でのポイントと障害特性
- 精神障害(精神疾患)の特性(代表例)
精神障害(精神疾患)の特性(代表例)
- ※厚生労働省「障害者差別解消法福祉事業者向けガイドライン」を参考に記載
統合失調症
- 発症の原因はよくわかっていないが、100人に1人弱かかる、比較的一般的な病気である。
- 「幻覚」や「妄想」が特徴的な症状だが、その他にも様々な生活のしづらさが障害として表れることが知られている。
- 陽性症状
幻覚 実態がなく他人には認識できないが、本人には感じ取れる感覚のこと。なかでも、自分の悪口やうわさ、指図する声等が聞こえる幻聴が多い。 妄想 明らかに誤った内容を信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのこと。誰かにいやがらせをされているという被害妄想、周囲のことが何でも自分に関係しているように思える関係妄想などがある。 - 陰性症状
意欲が低下し、以前からの趣味や楽しみにしていたことに興味を示さなくなる。 疲れやすく集中力が保てず、人づきあいを避け引きこもりがちになる。 入浴や着替えなど清潔を保つことが苦手となる。 など
- 認知や行動の障害
考えがまとまりにくく何が言いたいのか分からなくなる。 相手の話の内容がつかめず、周囲にうまく合わせることができない。 など
- 統合失調症は脳の病気であることを理解し、病気について正しい知識を学ぶ必要がある。
- 薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する。
- 社会との接点を保つことも治療となるため、本人が病気と付き合いながら、他人と交流したり、仕事に就くことを見守る。
- 一方で、ストレスや環境の変化に弱いことを理解し、配慮した対応を心がける。
- 一度に多くの情報が入ると混乱するので、伝える情報は紙に書くなどして整理してゆっくり具体的に伝えることを心がける。
- 症状が強い時には無理をさせず、しっかりと休養をとったり、速やかに主治医を受診することなどを促す。
気分障害
- 気分の波が主な症状として表れる病気。うつ状態のみを認める時はうつ病と呼び、うつ状態と躁状態を繰り返す場合には、双極性障害(躁うつ病)と呼ぶ。
- うつ状態では気持ちが強く落ち込み、何事にもやる気が出ない、疲れやすい、考えが働かない、自分が価値のない人間のように思える、死ぬことばかり考えてしまい実行に移そうとするなどの症状がでる。
- 躁状態では気持ちが過剰に高揚し、普段ならあり得ないような浪費をしたり、ほとんど眠らずに働き続けたりする。その一方で、ちょっとした事にも敏感に反応し、他人に対して怒りっぽくなったり、自分は何でもできると思い込んで人の話を聞かなくなったりする。
- 専門家の診察の上で、家族や本人、周囲の人が病気について理解する。
- 薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する。
- うつ状態の時は無理をさせず、しっかりと休養をとれるよう配慮する。
- 躁状態の時は、金銭の管理、安全の管理などに気を付け、対応が難しい時には専門家に相談する。
- 自分を傷つけてしまったり、自殺に至ったりすることもあるため、自殺などを疑わせるような言動があった場合には、本人の安全に配慮した上で、速やかに専門家に相談するよう本人や家族等に促す。
てんかん
- 何らかの原因で、一時的に脳の一部が過剰に興奮することにより、発作が起きる。
- 発作には、けいれんを伴うもの、突然意識を失うもの、意識はあるが認知の変化を伴うものなど、様々なタイプのものがある。
- 誰もがかかる可能性がある病気であり、専門家の指導の下に内服治療を行うことで、多くの者が一般的な生活が送れることを理解する。
- 発作が起こっていないほとんどの時間は普通の生活が可能なので、発作がコントロールされている場合は、過剰に活動を制限しない。
- 内服を適切に続けることが重要である。また、発作が起こってしまった場合には、本人の安全を確保した上で専門機関に相談する。
依存症
- 適度な依存を逸脱し、その行為を繰り返さないと満足できない状態となり、自らの力では止めることができなくなった結果、心身に障害が生じたり家庭生活や社会生活に悪影響が及ぶに至る。
- 代表的な依存の対象として、アルコール、薬物およびギャンブル等がある。
- 本人に病識がなく(場合によっては家族も)、依存症は治療を必要とする病気であるということを、本人・家族・周囲が理解する。
- 他者からの非難などの厳しい現実から逃れるために、さらに依存が強まるという可能性があるため、家族も同伴の上で、依存症の専門家に相談する。
- 一度依存対象を断っても、再度依存してしまうことがあるため、根気強く本人を見守る。
高次脳機能障害
交通事故や脳血管障害などの病気により、脳にダメージを受けることで生じる認知や行動に生じる障害。身体的には障害が残らないことも多く、外見ではわかりにくいため「見えない障害」とも言われている。
- 以下の症状が現れる場合がある。
記憶障害 すぐに忘れてしまったり、新しい出来事を覚えたりすることが苦手なため、何度も同じことを繰り返したり質問したりする。 注意障害 集中力が続かなかったり、ぼんやりしてしまい、何かをするとミスをしたりすることが多く見られる。
二つのことを同時にしようとすると混乱する。
主に左側で、食べ物を残したり、障害物に気がつかなかったりすることがある。遂行機能障害 自分で計画を立てて物事を実行したり、効率よく順序立てたりできない。 社会的行動障害 ささいなことでイライラしてしまい、興奮しやすい。
こだわりが強く表れたり、欲しいものを我慢したりすることができない。
思い通りにならないと大声を出したり、時に暴力をふるったりする。病識欠如 上記のような症状があることに気づかず、できるつもりで行動してトラブルになる。 - 失語症(聞くこと・話すこと・読むこと・書くことの障害)を伴う場合がある。
- 片麻痺や運動失調等の運動障害や眼や耳の損傷による感覚障害を持つ場合がある。
- 本障害に詳しいリハビリテーション専門医やリハ専門職、高次脳機能障害支援普及拠点機関、家族会等に相談する。
- 記憶障害
手がかりがあると思い出せるので、手帳やメモ、アラームを利用したり、ルートマップを持ち歩いてもらったりなどする。 自分でメモを取ってもらい、双方で確認する。 残存する受障前の知識や経験を活用する(例えば、過去に記憶している自宅周囲では迷わず行動できるなど)。 - 注意障害
短時間なら集中できる場合もあるので、こまめに休憩をとるなどする。 ひとつずつ順番にやる。 左側に危険なものを置かない。 - 遂行機能障害
手順書を利用する。 段取りを決めて目につくところに掲示する。 スケジュール表を見ながら行動したり、チェックリストで確認したりする。 - 社会的行動障害
感情をコントロールできない状態にあるときは、上手に話題や場所を変えてクールダウンを図る。 あらかじめ行動のルールを決めておく。
参考:若年性認知症について
高次脳機能障害と似た症状が見られる疾患として認知症があるが、特徴として進行性であるということがあげられる。
特に若年性認知症(18歳以上65歳未満で発症)に関しては推定発症年齢の平均が51歳程度と働き盛りの年代であることから、雇用が大きな課題となるが、支援機関や支援制度を活用したり、症状に応じた職務内容の変更や配置転換を行うなどの取組により、若年性認知症の方の雇用継続の可能性は広がる。
雇用事例
配置転換により雇用継続された例
高校卒業後、長年自動車販売会社営業職として勤務してきた男性。
40歳になった頃より、「顧客の顔が覚えられない」「道に迷う」等が見られるようになり、精神科を受診するが改善が見られず。
その後、意識障害が生じたことから総合病院を受診したところ、若年性アルツハイマー型認知症の疑いとの診断を受ける。
診断を受けたことで繋がりを持った若年性認知症家族会からの勧めもあり、高次脳機能障害支援拠点病院及び地域障害者職業センターの支援により、記憶障害の補完方法を習得するとともに職場にも症状を踏まえた職業生活の見直しを相談し、洗車業務担当へ配置転換がなされ雇用継続に至った。
就労支援機関と相談、ジョブコーチ支援を利用し再就職した例
長年、介護職やケアマネージャーとして働いてきた61歳、女性。
「何度も同じことを言う」「同じ書類を作る」等の行動が見られ、本人も物忘れを自覚したことから認知症専門クリニックを受診し診断を受ける。治療を受けながら雇用継続について職場と相談するが不調。
退職後、ハローワーク、地域障害者職業センターと相談し、「仕事内容を絞り込み、手順の確認をきちんと行えば、できる仕事はある」と自信を得て再就職活動を進め、障害を開示の上、ジョブコーチ支援事業を活用し、清掃・シーツ交換等の介護補助作業での再就職に至った。