データや科学技術の力を活用して
未来を切り拓く

政策統括官/大臣官房厚生科学課

キーワード
ICT、AI、EBPM、BPR、ゲノム、統計

近年のめまぐるしい情報化の進展に伴って、データやICTを活用した行政の運営が非常に重要になっています。このため、人口動態・雇用・医療等に関する統計調査を実施するとともに、厚生労働行政全般にわたるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進といった情報政策や、政策評価の実施を進めています。

また、現在、ゲノム医療の進歩、AI技術の発展をはじめ、従来の延長線上にないイノベーションが起こっています。保健医療分野で世界に先駆けた科学技術を確立していくため、研究の推進や戦略策定を総括しています。

目次

厚生労働行政を支える統計を整備する

証拠に基づく政策立案(EBPM,evidence-based policymaking)を推進するためには、実態把握をはじめとして、統計データ等の積極的な活用が必要不可欠です。厚生労働省では、人口動態や世帯、医療、社会福祉、労働者の雇用、賃金、労働時間に関する大規模な全国調査を実施するとともに、WHO(世界保健機関)やOECD(経済協力開発機構)等の国際機関と協力し、統計データの国際比較や国際統計分類の整備等にも取り組んでいます。

また、一連の統計問題への反省の下に、信頼性の高い統計の整備や統計データの有効活用など「統計行政のフロントランナー」を目指した統計改革に取り組んでいます。

厚生労働分野のデジタル化を推進する

IoT・ロボット・AI (人工知能)といった先端技術を活かし、多様なニーズにきめ細かく対応したサービスを提供する「Society5.0」の時代を迎えようとしています。厚生労働省では、健康・医療・介護分野において、国民の皆さんにメリットのあるビッグデータの利活用や先端技術の導入を進めるため、データヘルス改革を部局横断的に推進しています。

また、多くの国民が関わる厚生労働分野の手続のデジタル化を推進しています。さらに、職員の生産性向上は国民の皆さんへのサービスの向上にも繋がることから、ICTを活用し、職員が働きやすいシステム環境を整備するとともに、抜本的な業務改革(BPR,Business Process Re-engineering)を進めています。こうしたICT化の中で国民が安心して厚生労働行政のサービスを受けることができるよう、情報セキュリティ対策の充実にも取り組んでいます。

ペーパーレスでの大臣への説明の様子

情報政策

厚生労働行政における情報化の推進、データヘルス改革、情報セキュリティの確保、情報システムの整備など、総合的な情報政策の企画・立案・推進を行っています。

RPAを本格導入

少子高齢化が進展し、社会課題が複雑化する中で、国民の皆さんの生活に密接に関係する厚生労働省の業務は増大しています。このような中で、先端技術を活用し、安全性を確認しながら、定型的な業務などをロボットに任せて、職員が国民の皆さんのための仕事に注力できるよう、RPA(Robotics Process Automation)を2019年に導入し、2020年からは大幅に拡大しています。

厚生労働省では、進捗確認やファイルの集計作業などをロボットが担当しています。より良い政策の実現のために新しいチャレンジを進めています。

AI等の技術革新の与える影響

AI、IoTなどの技術革新が進展する中、それらが雇用や働き方、キャリア形成に与える影響も注目されています。職場にどのように導入していくかについて、実態を把握しながら議論を進めています。

職場情報の見える化

企業の働き方や採用状況に関する情報などの職場情報を検索・比較できる職場情報総合サイト「しょくばらぼ」を運用し、規制だけでなく「見える化」の手法を使った働き方改革を進めています。

労働経済の分析

統計データや企業の取組事例により、我が国の労働経済をめぐる現状や課題を発信することで、労使の話し合いをより一層深めること等を目的とし、毎年「労働経済白書」を公表しています。令和元年版白書では、「人手不足の下での『働き方』をめぐる課題について」と題して分析を行うとともに、多くの方にご覧いただけるよう、厚生労働省の白書では初めてとなる動画版も公表しました。

動画版「令和元年版 労働経済白書」

ゲノム医療の推進

近年、病気の原因となる遺伝子変異を特定することで、個々人の体質や病状に適した(より効果が高く、副作用も少ない)治療薬を選択することも可能となってきました。例えば、同じ「肺がん」という病気でも、原因となる遺伝子変異は様々であり、個別化医療が進んでいます。

令和元年12月には、がん・難病等について、一人ひとりにおける治療精度を格段に向上させ、治療法のない患者に新たな治療を提供したり、個別化医療をさらに推進するため、「全ゲノム解析等実行計画(第1版)」を策定しました。これに沿って、まず先行解析で日本人のゲノム変異の特性を明らかにし、本格解析の方針決定と体制整備や人材育成等に取り組むこととしています。

このように、「ゲノム医療」について、その実現や普及を目指しています。

AIによる画像診断支援

現在、様々な分野でAI(人工知能)の活用が進んでおり、保健医療分野でも、医療従事者の負担軽減、新たな診断・治療方法の創出等の効果が期待されています。

例えば、画像認識はAIが得意とするところであり、現在、研究開発が急速に進展しています。医師による内視鏡診断等の「画像診断」を支援するための医療機器・システムが既に複数承認・認証され、社会実装も進みつつあります。

科学研究の推進

科学的根拠に基づく政策立案を行うため、また、科学技術の向上を図るため、保健医療、福祉、薬事・食品衛生、労働安全衛生などの分野の研究を推進しています。