労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府  
事件番号  中労委平成23年(不再)第52号  
再審査申立人  大阪教育合同労働組合(「組合」)  
再審査被申立人  大阪府(「府」)  
命令年月日  平成24年10月17日  
命令区分  一部変更  
重要度   
事件概要  1 本件は、府が、組合からされた府公立学校の常勤講師、非常勤講師又は学力向上支援員である組合員18名の22年度の任用の保障(雇用の継続)を議題とする団体交渉(以下「本件団交」という。)の申入れに応じなかったこと等が不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。なお、府は、13年度から21年度までについては、組合からの申入れにより、協議に応じてきていたが、22年度については、これまでの府の対応が適正でなかったとして拒否したものである。
2 初審府労委は、①地方公務員法(以下「地公法」という。)58条1項において同法適用職員に対する労組法の適用除外を明確に定めている以上、地公法が適用される常勤講師である組合員に関して組合の申立人適格を認めることはできない、②労組法が適用される非常勤講師又は学力向上支援員である組合員に係る本件団交事項は義務的団交事項に該当しないなどとして、上記1の申立てのうち、常勤講師組合員に係る申立てを却下し、その余の申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。  
命令主文  1 初審命令主文中、非常勤講師又は学力向上支援員である組合員に係る本件団交申入れについて、救済申立てを棄却した部分の取消し
2 非常勤講師又は学力向上支援員である組合員に係る本件団交申入れに応じなかったことに関する文書手交
3 その余の本件再審査申立て棄却  
判断の要旨  1 府は、常勤講師組合員との関係で労組法7条の使用者に該当するか。
 常勤講師は、一般職(地公法3条2項)に属する地方公務員であり、勤務条件等に関しては、地公法22条7項の規定により同法が適用され、同法58条1項の規定により労組法は適用されないから、常勤講師組合員(本件団交申入れに係る対象組合員18名のうち15名)との関係において、府は労組法7条の使用者に該当しない。したがって、初審命令のうち、常勤講師組合員に係る救済申立てを却下した部分は、相当である。
 なお、他方で、非常勤講師及び学力向上支援員は、特別職(地公法3条3項3号)に属する地方公務員であるが、労組法が適用される。
2 府が本件労組法適用組合員3名に関して本件団交申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に該当するか。
ア(ア)学力向上支援員については、要綱により、一方で「雇用期間は1年を超えないものとする。」と定めるが、他方で「勤務成績が良好であると認められる者については、更新することができる。」と定め、更新を予定する規定があるので,本件団交事項が義務的団体交渉事項に該当することは明らかである。
 (イ)非常勤講師については、要綱により任用期間が「1年を超えない範囲」と定められ、更新に関する規定はないが、要領で、非常勤講師のうち一部の者(特定の時期に非常勤若年特別嘱託員等であった者)について更新を前提とする規定が存在するから、それ以外の非常勤講師について更新を予定しないと断ずることはできず、法令上任期満了後の更新に関する規制が存在しないこと等から、更新は任命権者の裁量にゆだねられていると解することができる。このような法令による規制がなく任命権者の裁量にゆだねられている部分には、労働条件・待遇にかかわる事項として団体交渉にゆだねても差し支えない事項があるのでそれに関する団交事項は義務的団体交渉事項に属すると解するのが相当である。
 (ウ)組合員3名は、それぞれ更新を繰り返し、継続して任用されており、このような継続勤務の実態は、繰り返しの任用によって実質的に勤務が継続する中で、任用条件(職種、校種、勤務地等)の変更又は前年度の継続であったと評価するのが相当である。そして、同3名の任用は、形式的には新たな任用目的と必要性が生じたことを理由とする、新たな任用手続によるものではあるが、上記任用の実態に鑑みれば、同3名は、法的地位(毎年度の任用において、常勤講師に任用されるか非常勤講師に任用されるか)が一定ではないものの、任用が繰り返しされて実質的に勤務が継続することに対する合理的な期待を有するというべきである。
 (エ)以上によれば、本件団交事項は義務的団体交渉事項であって、府は、上記3名に係る任用の保障(雇用の継続)を交渉事項として、組合が団体交渉を申し入れたときは、正当な理由がない限り、これを拒否できないというべきである。
イ 府は、府が本件団交申入れに応じなかったのは、特定の者を講師等に任命するかどうかは地公法上の管理運営事項(55条3項)に該当し、交渉の対象とすることができないためであるなどと主張する。しかしながら、上記1のとおり、非常勤講師及び学力向上支援員の勤務条件等に関しては、労組法が適用されることから、上記3名にかかわる問題については、地公法55条3項の規定の適用はないと解される。したがって、府の主張は失当である。
ウ 以上のとおり、府が上記3名に関して本件団交申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に該当する。したがって、初審命令主文中、同3名に係る本件団交申入れについて、救済申立てを棄却した部分を取り消す。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成22年(不)第29号 却下、棄却 平成23年7月22日
大阪府労委平成23年(不)第18号 却下、棄却 平成24年1月11日
中労委平成24年(不再)第2号 一部変更 平成24年11月28日
東京地裁平成24年(行ク)第454号 却下 平成25年2月13日
東京地裁平成25年(行ク)第1号 却下 平成25年2月13日
東京地裁平成24年(行ウ)第876号・同平成25年(行ウ)第16号 棄却 平成25年10月21日
東京高裁平成25年(行コ)第395号 棄却 平成26年3月18日
最高裁平成26年(行ツ)第274号・平成26年(行ヒ)第287号 上告棄却・上告不受理 平成27年3月31日
 
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