労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  熊谷海事(くまがいかいじ)工業(移管前) 
事件番号  中国船員地労委平成18年第2号 
申立人  全日本海員組合 
被申立人  熊谷海事工業株式会社 
命令年月日  平成19年12月11日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、(1) 組合との間で、労働協約を締結し、毎年、更新してきたところ、平成18年度の協約の更新を拒否したこと、(2) 所有船八代丸(乗組員は組合の組合員)の業務を、裸定期用船を行っている飛竜丸(乗組員は全員非組合員)に移管し、八代丸の乗組員に業務を与えず、職務手当等を支払わないこと等が不当労働行為であるとして争われた事件である。
 中国船員地労委は、会社に対し、①協約締結に関する結論が出るまで、従来の労働協約の内容に従って労使関係を営むこと、②職務手当の支給、③八代丸の運航・稼働と乗務員補充に関する問題の解決に向けて、真摯に団交を行うこと、④文書手交及び履行報告を命じ、その余の申立を棄却した。  
命令主文  1 被申立人会社は、労働協約締結に関する団体交渉が実質的かつ公正に行われ労働協約の締結に関する具体的な結論が出されるまでは、(申立人組合の組合員であり八代丸の船長であるA、同船機関長であるBに対する平成18年4月以降の経験加給の支払を含めて)従前の労働協約の内容に従って、申立人組合との労使関係を営まなければならない。

2 被申立人会社は、平成18年10月以降について八代丸の船長であるAに対して船長としての特別手当、同船機関長であるBに対して機関長としての特別手当を支払わなければならない。

3 被申立人会社は、申立人組合の組合員であるAが船長として、また、同組合の組合員であるBが機関長として八代丸を運航して就労することが可能となるように、八代丸の運航・稼働と八代丸の乗組員補充に関する問題の解決に向けて申立人組合と真摯に団体交渉を行わなければならない。

4 被申立人会社は、本命令受領後、1週間以内にA4版の用紙1枚に下記内容(略)を記載し、申立人組合に手交しなければならない。

5 被申立人会社は、第4項の命令を履行したときは速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。

6 その余の申立を棄却する。  
判断の要旨  1 支配介入について(労働協約の更新拒否)
 会社は、不当労働行為意思をもって、不誠実な交渉を行って労働協約の更新を行わずこれを失効させ、結果、同社において唯一組合員が存する八代丸という職場において長年にわたって規制力を有してきた労働協約における労使関係のルールを排除し消滅させ、加えて組合員である八代丸乗組員の労働条件に不利益(経験加給の不支給)を生じさせることにより、会社における組合の影響力や組織力を失わせ弱体化に導く可能性を作り出したものということができる。これは労働組合法第7条第3号の支配介入に該当する。

2 不利益取扱について
 会社には、自社船で唯一、組合員が存続している職場である八代丸を真剣に稼働させようとする意思が認められず、実質的には飛竜丸・八雲丸の2隻体制により事業運営を行っているのであって3隻体制はみせかけにすぎない。また、八代丸乗組員補充のための求人についても真剣になされたものとはいえず、組合の影響力・支配力を職場(ひいては会社)から排除するという意図を有していたものと推認することができ、これに基づいて八代丸の係船状態の継続という結果(あるいは係船の継続もやむなしという状態)が作出せしめられ、組合員である船長と機関長に本来の船員としての業務を行うことができないという精神的不利益と船機長手当の不支給という経済的不利益をもたらす状態が作り出されたものと考えられる。これは、労働組合法第7条第1号の不利益取扱に該当する。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中国船員地労委平成18年第1号 一部救済 平成18年12月22日
広島地裁平成19年(行ウ)第5号(第1事件)・平成20年(行ウ)第1号(第2事件) 棄却・却下 平成20年9月3日
広島高裁平成20年(行コ)第24号 全部取消・却下 平成21年9月29日
最高裁平成22年(行ヒ)第46号 上告受理 平成24年2月3日
最高裁平成22年(行ツ)第45号・平成22年(行ヒ)第45号 上告棄却・上告不受理 平成24年2月3日
最高裁平成22年(行ヒ)第46号 一部破棄差戻し 平成24年4月27日
広島高裁平成24年(行コ)第9号 棄却 平成25年4月18日
最高裁平成25年(行ヒ)第313号 上告不受理 平成25年9月19日
 
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