労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  熊谷海事(くまがいかいじ)工業 
事件番号  最高裁平成22年(行ヒ)第46号 
上告人  広島県(処分行政庁:広島県労働委員会) 
同参加人  国土交通大臣 
同補助参加人  全日本海員組合 
被上告人  熊谷海事工業株式会社 
同補助参加人  個人Z 
判決年月日  平成24年4月27日 
判決区分  一部破棄差戻し 
重要度   
事件概要  1 第1事件については、(1)Y会社がZとの間でY会社所有の船舶である飛竜丸及び八雲丸に関する裸傭船契約及び定期傭船契約の締結を行った(Y会社が船体のみをZに賃貸し、その上で、Y会社がZから船体と船員(非X組合組合員)を賃借した。)ことが、労組法7条3号の不当労働行為に、(2)Y会社がX組合との間での飛竜丸、八雲丸等の運行等に関する団体交渉を拒否したことが、労組法7条2号の不当労働行為に、また、第2事件については、(3)Y会社がX組合との労働協約の更新を拒否したことが、労組法7条3号の不当労働行為に、(4)Y会社が、その所有する船舶である八代丸を十分に稼働させず、同船の乗組員に精神的・経済的な不利益を与えたことが、労組法7条1号の不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
2 中国船員地労委は、第1事件については、①飛竜丸及び八雲丸の使用にはX組合組合員を乗組員とすること、②団体交渉に誠実に応じること、③文書手交、④履行報告を命じ、その他の申立てを棄却した(平成18年12月22日、平成18年第1号命令。以下「1号命令」という。)。また、同地労委は、第2事件については、①労働協約締結に関する実質的かつ公正な団体交渉が行われ、具体的な結論が出されるまでは、従前の労働協約に従って、X組合との労使関係を営むこと、②バックペイ、③バックペイの対象となる八代丸の乗組員が原職復帰できるよう真摯に団体交渉を行うべきこと、④文書手交、⑤履行報告を命じ、その他の申立てを棄却した(平成19年12月11日、平成18年第2号命令。以下「2号命令」という。)。
 これに対し、Y会社は、これらを不服として広島地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、第2事件に係る(3)の取消しを求める部分については、X1及びX2がY会社を退職したことにより、Y会社に対する拘束力は失われ、訴えの利益が欠けるとして却下し、その余の請求を棄却した。
 Y会社は、同地裁判決を不服として、広島高裁に控訴したところ、同高裁は、中国船員地労委による救済命令交付後、X組合の組合員すべてがY会社を退職し、組合員がY会社の従業員としての地位を争っている等の事情も認められず、本件各救済命令は、いずれもその基礎を失い、拘束力を失ったから、救済命令の取消しを求める本件訴えは、いずれも訴えの利益がないとして却下し、地裁判決を取り消した。
 中国船員地労委から平成20年10月1日付け移管により承継した広島県労委は、同高裁判決を不服として、最高裁に上告受理申立てを行ったところ、最高裁は、受理する決定を行った後、本件において、最高裁は、第2事件に係る(3)の取消しを求める訴えに関する部分を除く部分を破棄し、高裁に差し戻すこととした。
判決主文  原判決中、中国船員地方労働委員会平成18年第2号不当労働行為事件救済命令主文第3項の取消しを求める訴えに関する部分を除く部分を破棄する。
前項の破棄部分につき、本件を広島高等裁判所に差し戻す。  
判決の要旨  1 1号命令及び主文第3項を除く2号命令に係る原審の判断を是認できない理由
 1号命令主文第1項は飛竜丸及び八雲丸を使用する場合はX組合の組合員の乗り組んでいる当該各船舶を使用することを、2号命令主文第1項はX組合との間で従前の労働協約の内容に従った労使関係を営むことをそれぞれY会社に義務付けるものであるところ、Y会社は船舶の運航事業を営む会社として存続し、X組合も多数の船員等を組合員とする産業別労働組合として存続している事実関係の下では、Y会社に雇用されているX組合の組合員がいなくなり、裸傭船契約の対象とされていないY会社の所有船舶がなくなるという発令後の事情変更の後においても、Y会社による上記各義務の履行が客観的に不可能であるとまでいうことはできず、その履行が救済の手段方法としての意味をおよそ有しないとまでいうことはできないから、各命令中上記各項が当然にその効力を失ったということはできない。
 また、1号命令主文第2項はX組合による団体交渉の申入れへの応諾を、2号命令主文第2項はX1及びX2への特別手当の支払を、1号命令主文第3項及び第4項並びに2号命令主文第4項及び第5項はX組合への文書の手交等をそれぞれY会社に義務付けるものであるところ、これらの義務は、事柄の性質上、いずれもY会社による履行が客観的に不可能であるとはいえないものである上、上記のような事実関係の下では、上記発令後の事情変更の後においても、その履行が救済の手段方法としての意味を失ったとまでいうことはできないから、各命令中上記各項が当然にその効力を失ったということはできない。
 したがって、Y会社が1号命令及び主文第3項を除く2号命令の取消しを求める訴えの利益は、上記発令後の事情変更によっても、失われていないと解するのが相当である。
2 これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中1号命令及び主文第3項を除く2号命令の取消しを求める訴えを却下すべきものとした部分は破棄を免れない。そして、これらの命令の適法性等について更に審理を尽くさせるため、上記の部分につき、本件を原審に差し戻すこととする。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中国船員地労委平成18年第1号 一部救済 平成18年12月22日
中国船員地労委平成18年第2号 一部救済 平成19年12月11日
広島地裁平成19年(行ウ)第5号(第1事件)・平成20年(行ウ)第1号(第2事件) 棄却・却下 平成20年9月3日
広島高裁平成20年(行コ)第24号 全部取消・却下 平成21年9月29日
最高裁平成22年(行ヒ)第46号 上告受理 平成24年2月3日
最高裁平成22年(行ツ)第45号・平成22年(行ヒ)第45号 上告棄却・上告不受理 平成24年2月3日
広島高裁平成24年(行コ)第9号 棄却 平成25年4月18日
最高裁平成25年(行ヒ)第313号 上告不受理 平成25年9月19日
 
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