概要情報
事件名 |
神奈川都市交通 |
事件番号 |
中労委平成18年(不再)第22号 |
再審査申立人 |
都市交通労働組合 個人A |
再審査被申立人 |
神奈川都市交通株式会社 |
命令年月日 |
平成21年1月21日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
(1) 本件は、会社が、[1]組合支部長をスピード違反等を理由に諭旨解雇したこと、[2]当時の組合執行委員長A(「A」)に対し満62歳以降の雇用契約更新を拒絶したこと(「本件雇止め」)が不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
(2) 初審神奈川県労委は、会社に対し、組合支部長の原職復帰とバックペイ及び文書交付を命じ、Aの本件雇止めに関する申立ては棄却した。
(3) 組合とAは、これを不服として、再審査を申し立てた。
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命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
ア 満62歳以降の再雇用契約は当然に行われるものであったか。ないしは本人が希望すれば行われるものであったか。
会社における雇用延長に関する就業規則等によれば、Aについては16年4月時点で満62歳に達していることから、同人の準社員としての再雇用については、準社員取扱規定第1条第1号(「会社が必要とし、且、本人が引続き勤務を希望する者は、所属長の申請により、審査の上、再雇用する」)が適用されるのであって、当然に準社員として再雇用されるというものではなかった。次に会社における再雇用の実態について、本件雇止め以前6年間をみるに、62歳以降準社員として再雇用された者は約7割にとどまっていること等からすると、再雇用を希望したものの、会社の判断によって再雇用されなかった者も存在していたとの会社の主張を否定することはできない。
したがって、会社における就業規則等の定めをみても、また、再雇用の実態をみても、Aについて、満62歳以降の準社員としての再雇用は当然に行われるべきものであったなどとする組合らの主張は採用できない。
イ 休憩取得指示違反及び制帽着用義務違反等を理由とする本件雇止めに合理性があるか。
(ア) 14年6月以降、Aは会社から繰り返し休憩取得指示を受けながらこれに従わず、また、日報等に休憩との記載がない限り全て労働時間に含まれるとの主張に基づいて、休憩時刻等の記載を一切しなかったものである。会社が労働基準関係法令等に従って休憩取得指示を行うことは当然の措置というべきであるから、このような指示に違反するAの勤務態度には重大な問題があり、会社がこれを看過できないと評価したのは相当である。
制帽着用等の状況についてみると、Aは14年6月以降、たびたび無帽で運転しているところを現認され、警告書を交付されていることが認められる。会社がAを再雇用するかどうかを決定するに当たって、乗務員としての適格性を判断するために制帽等の着用状況を考慮したことは首肯できる。また、タコメータの開閉等の状況については、会社の乗務員服務規定第10条によれば、勤務時間中にタコメータの蓋を開ける行為は認められていないというべきであり、Aはこの規定に反して、勤務時間中に複数回にわたり蓋を開けていたことが認められる。
したがって、会社がAの休憩取得指示違反及び制帽着用義務違反等をもって本件雇止めの理由の一つとしたことは相当である。
(イ) 就業時間中の組合活動の状況についてみると、労働協約において特に許可した場合以外には就業時間中の組合活動はできないとされていたところ、Aは組合活動について事前に営業所の主任に通告していたが、主任は、日報等の記載と入金額とを点検していたにすぎず、かつ、主任には組合活動を行うことを許可する権限もなかったものである。したがって、Aの就業時間中の組合活動は会社の許可を得ることなく行われたものであって、労働協約等に反するものであり、会社がこれをもって本件雇止めの理由の一つとしたことは相当である。
(ウ) 本件雇止めの真実の理由は、14年5月のAらによる時間外手当支払訴訟の提起である旨の組合らの主張については、同訴訟における主要な争点の1つである実労働時間に対するAらと会社の主張は対立していたことに鑑みると、同訴訟の提起を契機として、Aに対し休憩取得指示を徹底したり、就業時間中の組合活動を問題視した会社の対応は首肯できる。そして、Aの休憩取得指示違反等の存在は肯定でき、会社がそれらを本件雇止めの理由としたことには合理性が認められるのであるから、組合らの主張は採用できない。
ウ 会社は組合らの組合活動を嫌悪し、組合活動を妨害するためにAを雇止めにしたといえるか。
本件雇止めの前後の時期において、会社と組合らの間の労使関係は対立関係がなかったとはいえないものの、会社がAらの時間外手当支払訴訟提起を嫌悪して休憩取得指示及び制帽着用等を徹底したということはできず、また、会社が組合らを嫌悪するような組合活動の状況ないし労使関係であったと評価することもできない。そして、本件雇止めに合理性が認められることは判断したとおりであるから、本件雇止めが組合らの組合活動を嫌悪し、組合活動を妨害するためのものであったとはいえない。
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掲載文献 |
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