事件名 |
吉田鉄工所 |
事件番号 |
中労委昭和48年(不再)第39号
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再審査申立人 |
株式会社 吉田鉄工所 |
再審査被申立人 |
全大阪金属産業労働組合 |
命令年月日 |
昭和49年10月 2日 |
命令区分 |
一部変更(初審命令を一部取消し) |
重要度 |
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事件概要 |
分会員に対する食堂利用上の差別扱い、仕事替え並びに懲戒解雇、就 労停止、福利厚生助成金の組合への不支給等をめぐる事件で、初審救済命令のうち初審命令後の退職者、死亡者について一部変更 したほかは、再審査申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 初審命令主文第3項を削除し、X1に関するこの部分の再審査被 申立人の救済申立てを棄却する。
2 初審命令主文第6項を次のように変更し、X2に関するこの部分の、その余の再審査被申立人の救済申立てを棄却する。
被申立人は、X2に関し昭和45年6月及び同年12月の2度にわたる仕事替え、並びに昭和46年3月5日付けの懲戒解雇が なかったものとし昭和45年6月以降同人が死亡した、昭和48年8月22日までの間同人が内面研磨作業に従事していたものと して同人が受けるはずであった賃金相当額及び死亡退職に伴ない支給されるはずであった金員相当額(ただし、既に支給した金員 を除く)を同人の相続人に対して支払わなければならない。
3 その余の本件再審査申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
0203 職場闘争と業務妨害
0700 職場規律違反
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
分会の教宣活動の行過ぎ、これに起因する別組合との対立による職場の大混乱などを理由に分会役員3名を懲戒解雇しているが、 そのいずれも分会にのみ責を帰すことはできず、本件懲戒解雇は、分会公然化以来会社の相連続する不当労働行為の繰り返しの中 で、分会幹部を、職場の混乱に藉口して、会社外へ排除しようとしたものである。
0500 勤務成績不良
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合員X3の欠勤等については、分会公然化以来の会社の一連の支配介入行為等に対抗するための教宣活動および労委、裁判所へ の出席等によるもので深く責められず、また、不良品の作成および時間中の居眠り等や同人のおかれた劣悪な作業環境を考えれ ば、これらを理由として同人を懲戒解雇することは、合理性があるとは認められない。
0700 職場規律違反
3602 違法・不当な行為に使用者側にも責任がある場合
分会員X4の懲戒解雇は、過去の処分に対する無反省と上司の指示、命令に反抗し職場秩序を乱したためというが、すでに不当労 働行為とされている処分につき反省していないとして同人を責めるのは失当であり、また、X4の反抗的態度も別組合員である班 長が挑発的発言をしてX4を刺激したことによるもので問責に値しないなどSの懲戒解雇には合理的理由が認められない。
1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3605 他の処分で決着ずみのものを対象とした場合
分会役員2名の欠勤等の増加は、分会公然化以来の会社の一連の支配介入行為等に対抗するための組合活動のためであったと認め られ、そのために作業能率が低下したとしても、必ずしも両名の責任とはいえず、他方、両名に残業をさせず、また、別組合員に よる両名に対する不協力を放置していることなどからみて、両名の欠勤増による作業遅延を理由とする本件仕事替えには、合理性 がない。
1203 その他給与決定上の取扱い
1401 労務の受領拒否
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
カメラ持込み禁止違反を理由にX5を、就労停止処分、賃金控除したことは、就労規則ではカメラ自体の持ち込みを禁止しておら ず、またカメラ同好会員は許可なく持ち込んでいること等から合理的理由はなく、また、所持品検査に反抗したので処分したとの 会社主張も採用できず、本件処分は、カメラ持ち込み禁止に藉口してなされた同人および分会の活動を阻害する行為である。
1601 福利厚生上の差別
2901 組合無視
会社は別組合に食堂の管理運営を全面的に委託すれば、分会員が何らかの差別的取扱いをうけるであろうことは容易に予測しえた にもかかわらず、分会員の食堂利用について何ら適切な措置をとらないまま一方的に別組合に委託し、別組合が分会員を差別的に 取扱ったことを放置したことは、分会員を不利益に扱う意図に出た不当労働行為である。
1601 福利厚生上の差別
2901 組合無視
会社は、本件助成金は全従業員の福利厚生活動のために別組合に支給したというが、別組合と分会の激しい対立関係は、従来分会 員がクラブ活動、慰安会から排除されている状況から、別組合主催のクラブ活動等に分会員の参加が不可能であることを知りなが ら、別組合に助成金を支給し、分会の助成金支給要求を拒否したことは、分会員を不利益に扱う意図に出たものである。
5123 審査中の組合脱退・退職等の取扱い
当委員会はX1に対する懲戒解雇は不当労働行為と判断するが、初審救済命令後X1は退職し、懲戒解雇がなかったものとして扱 われ、バックペイも受けているので、初審命令主文第3項の救済は最早維持する必要はないものと考える。
4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
4407 バックペイの支払い方法
X2は初審命令後死亡したので、初審命令主文中、原職復帰を命ずる部分を取消し、同人が死亡時までに受けるべき賃金相当額お よび死亡退職に伴ない支給されるべき金員相当額を、同人の相続人に支払うべきことを命じる。
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業種・規模 |
金属製品製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集54集708頁 |
評釈等情報 |
中央労働時報 昭和50年1月10日 567号 19頁
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