労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  吉田鉄工所 
事件番号  大阪地労委昭和46年(不)第15号 
大阪地労委昭和46年(不)第27号 
申立人  全大阪金属産業労働組合 
被申立人  株式会社 吉田鉄工所 
命令年月日  昭和48年 6月 5日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  分会員に対する食堂利用上の差別取扱い、配転並びに懲戒解雇等をめぐる事件で、差別の禁止、配転の取消し、原職復帰バックペイ、分会への福利厚生費の支給、ポスト・ノーティスを命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合吉田鉄工所分会の分会員が食堂を利用するに際し、昭和45年6月2日以前と同様、全日本労働総同盟全国金属産業労働組合同盟大阪地方金属吉田鉄工所労働組合の組合員と差別のない状態で利用できるよう措置しなければならない。
2 被申立人は、昭和45年度の福利厚生費として、 9,143円に昭和44年10月当時の申立人組合吉田鉄工所分会の分会員数を乗じて算出される金員を同分会に支給しなければならない。
3 被申立人は、X1に対し、次の措置を含め昭和45年6月10日づけの懲戒解雇がなっかたと同様の状態に回復させなければならない。
(1) 昭和45年5月6日づけおよび同年6月8日づけの配置転換がなかったものとして、配置転換前の原職(ターレット旋盤職場)に復帰させること
(2) 解雇の日から原職復帰の日までの間、同人が受けるはずであった賃金相当額(ただし、すでに支給した金員を除く)を支払うこと
4 被申立人は、X2に対し、次の措置を含め昭和45年10月24日づけの懲戒解雇がなかったと同様の状態に回復させなければならない。
(1) 昭和45年9月23日づけの技型工場への作業場移転がなかったものとして、原職(本社工場内のターレット旋盤職場)に復帰させること
(2) 解雇の日から原職復帰の日までの間、同人が受けるはずであった賃金相当額(ただし、すでに支給した金員を除く)を支払うこと
5 被申立人は、X3に対し、次の措置を含め、昭和46年3月5日づけの懲戒解雇がなかったと同様の状態に回復させなければならない。
(1) 原職に復帰させること
(2) 昭和45年6月以降、原職復帰の日までの間、同人がボール盤 540型の部品加工に従事していたものとして、同人が受けるはずであった賃金相当額(ただし、すでに支給した金員を除く)を支払うこと
6 被申立人は、X4に対し、次の措置を含め昭和46年 3月 5日づけの懲戒解雇がなかったと同様の状態に回復させなければならない。
(1) 昭和45年6月および同12月の2度にわたる仕事替えがなかったものとして仕事替え前の原職(内面研磨職場)に復帰させること
(2) 昭和45年6月以降、原職復帰の日までの間、同人が内面研磨作業に従事していたものとして、同人が受けるはずであった賃金相当額(ただし、すでに支給した金員を除く)を支払うこと
7 被申立人は、X5およびX6に対し、次の措置を含め昭和46年3月5日づけの懲戒解雇がなかったと同様の状態に回復させなければならない。
(1) 原職(ただし、X5については、昭和44年8月1日づけの配置転換前の自動歯車研削盤職場を指す)に復帰させること
(2) 解雇の日から原職復帰の日までの間、同人らが受けるはずであった賃金相当額を支払うこと
8 被申立人は、昭和45年8月24日づけのX7に対する就労停止処分がなかったものとして、控除した当日の賃金相当額を支払わなければならない。
9 被申立人は、縦1メートル、横2メートルの白色木板に下記のとおり明瞭に墨書して、被申立人会社本社工場正面付近の従業員の見やすい場所に1週間掲示しなければならない。
               記
                       年 月 日
  全大阪金属産業労働組合
    執行委員長 X8 殿
  同労組吉田鉄工所分会
    分 会 長 X3 殿
               株式会社吉田鉄工所
                 代表取締役 Y1
 当社は、下記の行為を行ないましたが、これらの行為は、労働組合法第7条第1号および第3号に該当する不当労働行為であることを認め、ここに陳謝するとともに、今後このような行為を繰り返さないことを誓約いたします。
               記
1 昭和45年6月2日以降、貴分会の分会員が食堂を利用するに際し、他の従業員との間に不当な差別的取扱いを行なったこと
2 昭和45年度の福利厚生費を同盟吉田鉄工所労働組合にのみ支給し、貴分会に支給しなかったこと
3 貴分会員X1氏を正当な理由なく2度にわたって配置転換し、さらに同氏を懲戒解雇したこと
4 貴分会員X2氏の職場を正当な理由なく技型工場に移転し、さらに同氏を懲戒解雇したこと
5 貴分会員X5氏を正当な理由なく懲戒解雇したこと
6 貴分会分会長X3氏が担当してきた 540型ボール盤部品の加工作業を正当な理由なく取りあげ、さらに同氏を懲戒解雇したこと
7 貴分会員X4氏を正当な理由なく配置転換し、さらに懲戒解雇したこと
8 貴分会員X6氏を正当な理由なく懲戒解雇したこと
9 貴分会員X7氏に対し、昭和45年8月24日、正当な理由なく就労させず、当日の賃金相当を控除したこと
以上、大阪府地方労働委員会の命令により掲示します。 
判定の要旨  0200 宣伝活動
0205 第三者・取引先等への働きかけ
組合及び分会が、公然化した直後に、会社を非難した文書を広く一般市民に配布し、その表現の一部に誇張があり、穏当を欠く点があったことは否定できないが、これらの教宣文書の多くは、会社が組合及び分会の存在を中傷誹謗し、激しい組織破壊攻撃を加えている時期に、配付されたものであることを勘案すると正当な組合活動の範囲を逸脱するものではないというべきである。

0200 宣伝活動
0421 幹部責任
0700 職場規律違反
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3700 使用者の認識・嫌悪
分会の教宣活動の行過ぎ、これを起因とする別組合との対立による職場の大混乱などを理由に分会役員3名を懲戒解雇しているが、そのいずれも会社の分会破壊攻撃など会社こそ責任を負うべき事情にあったと認められるから、本件解雇も不当労働行為といわざるを得ない。

0500 勤務成績不良
3700 使用者の認識・嫌悪
分会員X2の解雇理由である遅刻、欠勤については、会社の分会破壊攻撃に対処するため奔走せざるを得なかったものであり、また、作業態度不良等も、会社が同人を不当に配転しなければ起らなかったことと認められるから、これらを理由とする本件懲戒解雇は不当労働行為と認めざるを得ない。

0700 職場規律違反
1102 業務命令違反
X5が自分の担当する部品加工に不良品を出しながら、X1班長に対し穏当を欠く言辞を用いて口論した事実が認められるが、X1班長のX5に対する発言も上司として不穏当であり、X5のみを非難することは当を得ず、ましてこの程度の口論をとらえてX5を懲戒解雇することは到底許されない。

1102 業務命令違反
1300 転勤・配転
1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
機械工である分会員X1に対する第2次配転は、イバリ取りという単純作業であり、第1次とともに不利益取扱いと認められるから、これが拒否を理由とする懲戒解雇も不当労働行為といわざるを得ない。

1300 転勤・配転
1302 就業上の差別
3700 使用者の認識・嫌悪
分会員X1の第1次配転理由は、不良品を多く出し、機械工として不適格であったというにあるが、同人が養成工の段階にあることからみて、是認しがたく、しかも配転先で与えられた仕事はどぶ掃除などいやがらせ的なものであったことなどからみて、同人の組合活動を嫌悪した不利益取扱いと認められる。

1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社は、分会長の仕事替えは能率が低下したためで、仕事替え後の減収は勤労意欲の低下によると主張するが、作業能率の低下は会社の組織破壊攻撃に対処するためであったと認められ、かつ、減収も仕事の性格に起因していることからみて、本件仕事替えは、不利益取扱いであるとともに支配介入にもあたる。

1302 就業上の差別
1603 組合活動上の不利益
3700 使用者の認識・嫌悪
X4に対する第1次、第2次の各仕事替えは、いずれも理由に合理性がなく、同人の活発な組合活動を嫌悪してなされたものと判断するが相当であり、しかもこの措置は、同人に職務上、経済上の不利益を与える不当労働行為であるといわざるを得ない。

1400 制裁処分
3020 組合活動への制約
3700 使用者の認識・嫌悪
従前の取扱い例からみて、会社がX7のカメラ持込みをにわかに禁止したことには合理的な理由を認め難く、会社の措置は、会社が、分会の証拠写真の撮影を担当していたX7の活動を嫌悪し、同人に打撃を与えるとともに分会の活動を阻害しようとして行なったものと判断するのが相当である。

1601 福利厚生上の差別
2900 非組合員の優遇
3411 その他の従業員の言動
食堂の運営を別組合に任せ、同組合が分会員に対して、食券の販売拒否とか昼食時の座席等について不利益取扱いをしているのにこれを黙認したことは、使用者として許されないことであり、分会員の食堂利用を不当に差別する不当労働行為といわざるを得ない。

1601 福利厚生上の差別
2901 組合無視
会社は、本件慰安助成金は全従業員の福利厚生活動のために別組合に支給したというが、もっぱら同組合の活動に消費され、分会員はその活動から排除されていることを会社は分会からの申出により承知しながら、別組合の行為を黙認しているのであるから、会社の主張は採用できない。

5124 その他の審査手続
組合は、申立てを提起した当初からX4の配転問題について救済を求める意思を示しており、たまたま申立て当初、請求する救済の内容として記載を欠いたとしても、不当労働行為を構成する具体的事実の記載その他から判断して、これを救済の対象となし得べきものと思料する。

業種・規模  鉄鋼業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集50集314頁 
評釈等情報   

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
大阪地労委昭和45年(不)第18号 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  昭和46年11月 2日 決定 
大阪地労委昭和46年(不)第15号 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  昭和47年 3月10日 決定 
中労委昭和46年(不再)第61号
中労委昭和47年(不再)第21号
再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  昭和47年11月15日 決定 
中労委昭和47年(不再)第88号 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  昭和48年12月19日 決定 
中労委昭和48年(不再)第39号 一部変更(初審命令を一部取消し)  昭和49年10月 2日 決定 
東京地裁昭和49年(行ウ)第7号 請求棄却・訴えの却下  昭和50年 7月30日 判決