労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  東急バス(審査再開)  
事件番号  東京高裁平成25年(行コ)第354号  
控訴人  東急バス株式会社 
被控訴人  国(処分行政庁:中央労働委員会)  
被控訴人補助参加人  全労協全国一般東京労働組合  
判決年月日  平成26年2月6日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 組合は、会社が、組合員X1らに対し残業扱いとなる乗務の割当て(以下「残業割当て」)を行わなかったこと等が不当労働行為に当たるとして、東京都労委に救済を申し立てた。
2 東京都労委は、残業割当てを行わなかったこと等が不当労働行為に当たると認めて、差別取扱いの禁止及び文書掲示を命じたところ、会社及び組合は、これらを不服として再審査を申し立てた。
3 中労委は、不当労働行為の成否に関する初審の判断を支持し、東京都労委の救済に加えX1らに対するバックペイを命じた。
4 会社及び組合はこれを不服として東京地裁に取消訴訟を提起した。東京地裁は、中労委命令がX1に関するバックペイを命じた部分について、同人の4か月間の欠勤期間を除外しなかったことが裁量を逸脱したとして、X1へのバックペイ命令部分を取り消し、その余の会社の請求及び組合の請求をいずれも棄却した。
5 組合及び会社は、これを不服として東京高裁に控訴を提起したが、東京高裁は、組合及び会社の控訴をいずれも棄却した。
6 組合及び会社が最高裁に上告受理の申立てを行ったが、最高裁は上告不受理決定をした。
7 中労委は、確定判決で取り消された部分について審査を再開し、X1の欠勤期間を除いて算出したバックペイを命じた(以下「本件命令」)。
8 会社はこれを不服として東京地裁に取消訴訟を提起した。東京地裁は、会社の請求を棄却した。
9 本件は、これを不服として、会社が東京高裁に控訴を提起した事件である。 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用及び当審における補助参加費用は控訴人の負担とする。 
判決の要旨  1 当裁判所も、本件命令に違法はなく、この取消しを求める控訴人の請求は棄却すべきものと判断する。その理由は、当審における控訴人の主張についての判断を後記2に付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」の1~4記載のとおりであるから、これを引用する。
2 当審における控訴人の主張について
(1) 再開後の再審査手続における主張制限の適法性について
会社は、再審査手続において会社が改めてX1に対する残業割当ての差別的取扱いに係る不当労働行為の成立を争う旨の主張をすることは許されないとするのは、確定判決の拘束力は主文に包含されるものに限られること、再審査において不服の理由について申立てを制限する旨の規定は存在しないこと、公正な審査を受ける権利(憲法31条)を侵害することなどから違法である旨の主張をする。
 しかしながら、原判決が判示するとおり、会社が、再開後の再審査手続において改めてX1に対する残業割当ての差別的取扱いに係る不当労働行為の成立を争う主張をすることは、前訴の争点を実質的に蒸し返すものに他ならず、これを信義則に反し許されないとした本件命令の判断が違法であるということはできない。会社が理由として挙げる法理論や法規は、このように解することと矛盾抵触するものとは解されない。
(2) 再開後の再審査手続における事実認定方法の適法性について
 会社は、本件命令には、当事者から提出された証拠によることなく審査の全趣旨によって事実を認定した違法がある旨の主張もするが、本件命令において認定された前回初審命令に係る救済申立てから前訴第一審判決の確定に至るまでの経緯は、その内容に照らし、前訴確定判決を受けて審査を再開した中労委にとって審査の全趣旨から容易に認定できるものであること、労働委員会の審査手続における事実認定において民事訴訟と同様の厳密な証拠方法や証拠調手続が求められるとまでは解されないことから、本件命令における中労委の事実認定に何らの違法がないことも、原判決が判示するとおりである。
(3) 不当労働行為の認定及び不利益分の算定についての違法事由の有無について
 会社は、前回再審査命令における不利益分の算定は著しく違法・不当で裁量権を逸脱しているところ、これと同様の算定をした本件命令も裁量権を逸脱した違法なものであるとの趣旨の主張をする。しかしながら、原判決も判示するとおり、本件命令は、前訴確定判決において算定に当たり除外しなかったことが違法事由に該当するとされた欠勤期間分を除外した上で、その余の不利益分の算定方法及び年率5分を乗じた金額を付加する点については、前訴確定判決において妥当であるとされた前回再審査命令と同様の考え方により判断して、改めてX1に対する金員支払を会社に命じているのであって、行訴法33条2項の趣旨に則り、前訴確定判決の理由中の認定判断に従ってそれに合致するよう発せられたものといえるから、本件命令に何らの違法事由はなく裁量権の逸脱もない。
 また、会社は、本件命令の不利益分の算定方法について、原審においてその違法性を詳細に主張したのに中労委はこれに対し何の認否もしないから、明らかに争わないことになる旨の主張、さらに、原判決が不利益分の算定について本件命令を維持する根拠を具体的に述べていない点は理由不備である旨の主張もする。しかし、中労委の主張する不利益分の算定方法は、前回再審査命令におけるものと同一であり、会社が主張する算定方法と異なるものであるから、中労委が会社の主張する算定方法を争っていることは明らかである。そして前記のとおり前訴確定判決は前回再審査命令における不利益分の算定方法についてはこれを支持しているところ、本件命令は、前訴確定判決を受けた後の再度の救済命令であることによると、その理由中における判断の違法性の有無は行訴法33条2項の趣旨に則り前訴確定判決の認定判断に従ったものであるか否かによって判断されるべきものと解されるから、会社の前記主張は前提を欠くものというべきであり、採用することができない。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成13年(不)第96号・平成14年(不)第9号・平成15年(不)第115号 一部救済 平成17年5月10日
中労委平成17年(不再)第40号・第43号 一部変更 平成20年1月9日
東京地裁平成20年(行ウ)第113号・第478号 一部取消 平成22年2月22日
東京高裁平成22年(行コ)第94号 棄却 平成22年11月24日
最高裁平成23年(行ヒ)第88号、第89号 上告不受理 平成23年9月30日
中労委平成23年(不再)第68号(旧事件平成17年(不再)40・43号) 一部変更 平成24年7月4日
東京地裁平成24年(行ウ)第532号 棄却 平成25年9月11日
 
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