概要情報
事件名 |
東急バス |
事件番号 |
東京地裁平成20年(行ウ)第113号・第478号 |
甲事件原告・乙事件被告補助参加人 |
東急バス株式会社 |
乙事件原告・甲事件被告補助参加人 |
全労協全国一般東京労働組合 |
甲事件被告・乙事件被告 |
国 |
判決年月日 |
平成22年2月22日 |
判決区分 |
一部取消 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、Y会社が、(1)X組合員に対する残業の割当てがないこと、(2)職場協議に会社が応じないこと、(3)便宜供与及び職場内情宣活動を会社が認めないこと、(4)添乗調査及び乗務状況報告書へのへの押印問題について会社が団体交渉に応じないこと、(5)乗務状況報告書に押印しないことを理由としてX組合員に対し懲戒処分を行ったこと及び同処分について団体交渉に応じないことが不当労働行為に当たるとして申立てがあった事件である。
東京都労委は、(1)残業割当てに関する差別的取扱いの禁止、(2)郵便物等に関する差別的取扱いの禁止、(3)便宜供与に関する誠実協議応諾、(4)添乗調査の頻度等の運用等に関する誠実団体交渉応諾、(5)文書掲示を命じその余の申立てを棄却したところ、Y会社及びX組合はこれを不服として、それぞれ再審査を申し立てた。
中労委は初審命令主文を一部変更して、(1)残業割当てに関する差別的取扱いの禁止、(2)組合員5名に対する残業外しによる不利益分の支払い、(3)便宜供与に関する誠実協議応諾、(4)添乗調査の運用等に関する誠実団体交渉応諾、(5)文書掲示を命じ、その余の各再審査申立てを棄却した。
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判決主文 |
1 中央労働委員会が中労委平成17年(不再)第40号及び同第43号事件について平成20年1月9日付けでした命令主文Ⅰの2のうちX1に対する141万6800円及びこれに対する平成17年6月9日から支払いずみまで年率5分を乗じた金額の支払を命じた部分を取り消す。
2 乙事件原告・甲事件被告補助参加人の乙事件の請求のうち中央労働委員会に対する裁決の義務づけに係る訴えを却下する。
3 甲事件原告・乙事件被告補助参加人のその余の甲事件の請求及び乙事件原告・甲事件被補助参加人のその余の乙事件の請求はいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用を含め、甲事件・乙事件を通じて全体を10分し、その5を甲事件原告・乙事件被告補助参加人の負担とし、その1を被告の負担とし、その余を乙事件原告・甲事件被告補助参加人の負担とする。
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判決の要旨 |
1 Y会社とX組合が分会結成当初から対立し続けていることを併せ考慮すると、Y会社は、X組合及び分会を嫌悪していたと推認することができる。
X1らに残業を割り当てない合理的理由の存在が窺えない本件では、Y会社は、X1らが、分会員であることを理由に事由に残業を割り当てず、経済的に不利益に取り扱うことで、X組合及び分会の弱体化を図ったと推認すべきである。
2 Y会社はバス労組に対しては、組合掲示板や会議室を貸与し、電話の取次ぎ、電話、ファククシミリの使用許可、組合あての郵便物の受渡等を行っていたのに対し、分会に対しては、これらの便宜供与を行わず、X組合及び分会の要求に対しても、本件救済命令申立ての確定結果をまって判断するとの返答に終始する等、その対応には著しい差異があるというべきである。
3 添乗調査が分会員を狙って頻繁に行われ、その評価もより厳しいのでないかとのX組合側の疑念には、一定の具体的裏付けがあると思料されるから、添乗調査の運用を議題とする団体交渉を求められたY会社は、疑念を解消するに足りるだけの具体的な説明を行うべきである。ところが、Y会社は添乗調査は団体交渉の議題になじまない旨の説明に終始し、実質的な交渉に入ることを拒んでいたのでから、Y会社の対応が団体交渉拒否に当たるのは明らかというべきである。
4 添乗調査及びその結果に基づく乗務員に対する指導は、業務上の必要のある合理的な制度等と認められ、指導を受けた事実を乗務員に確認させるため、業務命令として押印を求めることも不合理とはいえないから、これに反した場合には、懲戒処分の対象になることは、合理的な理由がある。
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