労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  東日本旅客鉄道(千葉動労不登用) 
事件番号  最高裁平成22年(行ヒ)第52号 
上告人  国(処分行政庁:中央労働委員会) 
同参加人  東日本旅客鉄道株式会社 
被上告人  国鉄千葉動力車労働組合 
判決年月日  平成24年2月23日 
判決区分  破棄自判 
重要度   
事件概要  1 Y会社が、国鉄において運転士資格を取得したX組合の組合員19名を運転士に発令しないことが、不当労働行為に当たるとして千葉県労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審千葉県労委は、組合員19名を運転士に発令しないことは不当労働行為であるとして全員を平成元年11月30日付けで運転士に発令したものとしての取扱い及び運転士として就労させることを命じた。
 Y会社は、これを不服として、再審査を申し立てたところ、中労委は、初審命令を取り消し、X組合の救済申立てを棄却した。
 これに対し、X組合は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、X組合の請求を棄却した。
 X組合は、同地裁判決を不服として、東京高裁に控訴したところ、同高裁は、原判決を取り消した。
 このため、中労委は、同高裁判決を不服として、最高裁に上告及び上告受理申立てを行ったところ、最高裁は、平成23年11月24日付けで、上告を棄却する一方、上告受理申立てについては受理決定し、本件において、原判決を破棄自判し、X組合の控訴を棄却した。
判決主文  原判決を破棄する。
被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。  
判決の要旨  1 原審の判断を是認することができない理由
 ①平成元年の補完教育の対象者の選考で、本件未発令者のうち、Z組合所属者については希望者全員が選ばれたのに対し、X組合所属者については選ばれたのは希望者の一部にとどまっていたが、補完教育の対象者の選考に当たり、本件未発令者のうち補完教育を希望したX組合所属者の中で対象者に選ばれなかった者の能力や勤務成績等が、対象者に選ばれたZ組合所属者と比較して劣るものでなかったことについては、X組合が一応の立証をすべきところ、そのような事情はうかがわれない。
 また、②上記選考でもX組合所属者3名が補完教育の対象者として選ばれていることに加え(上記3名は運転士発令前にX組合を脱退したというが、それがY会社からの働きかけによると認めるべき事情はうかがわれない。)、上記選考とほぼ同じ時期に、国鉄で運転士を経験していたX組合所属者23名が運転士に発令されてもいる。
 そして、③Y会社は、平成2年以降は補完教育を行わず昇進基準に基づき運転士発令をしているが、同年以降の運用下において、平成元年までの補完教育を受けなかった本件未発令者が原則として運転士に発令されなくなったことは、所属労働組合がX組合である者と他の組合である者との間で異ならない。
 また、④補完教育が行われた当時、X組合所属者である本件未発令者のうち、平成元年の補完教育を希望しながら対象者に選ばれなかった者については補完教育の対象者とはしないとのY会社の判断が示されており、その余の者は車掌職の経験が運転士発令に至る標準的な昇進経路であることが周知されていた中で車掌となるための補完教育を受けることを希望していなかったのであって、その後、昇進基準に基づく運転士発令に加えてこれらの者を対象として改めて同様の教育の機会を特に設けるべき需給状況の変化等の事情が生じていたともうかがわれない。
 これらの事情によれば、Y会社が補完教育の対象者の選考で所属労働組合を理由としてX組合所属者を不利益に取り扱ったとまでいうことはできず、また、Y会社が平成2年以降は補完教育を行わなかったことが、同年以降は運転士発令を所定の標準的な形で行う趣旨で採られた措置であるという以上に、殊更にX組合所属者を運転士登用の経路から排除する目的に出たということもできない。
 以上によれば、Y会社が、運転士の経験のない者に対する運転士発令につき車掌職の経験をほぼ必要不可欠な条件とする運用の下で、本件未発令者につき、車掌への発令のために行われた平成元年の補完教育の対象者の選考でX組合所属者である希望者11名からは3名を除いて対象者に選ばず運転士に発令しなかったこと及び同2年以降は補完教育を行わずX組合所属者である本件未発令者からは1名を除いて運転士に発令しなかったことは、いずれも、所属労働組合を理由とする労組法7条1号本文にいう不利益な取扱いに当たるとはいえず、X組合に対する同条3号の支配介入に当たるともいえない。
2 これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があり、原判決は破棄を免れない。X組合の請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は正当であるから、X組合の控訴を棄却すべきである。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
千葉地労委平成2年(不)第4号 全部救済 平成5年6月1日
中労委平成5年(不再)第31号 全部取消 平成18年7月19日
東京地裁平成18年(行ウ)第646号 棄却 平成20年3月3日
東京高裁平成20年(行コ)第150号 全部取消 平成21年9月30日
最高裁平成22年(行ツ)第51号 上告棄却 平成23年11月24日
最高裁平成22年(行ヒ)第52号 上告受理 平成23年11月24日
 
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