概要情報
事件名 |
東日本旅客鉄道(千葉動労不登用) |
事件番号 |
東京高裁平成20年(行コ)第150号 |
控訴人 |
国鉄千葉動力車労働組合 |
被控訴人 |
国(処分行政庁 中央労働委員会) |
被控訴人補助参加人 |
東日本旅客鉄道株式会社 |
判決年月日 |
平成21年9月30日 |
判決区分 |
全部取消 |
重要度 |
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事件概要 |
Y会社が、国鉄において運転士資格を取得したX組合の組合員ら19名を運転士に発令しないことが不当労働行為であるとして争われた事件である。 初審千葉県労委は、X1からX19の組合員19名を運転士に発令しないことは不当労働行為であるとして全員を平成元年11月30日付けで運転士に発令したものとしての取扱い及び運転士として就労させることを命じたところ、Y会社から再審査申立てがなされ、中労委は、初審命令主文を取り消し、X組合の救済申立てを棄却した。 X組合は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、X組合の請求を棄却した。 X組合は、これを不服として東京高裁に控訴提起をしたところ、同裁判所は原判決を取り消した。 |
判決主文 |
1 原判決を取り消す。 2 中央労働委員会が、平成18年7月19日付けでした命令(中労委(不再)第31号)を取り消す。 3 千葉地方労働委員会が、平成5年6月1日付けでした命令(千労委平成2年(不)第4号)を以下のとおり変更する。 Y会社は、X組合の組合員X1からX19の19名を平成10年1月1日付けで運転士に発令したものとして取り扱わなければならない。 |
判決の要旨 |
1 本件X1組合員らを運転士に発令しなかったことの不当労働行為該当性について 当審における認定事実を前提として、X組合(控訴人)主張の不当労働行為の成否を検討すると、①国鉄時代に運転士資格を取得した本件予科生に新たな昇格基準を適用して車掌経験を運転士発令の必要不可欠の要件とすることは、一定の問題を含むものであることも否定できない。このことは、国鉄とY会社の法的同一性が認められないこととは別問題であること、②Y会社の幹部はX組合に対して嫌悪や敵対的な態度を表明しており、また、Y会社は、X組合の組合員が適正や成績で劣るというような主張や立証は一切しておらず、他組合の組合員とX組合の組合員との間で適正や成績に見るべき差がないとすれば、このような差異が生じたのは組合の所属が選考の考慮要素とされたことを強く推定されること、③Y会社は、本件予科生のうち、平成元年までに補完教育を受けた者以外の者は、原則として運転士に発令しないという人事政策をとったものと考えざるを得ず、これは、本件予科生のうちX組合の組合員を運転士の適用から排除する人事政策をとっていたことを示しているというべきであること、また、Y会社は本件組合員のうち15名は、車掌を希望しなかったから将来運転士に発令される可能性を自ら放棄したものであると主張するが、上記15名が、補完教育を希望したとしても、X組合を脱退しなければ補完教育の対象者として選考されなかったがい然性が高かったものと考えられること、 ④Y会社水戸支社において、X組合と同様の上部組合連合に属するM組合に所属する予科生及びその関係者が1人も運転士に発令されなかったことが不当労働行為事件か否かについて争われた訴訟では、このような運転士の選考が所属組合を理由とする不当労働行為であることが認定されていること、以上のことから、Y会社は、本件予科生からの運転士の発令に関して、所属組合を理由としてX組合に属する予科生を不利益に扱い、X組合の弱体化を図ったものというべきであるから、その余の点について判断するまでもなく、このような扱いは不当労働行為というべきである。 2 救済命令の内容について 上記のとおりであるから、本件X組合の組合員について運転士の発令がされなかったことが不当労働行為に該当しないとして初審命令を取り消して、X組合の救済命令を棄却した本件命令は取り消されるべきである。 他方、運転士の発令にかかる昇進基準に基づけば本件組合員が運転士に発令されるためには車掌経験を経ることが原則となり、また発令の際に運転士の需要があることが必要とされることを考えると、不当労働行為がなかったとしても、初審命令が命じた日付け(平成元年11月30日)で本件組合員が運転士に発令された蓋然性は低いと考えられる。救済命令は不当労働行為がなかったと同じ状態を回復することを目的とするものであるから、上記日付けでX組合の組合員を運転士に発令したものとして取り扱うことを命じた初審命令には、救済命令の内容について裁量権を逸脱して違法があるといわなければならない。 本件ではC支社における運転士の需給の状況は明らかではないが、平成3年には合計13名の運転士や発令されていること、補完教育の対象となった本件予科生の場合、車掌発令から運転士発令までおおむね1年弱の期間がかかっていること等を勘案すると、どんなに少なく見積もっても不当労働行為がなければ平成10年ころまでの間に本件組合員全員について車掌としての経験を積ませた上で運転士として発令するだけの需要はあったと推認できる。 そうすると本件では初審命令を変更して本件組合員を平成10年1月1日付けで運転士に発令したものとして取り扱うべきことを命ずることが相当である。 また、初審命令は、本件労働者を運転士して就労させていることも命じているところ、運転士免許を取得した後長期間が経過しており、実際に運転士として就労させるためには、再度の訓練、研修が必要となることは明らかである。このような事情を考慮すると、直ちに運転士としての就労を命じることは相当でなく、この点はY会社の専門的見地からの裁量に任せ救済の内容とはしないことが相当というべきである。
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