概要情報
事件名 |
南労会(勤務時間変更等) |
事件番号 |
東京高裁平成20年(行コ)第153号 |
控訴人兼被控訴人(1審原告) |
医療法人南労会 |
被控訴人兼控訴人(1審被告) |
国(裁決行政庁 中央労働委員会) |
1審被告補助参加人 |
全国金属機械労働組合港合同
全国金属機械労働組合港合同南労会支部
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判決年月日 |
平成21年7月28日 |
判決区分 |
一部取消(中労委命令を残部取消により全部取消) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、Y医療法人(以下「Y法人」)が、①平成3年及び7年に勤務時間の変更等を強行したこと、②変更前の勤務時間に基づき勤務していた組合員の賃金をカットしたこと等が不当労働行為であるとしてX組合及びその支部(以下「X組合ら」)から申立てがあった事件である。
初審大阪府労委は、Y法人に対し、①平成3年及び7年に勤務時間の変更がなかったものとしての取扱い、速やかに労使協議を行うこと、②勤務時間変更を理由として行った賃金カットの明細を明らかにし、この間の賃金の差額に年率5分を乗じた金額を払うこと、③文書交付を命じ、中労委は、初審命令の主文の一部を変更し、その余の再審査申立てを棄却した。
Y法人は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、中労委命令のうち、勤務時間変更に関しての労使協議を命じた部分及び初審の文書交付命令を是認した部分を取り消し、Y法人からのその余の請求は棄却した。
これに不服として、Y法人及び国が東京高裁に控訴したところ、同高裁は、1審におけるY法人敗訴部分を取り消し、本件命令の主文第Ⅰ項の2(中労委命令のうち、賃金カットの明細を明らかにすること及びバックペイを命じた部分)を取り消し、中労委の控訴を棄却した。
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判決主文 |
1(1)原判決中、1審原告敗訴部分を取り消す。
(2)裁決庁が中労委平成9年(不再)第37号事件について平成17年9月21日付けでした命令主文第Ⅰ項の2を取り消す。
2 1審被告の本件控訴を棄却する。
3 訴訟費用は、1、2審とも、補助参加によって生じた費用はX組合らの負担とし、その余は1審被告の負担とする。
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判決要旨 |
① 当裁判所は、3年変更及び7年変更並びにこれらに基づく各賃金カットはいずれも不当労働行為には該当せず、したがって、1審原告のY法人の請求は、原審が認めた限度でなく、全部理由があるものと判断する。
その理由は、次のとおり訂正、付加するほか、原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」1及び2記載のとおりであるから、これを引用する。
② 原判決66頁16行目から67頁23行目まで(争点(3)「3年変更及び7年変更に基づく各賃金カットの不当労働行為性」の判断)を次のとおり改める。
「ア 本件救済申立てのうち、賃金カットに対する分は、3年変更及び7年変更が不当労働行為に当たり、したがって、これに伴ってされた賃金カットが不当労働行為に当たるものとして申立てがされたものであり、本件初審命令及びこれを一部変更して維持した本件命令も、同申立てを認めて、3年変更及び7年変更が不当労働行為に当たるものとして発令されたものであるところ、前記(1)及び(2)で判断したとおり、3年変更及び7年変更はいずれも不当労働行為に当たらないのであるから、本件命令のうち賃金カットに対する分(主文第Ⅰ項の2)は、既にこの点において理由がなく、これを維持することはできず、違法なものとして取消を免れない。
イ Y法人は、3年変更及び7年変更が効力を生じたものとして、これに従わないX組合支部組合員の労務の提供を拒絶し、したがって、同就労部分について賃金カットをすることをあらかじめ明確にしていたもので、その上で3年変更及び7年変更に基づいてY法人の指示する勤務時間に従わず同組合員が勤務して時間相当分の賃金をカットして支給したものである。
中労委及びX組合らは、Y法人が、3年変更前の勤務時間(組合ダイヤ)に基づく就労を労務の提供として受領し、これによって利益を上げていたと主張するが、Y法人は上記のように賃金カットをあらかじめ明確に通知していたものであり、それにもかかわらず、X組合支部組合員の組合ダイヤによる就労を拒否しなかったのは、医療現場であるY1診療所における混乱等を避けるためのやむを得ない対応であったというべきである。
X組合支部が、Y法人の業務指示に従わないというにとどまらず、Y法人の設備を占有して積極的に管理したことは、一種の生産管理といえなくもなく、違法は争議行為である可能性を否定できないものであり、債務の本旨の従った労務の提供ということはできないから、賃金カットは違法であるということはできず、国、X組合らの主張は当たらない。
次に、国、X組合らは、Y法人が、個々の組合員の勤務実態を直接認識することなく賃金カットを行っており、賃金カットの理由及び対象時間の具体的な説明を拒否したと主張する。確かにY法人は、組合員が賃金カットの対象について説明を求めた際に「自明である」などと具体的説明をしなかったことが認められるが、Y法人としては、賃金カットの理由及び対象時間は自ずと明らかであるとの認識の下に対応したものであることがうかがわれ、これをもって、3年変更及び7年変更による勤務時間に従わないX組合支部への嫌悪を示したものと評価することはできない。
ウ したがって、Y法人が行った3年変更及び7年変更に基づく各賃金カットは、不当労働行為に当たらない。」
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