労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  東日本旅客鉄道外1社(神奈川不採用外3件) 
事件番号  東京高裁平成15年(行コ)第151号 
控訴人  国鉄労働組合 
控訴人  国鉄労働組合仙台地方本部 
控訴人  国鉄労働組合東京地方本部 
控訴人  国鉄労働組合東京地方本部横浜支部 
控訴人  国鉄労働組合東日本本部 
被控訴人  中央労働委員会 
被控訴人参加人  東日本旅客鉄道株式会社 
被控訴人参加人  日本貨物鉄道株式会社 
判決年月日  平成16年 9月 2日 
判決区分  控訴の棄却 
重要度   
事件概要  国労及び傘下の労働組合(以下「組合ら」)が、国鉄の分割・民営化に伴い設立された東日本旅客鉄道及び日本貨物鉄道(以下「会社ら」)発足時の職員の採用に際し、国労所属の組合員が採用されなかったのは、設立委員がした所属組合による差別であり、労働組合法7条1号及び3号の不当労働行為に当たるなどとして各地労委に救済を申立て、初審各地労委は組合員の採用を命じる等の命令を発し、会社らがこれを不服として再審査を申立て、中労委は、不採用の一部が不当労働行為に当たらないとして救済申立てを棄却した。
 組合らはこれを不服として、その取消しを求める行政訴訟を提起したが、原審東京地裁は、組合らの請求を棄却し、組合らが本件控訴をしたが、東京高裁は控訴を棄却した。 
判決主文  本件控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は,参加による費用を含めて,控訴人らの負担とする。 
判決の要旨  4909 事業分離後の新企業体
日本国有鉄道改革法は、国鉄改革に伴う承継法人(JR各社)の成立時(昭和62年4月1日)の職員採用について、採用手続の各段階における目本国有鉄道と設立委員の権限を明確に分離して規定しており、専ら日本国有鉄道が採用候補者の選定及び採用候補者名簿の作成に当たり組合差別をしたという場合には、労働組合法第7条の適用上、専ら日本国有鉄道、次いで、日本国有鉄道清算事業団にその責任を負わせることとしたものと解さざるを得ず、このような日本国有鉄道改革法の規定する法律関係の下においては、設立委員ひいてはJR各社は、労働組合法第7条に言う「使用者」として不当労働行為の責任を負わないとされた例。

1100 雇用関係の存否
4909 事業分離後の新企業体
組合らは、上記解釈によったのでは、本件不当労働行為に関する問題は何1つ解決しないと主張するが、上記解釈は不当労働行為の責任を負うべきものを明確に指摘していることからすれば、本件において、上記見解によっては問題は何1つ解決しないとの不満が残るとすれば、それは本件訴訟が、組合らがJRを被申立人として不当労働行為の救済を申し立てたことに端を発していることによるのであるから、同判決を批判する理由とはなり得ないとされた例。

1100 雇用関係の存否
4909 事業分離後の新企業体
組合らは、上記見解は立法者意思に反するとし、同主張は改革法の国会審議における、国鉄は設立委員の採用事務を補助する者で、民法上の準委任に近いものである旨の運輸大臣の答弁を立法者意思と主張するが、同見解が同趣旨の主張が存在することを踏まえたことは明らかであり、これを見直すべき事由になるとは解されず、また、同国会の答弁は改革法23条の文言を前提として、いずれも厳格な法概念を表明したものとはいえないから、この答弁から立法者意思を確定することは困難であるとされた例。

1100 雇用関係の存否
4909 事業分離後の新企業体
組合らは、国鉄による採用候補者の選定・名簿作成は一連の採用手続の一部を構成するにすぎないから、この部分だけを取り出して設立委員は不当労働行為責任を負わないとするのは不当な解釈であると批判するが、設立委員ひいては承継法人が右につき不当労働行為責任を負うと解することは、改革法23条の文言からかい離するものであるだけでなく、改革法成立後短期間で多数の職員を国鉄から承継会社に採用させるという、通常の旧会社の解散・新会社の設立の場合には見られない事情を踏まえて改革法が立法された経緯を無視するものといわざるを得ず、組合らの右主張も上記見解を見直すべき事由とはいえないとされた例。

1100 雇用関係の存否
4909 事業分離後の新企業体
組合らは、国鉄が設立委員の定めた「採用基準」を逸脱して、「6ヶ月以上又は2回以上の停職処分を受けた職員は名簿に載せない」等の基準を設定したとすれば、これも設立委員の採用の基準の範囲内であると設立委員によって承認されたことになると主張するが、立論自体が仮定のものである上、設立委員において提出された名簿から、国鉄が名簿作成に当たり組合員を差別したことをうかがい知ることができたと認めるに足りる証拠のない本件においては、同主張は採用できないとされた例。

業種・規模  鉄道業 
掲載文献   
評釈等情報  中央労働時報 2005年 4月10日 1042号 46頁 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
神奈川地労委昭和62年(不)第22号 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  昭和63年12月16日 決定 
東京地労委昭和62年(不)第12号 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  平成 1年 8月 1日 決定 
宮城地労委昭和62年(不)第4号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  平成 2年 2月28日 決定 
中労委昭和63年(不再)第69号/他 全部変更(初審命令を全部取消し)  平成 7年10月 4日 判決 
中労委昭和63年(不再)第68号/他 全部変更(初審命令を全部取消し)  平成 7年10月 4日 判決 
中労委平成 1年(不再)第91号 一部変更(初審命令を一部取消し)  平成 8年 1月10日 決定 
中労委平成 2年(不再)第29号 一部変更(初審命令を一部取消し)  平成 8年 3月 6日 決定 
東京地裁平成 8年(行ウ)第118号/他 請求の棄却  平成15年 4月30日 判決 
東京地裁平成 8年(行ウ)第52号/他 請求の棄却  平成15年 4月30日 判決 
東京地裁平成 8年(行ウ)第175号/他 請求の棄却  平成15年 4月30日 判決 
東京地裁平成 8年(行ウ)第12号/他 請求の棄却  平成15年 4月30日 判決