「地域共生社会」の実現に向けて ─ 支援体制づくりの取り組み

連載「地域共生社会」

地域共生社会 第2回

「地域共生社会」の実現に向けて ─ 支援体制づくりの取り組み

連載
2026.11.02

人々の多様なニーズに適切な支援が提供されるとともに、住民同士がつながり支え合う「地域共生社会」。その実現に向け、地域の中で必要な支援を届けるための体制づくりが進められてきました。連載第2回では、平成29年と令和2年の社会福祉法改正を中心に、具体的な仕組みについて解説します。

くらしにつながるポイント

介護や子育て、障害、生活上の困りごとなど、複数の課題を抱える方や世帯が必要な支援につながりやすくするため、分野を超えて支える体制づくりが進められています。また、「人と人がつながる」ことで、地域の中で支え合える環境づくりも目指されています。



「地域共生社会」の実現に向けて

「地域共生社会」の実現に向けた改革の柱と言えるのが、社会福祉を目的とする事業の全分野における共通的な基本事項を定めた「社会福祉法」の改正です。地域共生社会の実現に向けて、平成29年、令和2年、令和8年と段階的に改正が行われてきました。

平成29年改正では、支援を必要とする方が抱える様々な課題を、地域住民や福祉関係者が把握すること、そして関係機関との連携などにより解決を図ることを「地域福祉の推進の理念」として規定されました。あわせて、市町村が地域の実情に応じた「包括的な支援体制」の整備に努めることが定められました。

令和2年改正では、そのための具体的な方策の一つとして「重層的支援体制整備事業」が創設されました。あわせて、「地域福祉の推進は、地域住民が相互に人格と個性を尊重し合いながら、参加し、共生する地域社会の実現を目指して行わなければならない」ことも規定されています。

さらに令和8年改正では、地域の実情に応じた包括的な支援体制の拡充や、福祉人材の安定的な確保・定着、支援基盤の強化など、変化する時代のニーズにあわせた改革が実施されました。

「包括的な支援体制」とは?

平成29年の社会福祉法改正では、市町村に対し、地域住民や支援関係機関が連携し、生活課題を抱える人を包括的に支える体制の整備に努めることが定められました。

この根底にあるのは、「制度・事業中心」から「本人・世帯中心」への転換です。

・制度・事業中心:それぞれの制度や分野の範囲で支援を考える
・本人・世帯中心:本人や世帯の状況を全体的に捉え、必要な支援を考える

複数の課題を抱えていたり、異なる分野にまたがる支援が必要な場合、従来の縦割り(属性別・分野別)の支援制度のみでは十分に対応しきれないことがあります。

そこで、制度から人を見るのではなく、「その人の生活を支えるために何が必要か」という観点が重要になります。また、私たちの生活の安定を脅かすリスクは、誰にでもいつでも起こり得るものであるため、関係機関や地域住民一人ひとりがそのことを意識し、互いに助け合う地域づくりに自分ごととして関わることが重要です。

こうした観点を踏まえ、現在、制度・分野ごとの「縦割り」や「支え手」「受け手」という関係を超えて、包摂的な「つながり・支え合い」を生み出すための包括的な支援体制の整備が進められています。

「包括的な支援体制」の3つの機能

「包括的な支援体制」の整備では、次の3つの機能を備えることが重要です。

① 地域で支え合う機能

地域に居場所や交流の場をつくり、住民同士がつながる機会や福祉活動への参加を促すことで、互いに支え合える環境づくりを進めます。

② 支援関係機関が連携して支援を行う機能

高齢者や障害者、こども、生活困窮など、各分野の支援関係機関が連携し、複数の課題にも一体的に対応できる体制づくりを進めます。

③ 地域と支援機関をつなぐ機能

必要な支援につながりやすくするため、分野を超えて相談を受け止め、生活上の課題を抱える人を必要な支援につなぐとともに、支援関係機関が支援している人を地域につなぐ体制づくりを進めます。

「包括的な支援体制」の3つの機能 「包括的な支援体制」の3つの機能

「重層的支援体制整備事業」とは?

複雑化・複合化した支援ニーズに対応する「包括的な支援体制」の整備を進めるため、令和2年の社会福祉法改正で創設されたのが「重層的支援体制整備事業」です。

この事業は、介護、障害、こども、生活困窮など、分野ごとに行われてきた取り組みを活かしながら、相談支援、参加支援、地域づくりに向けた支援を一体的に実施するものです。

事業の実施は市町村の任意で、それぞれの地域の実情に応じて取り組むことができます。令和8年度は、全国で580余りの市町村で実施される予定です。

「重層的支援体制整備事業」の3つの支援

「重層的支援体制整備事業」では、次の3つの支援を一体的に行い、一人ひとりの状況に応じた支援につなげていきます。

① 相談支援

属性や世代を問わず相談を受け止め、必要に応じて複数の支援機関が連携・協働して対応します。また、自ら相談することが難しい人には、訪問などを通じて支援につなげる「アウトリーチ」も行います。

② 参加支援

既存の制度では対応しにくい「狭間のニーズ」にも目を向け、本人の希望や状況に応じて、地域資源を活かしながら、就労体験や地域活動など、社会とのつながりをつくるための支援を行います。

③ 地域づくり支援

世代や属性を超えて交流できる場や居場所をつくるなど、住民同士がつながり、支え合える地域づくりを進めます。

これらの支援を一体的に行うことで、必要な支援や社会参加につなげ、一人ひとりに寄り添った継続的な支援を目指します。また、地域のつながりを深めることは、課題を抱える人への早期の気づきや、災害時などの支え合いにもつながります。



まとめ

地域共生社会の実現に向けて

「地域共生社会」の実現に向けて、「本人・世帯中心」の支援体制づくりが進められてきました。一方、人口構造や地域社会の変化に伴い、新たな課題への対応も求められています。第3回では、令和8年の社会福祉法改正と、その具体的な内容について解説します。

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