安心して働ける職場へ ─ ハラスメント対策の強化で何が変わる?

連載「ハラスメント対策の強化」

ハラスメント対策の強化 第1回

安心して働ける職場へ ─ ハラスメント対策の強化で何が変わる?

連載
2026.07.01

昨今、働く方々が安心して能力を発揮できる職場環境づくりへの関心が高まっています。ハラスメントのない職場の実現に向けた取組が進む中、令和7年に法律が改正され、職場におけるハラスメント対策が強化されます。連載第1回では、その全体像と、今回の改正で何が変わるのかを、わかりやすく解説します。

くらしにつながるポイント

安心して働き続けられるかどうかは、多くの人にとって重要な関心事の一つです。ハラスメントのない職場環境づくりは、一人ひとりの安心を支えるだけでなく、多様な労働者が活躍できる環境にもつながります。今回の制度改正は、そうした取組を後押しするものです。



まず知っておきたい、ハラスメント対策の基本

労働者の就業環境を害する言動である、職場におけるハラスメントは、働く⼈が能⼒を⼗分に発揮することの妨げになるだけでなく、個⼈としての尊厳や⼈格を不当に傷つけるなど、⼈権に関わる許されない⾏為です。事業主にとっても、職場環境の悪化や業務への支障が生じたり、貴重な⼈材の損失につながったり、社会的評価にも悪影響を与えかねない大きな問題です。

そのため、職場におけるセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントなどについては、これまでも、事業主に対し、その防止のための措置を講ずる義務が課されてきました。一方で近年は、顧客等からの過度な要求や求職活動等における性的な言動など、新たな課題も顕在化しています。

ハラスメントのない職場づくりや、女性の職業生活における活躍の推進等を図るため、令和7年6月、労働施策総合推進法等が改正されました。これにより事業主は、カスタマーハラスメントと求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止に向け、新たに雇用管理上の措置を講じることが令和8年10月1日から義務となります。

制度改正の主なポイント

今回の制度改正の主なポイントは、大きく3つあります。

①カスタマーハラスメント対策

カスタマーハラスメントとは、職場において行われる顧客等の言動であって、事業主が雇用する労働者が従事する業務の性質等の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものを言います。

これらの要素を全て満たすものについて、事業者はこれを防止するため、雇用管理上の必要な措置を必ず講じなければいけません。

②求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策

求職者等に対するセクシュアルハラスメントとは、事業主が雇用する労働者による性的な言動により求職者等による求職活動等が阻害されるものを言います。インターンシップ等の参加者も含まれるほか、同性に対するものも該当します。

事業主はこれを防止するため、雇用管理上の必要な措置を必ず講じなければいけません。

③職場におけるハラスメントを行ってはならないことについての国民の規範意識の醸成

今回の改正では、事業主への対策の義務化だけでなく、国の責務として、職場におけるハラスメントを行ってはならないことについて国民の規範意識を醸成するために、国が啓発活動を行うことも定められました。ハラスメントのない職場の実現に向け、情報発信等の取組の充実を図ります。


ハラスメント対策強化の3つのポイント ハラスメント対策強化の3つのポイント

制度改正によって何が変わる?

今回の改正により、事業主のハラスメント対策が進むとともに、一人ひとりがハラスメントを行わないよう、一層留意することが求められます。

①安心して働ける環境づくりが進む

カスタマーハラスメントや求職者等に対するセクシュアルハラスメントへの対応として、事業主には相談体制の整備や再発防止などの措置が求められ、ハラスメントが起きた際にも適切に対応される環境づくりが進みます。

②守られる対象が広がる

これまで措置義務の対象ではなかった顧客等の言動や、保護の対象ではなかった就職活動中の学生、教育実習等の実習に従事する方も含めた対策が講じられることにより、安心して就業でき、また、求職活動等を行うことのできる環境づくりが進められます。

③一人ひとりの意識もより重要に

カスタマーハラスメントは、国民の誰もがその行為者になり得ます。その中で、一人ひとりが相手の立場を考えた行動を意識することは、労働者のより良い職場環境につながります。


制度改正に関するよくある質問(Q&A)

Q.

すべてのクレームがカスタマーハラスメントに該当しますか?

A.

いいえ。顧客等からの苦情の全てがカスタマーハラスメントに該当するわけではありません。
客観的に見て、社会通念上許容される範囲で行われたものは、いわば正当な申入れであり、カスタマーハラスメントには当たりません。事業主が対策を講じるに当たっては、消費者の権利等に留意する必要があります。

Q.

事業主はどのような対応を求められますか?

A.

以下の措置を必ず講じる必要があります(④はカスタマーハラスメント対策のみ)。
①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
②相談体制の整備(窓口の設置、担当者による適切な対応など)
③事後の迅速かつ適切な対応(事実関係の確認、被害者配慮の措置、再発防止措置など)
④対応の実効性を確保するために必要なカスタマーハラスメントの抑止のための措置
⑤そのほか併せて講ずべき措置(プライバシー保護の措置、不利益な取扱いの禁止など)
詳しくはこちらのリーフレットをご確認ください。

Q.

カスタマーハラスメントについて、個人として気をつけることはありますか?

A.

誰もが顧客等になり得ることから、労働者に対する言動がその労働者の就業環境を害することのないよう、必要な注意を払うよう努めなければなりません。

Q.

今回の改正により、就職活動生といった求職者に対するハラスメントも事業主の措置義務の対象になるのですか?

A.

はい。求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止のため、雇用管理上の措置を講じる義務が事業主に課されることとなったため、採用面接やインターンシップなどの場面も含め、必要な措置を講じることが求められます。

まとめ

身近なところから考えてみよう

職場におけるハラスメント対策の強化は、誰もが安心して働ける職場環境の整備のための取組です。今回の制度改正により、多様な労働者が活躍できる職場づくりが進むことが期待されます。また、カスタマーハラスメントについては、誰もが行為者となり得るため、法整備や対策強化とともに、一人ひとりが自身の言動についての意識を高め、適切な行動を心がけることも重要になります。第2回では、カスタマーハラスメント対策の具体的な内容についてご紹介します。