「地域共生社会」とは? ― 新しい時代の福祉を目指して
社会や人々の生活が多様化する中、福祉にも新たな対応が求められています。目指すのは、「地域共生社会」の実現。連載第1回では、「地域共生社会」の考え方や背景についてわかりやすく解説するとともに、これまでの取り組みの経緯について簡単に紹介します。
くらしにつながるポイント
公的支援や公共の福祉サービスは、障害者や高齢者、こどもなど、特定の人のためだけにあるものではありません。時代とともにそのニーズは多様化していて、だれもが支援を受ける側になる可能性があります。「地域共生社会」は、すべての人が安心して暮らすために、人と人とのつながりによる「支え合い」が機能する地域社会を目指す取り組みです。
「地域共生社会」とは?
「地域共生社会」について、厚生労働省では次のように定義しています。
これまでの社会保障制度は、高齢者や障害者、こどもなどを対象として、必要な支援ごとに、地域や家庭の役割の一部を代替するものとして整備されてきました。しかし、高齢化や人口減少、世帯構成や生活様式の変化などにより、地域や家庭を取り巻く状況は大きく変わっています。
従来の制度のままでは対応が難しいケースも増える中、社会や人々の暮らしの変化を踏まえた、新たな福祉のあり方として、「地域共生社会」の実現が求められています。
なぜいま、「地域共生社会」が必要なのか
「地域共生社会」の実現を目指す背景には、大きく3つの要因があります。
① 福祉ニーズの多様化・複雑化
生活スタイルや家族のあり方が変化する中、それぞれの家庭が抱える課題も多岐にわたっています。経済的困窮や障害グレーゾーン、不登校、不衛生な住環境など、1つの世帯に複数の課題が重なるケースもあり、必要とされる支援もまた多様化・複雑化しています。
また、こうした課題が複数の分野にまたがるケースでは、従来の「縦割り」の制度だけでは十分な支援を行うことが難しい場面も増えています。
② 高齢化と人口減少
公的支援のあり方を検討する要因のひとつが、高齢化と人口減少です。社会や経済の担い手が減り、「支え合い」の基盤であった地域社会そのものが変化しています。そのため、地域の実情に応じた支援体制を整えていくことが求められています。
また、80代の親と50代のこどもが同居し、親の年金や資産で生活を送る、いわゆる「8050問題」や、育児と親の介護を同時に行う「ダブルケア問題」など、社会的・経済的に孤立する人々が多く生じていることも深刻な課題です。
③ 新たな社会変化
こうした中、近年は人口構造の急速な変化や人口減少の地域差など、新たな社会変化も進んでいます。
2025年から2040年までに生産年齢人口が15.0%減少する一方、85歳以上の人口は42.2%増加すると予測されています。また、単身高齢世帯は、2020年の738万世帯(13.2%)から、2040年には1,041万世帯(18.6%)に増加する見込みです。さらに、2050年には全国の市区町村の約3割にあたる558の市町村で、人口が2015年の半数になると見込まれています。
多様で複雑な福祉ニーズが顕在化する一方、福祉サービスの担い手は減少しています。こうした社会変化に対応し、地域の実情に応じた支援を継続していくためにも、「地域共生社会」の実現が必要不可欠です。
これまでの公的支援との違い
「地域共生社会」の実現に向けた改革では、これまでの公的支援とは異なる、次の2つの考え方が重視されています。
① 「縦割り」から「丸ごと」へ
人々が抱える複雑かつ多様な課題に対応するには、対象ごと・分野ごとの「縦割り支援」だけでなく、個人や世帯が抱える複数の課題を包括的に捉えて「丸ごと」支えるという考え方が重要です。そこで、複数の分野にまたがる総合的な福祉サービスを提供できる体制・制度づくりが進められています。
② 「我が事」・「丸ごと」の地域づくりを育む仕組みへ
「地域共生社会」における福祉は、支援を必要とする人・提供する人という関係だけでなく、地域に暮らす人々がそれぞれの立場で関わり、支え合うことが重視されています。
住民の主体的な支え合いを育みながら、地域にある人材や活動、場所などのさまざまな資源を活かしていくことで、暮らしに安心感や生きがいを生み、暮らしと地域社会をより豊かにしていく。そうした社会の実現に向けた仕組みづくりが進んでいます。
「地域共生社会」に向けて、どんな取り組みが進んでいる?
「地域共生社会」の実現を目指す取組は、平成27年(2015年)、「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」でその考え方が示されたことに始まります。
翌年には、閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」において、支え手側と受け手側に分かれるのではなく、地域のあらゆる住民が役割を持ち、支え合いながら暮らすことのできる「地域共生社会」の実現が掲げられました。
平成29年(2017年)からは、具体化に向けた改革が進められ、すでに3度にわたる社会福祉法の改正が実施されています。
・令和2年改正:「重層的支援体制整備事業」の創設
・令和8年改正:地域の実情に応じた包括的な支援体制の拡充、福祉人材の安定的な確保および定着、支援基盤の強化など
まとめ
時代のニーズにあった福祉
「地域共生社会」は、これからの日本にとって重要なキーワードのひとつです。多様なニーズにあわせて適切な支援が提供される体制づくり、そして、人々が支え合う地域づくりに向けた取り組みが、10年以上にわたり進められてきました。第2回では、これまでに行われた具体的な改革として、平成29年と令和2年の社会福祉法改正について解説します。
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