求職活動等をする方を守るために ― 求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の新ルール
職場におけるハラスメント対策の強化が進められる中、男女雇用機会均等法が令和7年に改正されました。今回の法改正では、自社の採用面接やインターンシップ、教育実習等に参加する求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が強化されます。連載第3回では、その背景と具体的な内容、現場で求められる対応のポイントについて、わかりやすく解説します。
くらしにつながるポイント
令和8年10月1日から、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が事業主の義務となります。これにより、事業主には労働者による求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止するための措置を講じることが求められ、採用面接やインターンシップ、教育実習などに安心して参加できる環境づくりが進められます。
なぜ今、対策が求められているのか?
厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査(令和5年度)」によると、2020~2022年度卒業で就職活動をした男女(737人)のうち、就職活動中(インターンシップを除く)にセクシュアルハラスメントを受けたと回答した人は31.9%でした。
具体的な内容としては、「食事やデートへの執拗な誘い」(33.2%)が最も多く、次いで「性的な冗談やからかい」(28.9%)、「性的な事実関係に関する質問」(26.0%)、「不必要な身体への接触」(25.1%)となっています。
そして、これらの行為によって「就職活動に対する意欲が減退した」(40.0%)、「怒りや不満、不安などを感じた」(33.6%)だけでなく、「眠れなくなった」(31.5%)、「通院したり服薬をした」(22.6%)、さらには「入院した」(7.2%)など、心身に大きな影響を与えていることも明らかになっています。
こうした背景から、労働者による求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止し、求職者等が安心して活動できる環境づくりが事業主に求められているのです。
求職者等に対するセクシュアルハラスメントとは?
今回の法改正では、求職者等に対するセクシュアルハラスメントについて、事業主が雇用する労働者による「性的な言動」によって求職者等による求職活動等が阻害されるものと規定されました。
ここで言う「求職者等」には、採用面接への参加者など企業の求人に応募する人だけでなく、就職説明会への参加者、インターンシップや教育実習・看護実習を受ける人なども含まれます。また、いわゆるOG・OB訪問で企業の雇用する労働者を訪問する人もこれに該当します。
「求職活動等」とは、採用面接や就職説明会への参加、OG・OB訪問、実習の受講など、求職者等が行う職業選択のための活動を指します。ここには、SNS等のオンラインを介して行われるものも含まれます。また、飲食店など労働者が通常就業している場所以外で行われるものも含まれます。
・インターンシップにおいて、労働者が求職者等に対して性的な冗談やからかいを行ったため、当該求職者等が苦痛に感じてインターンシップ中の活動が手につかないこと
・求職者等が労働者への訪問を行った際、当該労働者に性的な関係を求められ、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること
・インターンシップ中に労働者が求職者等に執拗に私的な食事に誘い、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること
などがあります。
事業主は、労働者によるこうした行為を防止するため、雇用管理上の必要な措置を必ず講じなければなりません。
どんな対応が必要か?事業主に求められる対応のポイント
今回の法改正により、令和8年10月1日から、事業主に求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止するための措置を講じることが義務づけられます。主な内容は次のとおりです。
① 方針の明確化とその周知・啓発
事業主は、求職者等に対するセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針や、そうした行為を行った者には厳正に対処する旨の方針とその内容を定め、労働者に周知・啓発しなければなりません。また、面談時間や場所の指定、実施体制、やり取りに用いるSNSの種類など、求職活動等に関するルールをあらかじめ明確にし、労働者だけでなく求職者等にも周知・啓発する必要があります。
② 相談体制の整備
事業主は、求職者等に対するセクシュアルハラスメントに関する相談窓口をあらかじめ定め、それを求職者等に周知しなければなりません。あわせて、相談窓口の担当者が適切に対応できるようにすることも求められます。
③ 迅速かつ適切な対応
求職者等に対するセクシュアルハラスメントに係る相談の申出があった際には、事業主は、事実関係を迅速かつ正確に確認しなければなりません。その結果、求職者等に対するセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、被害を受けた求職者等への必要な配慮のための措置と行為者に対する措置を適正に行わなければなりません。あわせて、再発防止に向けた措置を講じることも求められます。
④ あわせて講ずべき措置
事業主は、相談者や労働者のプライバシー保護のための措置を講じるとともに、それを労働者と求職者等に周知しなければなりません。また、労働者が事業主による事実関係の確認等に協力したことを理由として不利益な取扱いをされないことを定め、労働者に周知・啓発することが求められます。
求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策に関するよくある質問(Q&A)
Q.
「求職者等」とはどのような人ですか?
A.
企業の求人に応募している人や採用面接の参加者だけでなく、就職説明会やインターンシップ、教育実習・看護実習など、求職活動や職業の選択に資する活動に参加する人を含みます。また、OG・OB訪問で企業が雇用する労働者を訪問する人も対象となりますが、授業の一環としての社会科見学など専ら教育を目的として行われるものに参加する人は含みません。
Q.
令和8年10月1日以降、就職活動中やインターンシップ中などにセクシュアルハラスメントを受けた場合、事業主が設けている相談窓口と大学のキャリアセンター等の相談窓口の、どちらに相談すればよいでしょうか?
A.
事業主が設けている相談窓口のほかに、キャリアセンター等の教育機関が設置する相談窓口など、いずれへの相談も可能です。個々の事案の状況等によって、ご自身で判断してください。なお、事業主が設置する相談窓口では、担当者が適切に対応できるようにすることや、相談者のプライバシー保護の措置を講じることが、事業主の義務となっています。
被害を受けた方が、事業主の設置する相談窓口への相談を躊躇する場合などには、キャリアセンター等の教育機関が設置する相談窓口や教員等への相談を希望することも考えられます。求職者等に対するセクシュアルハラスメントに関する情報提供があった場合、事業主はこれらの情報提供元と連携し、適切に対応することが望まれます。
そのほか、都道府県の労働局雇用環境・均等部(室)への相談も可能です。
