労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成28年(不再)第62号
大乗淑徳学園不当労働行為再審査事件
再審査申立人   Y法人 
再審査被申立人   X組合 
命令年月日  平成29年10月4日 
命令区分  棄却 
重要度   
事案概要  1 本件は、YがYの運営する大学の学部の廃止予定を受けて結成されたXに対し、
①組合員の雇用の維持や組合活動の保障等を議題とする団交申入れに応じなかったこと
②Y施設内における組合活動を認めないなどとXに通知したこと
③YとXの間の連絡手段を郵便に限定したこと
④Xあての郵便物を返送したこと
などが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事案である。
初審東京都労委は
①Yの求める団体交渉ルールに固執した団体交渉拒否の禁止
②Y施設内における組合活動を認めないなどの通知、YとXとの間の連絡手段を郵便に限定し文書や口頭による申入れを受け付けないこと及びXあての郵便物等の返送等による支配介入の禁止
③文書掲示等
を命じ、その余の申立てを棄却したところ、Yはこれを不服として再審査を申し立てた。
 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する
 
判断の要旨  1団交申し入れに応じなかったこと
 組合員の雇用の維持という重要な議題が含まれていることから、Yは開催条件に関する労使の対立を速やかに解消して、団体交渉に応ずべきであった。しかし、Yは、交渉場所についてXの主張を採れない合理的な理由を具体的に説明することなく、学外に限るとの自らの条件に固執して団体交渉を開催しなかったといわざるを得ず、Yが団体交渉の開催に応じなかったことに正当な理由があったとはいえない。
よって、正当な理由なく団体交渉を拒否したものとして、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
2 Y施設内における組合活動を認めないなどとXに通知したこと
 Yは、XがY施設の利用に関する要求を議題に含めて団交申入れを行ったのに対し、団体交渉を開催しないまま、Y施設における組合活動を認めない旨通知した。また、他の学校で結成された労働組合にはY施設内の組合活動を認めているが、異なる取扱いをすることを是認し得る事情に関する具体的な立証はない。
 したがって、Xの存在を嫌悪し、その活動を抑制し、Xを弱体化することを企図したものと認められ、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たる。
3 YとXとの間の連絡手段を郵便に限定したことについて
 Yが速やかに団体交渉に応ずべき状況下において、団体交渉の開催に関する連絡について、郵送での文書のやり取りに限る旨を一方的に通告し、Y施設内での直接のやり取りを禁止したことは、円滑な団体交渉の開催を阻害し、Xの基本的な活動に支障を来すものであるといえる。
 したがって、Xの存在を嫌悪し、また、あえてXに労力をかけさせることにより、その活動を抑制し、Xを弱体化することを企図したものと認められ、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たる。
4 X宛て郵便物を返送したこと及び組合委員長の自宅に転送したことについて
 Yにとって、X宛ての郵便物を受け取り、組合委員長のレターボックスへ投入する手間に比べ、同郵便物等を返送又は転送する手間の方が大きい。また、同郵便物等が返送又は転送されることにより、Xに金銭的な負担が発生するとともに、受け取るまでの期間が長期化し、組合活動に一定の不便が生じることは、Yにとっても容易に認識し得るところである。
 したがって、Xの組合活動を阻害することを十分認識した上で行われたといわざるを得ず、Xの存在を嫌悪したYがあえてXに負担をかけさせることにより、その活動を抑制し、Xの弱体化を企図して行ったものと認められ、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たる。
 
掲載文献   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
都労委平成27年(不)第73号 一部救済 平成28年10月4日
東京地裁平成29年(行ウ)第505号 棄却 平成31年2月21日
東京地裁平成30年(行ク)第174号 認容 平成31年2月21日
東京高裁平成31年(行コ)第63号 棄却 令和元年8月8日
最高裁令和2年(行ヒ)第19号 上告不受理 令和2年3月11日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約225KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。