労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成27年(不)第73号
大乗淑徳学園不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  法人Y(「法人」) 
命令年月日  平成28年10月4日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、法人が、①団体交渉の場所を法人の運営する大学のキャンパス外の施設とする等、法人の求める団交ルールに従わないと団体交渉に応じないとして、団体交渉を拒否したこと、②法人の運営する学園施設内での組合活動の禁止及び法人と組合とのやりとりを郵便に限定する旨を組合に通知したこと並びに③組合の上部団体が、組合委員長を受取人として送付した郵便物等を返送したり、委員長の自宅に転送したこと等が不当労働行為に当たるとして、救済申立てのあった事件で、東京都労働委員会は、法人に対し、誠実団交応諾、支配介入の禁止並びに文書の掲示及びその履行に係る報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人法人は、申立人組合が平成27年3月26日付け及び5月9日付けで申し入れた団体交渉について、団体交渉の開催場所を学園施設外に限定するなど、法人の求める団体交渉ルールに従うことに固執して、これを拒否してはならない。
2 被申立人法人は、申立人組合に対し、学園施設内の組合活動を認めないなどと通知すること、法人と組合間の連絡手段を郵便に限定し文書や口頭による申入れを受け付けないこと、及び組合宛ての郵便物等を返送又は組合員長の自宅に転送することにより、組合の運営に支配介入してはならない。
3 被申立人法人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を、55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2 頁大)の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、被申立人法人のC1キャンパスの教職員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
(省略)
4 被申立人法人は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
5 その余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 団体交渉について
 本件において、法人は団体交渉のルールを巡って労使双方の見解が対立している中で、法人が提示したルールに組合が全て合意しなければ団体交渉を開催しないという姿勢を示しており、その団体交渉ルールの提示において、学外でなければ団体交渉を行わないという、合理性がなく、組合にとって容易に受け入れ難い条件に固執していたのであるから、このような法人の対応によって、団体交渉の開催に至らなかったものと解するほかない。
 したがって、法人が、3 月26日付け及び5 月9 日付けで組合の申し入れた団体交渉に応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。
2 就業時間中及び学園施設内における組合活動の禁止について
① 就業規則で学園施設内における組合活動が禁止されているとしても、就業時間外に行われる、団体交渉に関する連絡のようなことまでも学園施設内における組合活動として禁止し、わざわざ、郵便を連絡手段とすることに、合理的な理由は認められない。
② 法人が、組合員らが、就業時間外に、学内で、組合に関する立ち話をすることや、組合の文書を他の組合員の学内の研究室に持っていって渡すことも学園施設内の組合活動に当たり、就業規則違反であるとしていること、学内に組合事務所がないことをもって、学内の組合の存在を否定していること等も考慮すると、法人の4 月1 日付「団体交渉申入書」並びに同月22日付け、同30日付け及び5 月14日付「回答書」における通知は、就業時間外に、組合員間の組合に関する立ち話程度のことも含め、法人の業務や施設管理に具体的な支障が生じない態様で行われる組合活動を、学園施設内で行われることを唯一の理由として一律に禁止するものであるといわざるを得ない。
③ したがって、法人が、組合に対し、学園施設内の組合活動を認めないなどと通知したこと、法人と組合間の連絡手段を郵便に限定したこと、及び文書の返却又は写しの交付についての組合からの依頼に対し、郵送にてその旨を要望するよう述べたことは、いずれも、組合の活動に制約を加え、組合の弱体化を意図した支配介入に当たる。
3 組合宛て郵便物等の返送又は転送について
① 法人においては、私用であっても、教員個人宛ての郵便物を当該教員のレターボックスに入れるという取扱いがなされているにもかかわらず、とりわけ組合宛て郵便物等を異なる取扱いにすることは、組合及び(組合の上部団体である)A2組合を嫌悪し、両者の連絡を妨げることが目的であると捉えられても仕方がない。
② 法人は、(法人の経営する)C2中高では、C3教組宛ての郵便物を、返送又は同教組委員長の自宅に転送することなく、同委員長に渡している。一方、組合とC3教組との間で異なる取扱いをする合理的理由についての疎明はない。
 さらに、組合宛て郵便物等を私用の郵便物と同様にA1委員長のレターボックスに入れることによって、法人の業務に具体的な支障が生じるとの疎明はない。
③ 一方、組合においては、組合宛て郵便物を返送又は転送されることによって、A2組合との連絡に支障が生じ、転送費用の負担が発生しており、組合活動に具体的な支障が生じている。
④ 以上の事実を総合的に判断すると、法人が、組合宛て郵便物の受取を拒否し、A2組合に返送し、又はA1委員長の自宅に転送したことは、組合を嫌悪し、組合の弱体化を意図したものとみざるを得ず、支配介入に当たる  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成28年(不再)第62号 棄却 平成29年10月4日
東京地裁平成29年(行ウ)第505号 棄却 平成31年2月21日
東京地裁平成30年(行ク)第174号 認容 平成31年2月21日
東京高裁平成31年(行コ)第63号 棄却 令和元年8月8日
最高裁令和2年(行ヒ)第19号 上告不受理 令和2年3月11日
 
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