労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  明泉学園 
事件番号  中労委平成25年(不再)第87号 
再審査申立人  学校法人明泉学園(「学園」) 
再審査被申立人  鶴川高等学校教職員組合(「組合」) 
命令年月日  平成26年12月3日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、①学園の運営する高校のクラス担任であった組合員Aが、授業時間中に教室に入らない約10名の生徒(「本件生徒」)を指導した際、本件生徒らが感情的になり、トラブル(「本件トラブル」)となったことを理由として、学園が組合員Aをクラス担任から外す発令を行ったこと(「本件クラス担任外し」)、②学園が組合員Aの担当クラスの生徒に、本件生徒らの組合員Aに対する意見等を記載した文書(「本件文書」)を配布したことが、いずれも、労組法第7条第1号、第3号の不当労働行為に当たるとして、救済申立てが行われた事案である。
2 初審の東京都労委は、本件クラス担任外し及び本件文書の配布はいずれも不当労働行為であったと認め、学園に対し、 組合員Aをクラス担任に就任させること、文書掲示を命じたところ、学園が、再審査を申し立てたものである。 
命令主文  再審査申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 本件クラス担任外しは不当労働行為に当たるか。
 (1) 本件クラス担任外しは、もっぱら本件トラブルの収拾と再発防止を図るために行われたというよりは、むしろ本件トラブル発生を契機に、組合員Aを不利益に取り扱うことを意図して行われた措置であったというべきであり、本来的には校長らの判断が尊重されるべきであるとしても、やはり不相当な措置であったといわざるを得ない。
 (2) 本件クラス担任外しは、性急に決定されており、事実調査と検討において不十分なものであった上、通知方法等の手続において不相当なものであったといわざるを得ない。
 (3) 本件トラブルが発生した当時、学園は、組合から提起された訴訟で敗訴し、多額の金員の支払を余儀なくされていた上、組合が新たに提起した訴訟への対応に当たらなければならない状況であった。 さらに、裁判所から、学園は組合を差別している旨指摘されたり、労働委員会命令の不履行があるとして過料の制裁を受けるに至っていた上、組合との団体交渉においては、組合員Aに係る要求を繰り返されていた。 このような状況であったことからすれば、学園は、対立的な組合の存在を嫌悪していたと考えられるところである。
 さらに、学園は、本件トラブルの直後に、組合から、その背景には学園の問題を隠蔽する体質があるなどとして、 本件トラブルの責任は学園にあると指摘されていたことから、組合に対する嫌悪の情は相当強くなっていたものと認められるところであり、このことが、組合員を対象として行った本件クラス担任外しの性急な決定にも影響を与えていたものと推認される。
 (4) 以上からすれば、本件クラス担任外しは、本件トラブルの責任は全て組合員A個人にあったことにしてあえてクラス担任から外すことにより、本件トラブルにおける学園の責任を追及しようとする組合活動を牽制するとともに、組合員Aに係る要求を続けていた当時の組合の活動や組織に打撃を与えようと考えたからであったと認めるのが相当である。したがって、本件クラス担任外しは、組合員Aが、組合員であることを理由として行われた不利益取扱いであり、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たる。
 (5) 本件クラス担任外しは、組合員Aが組合員であることを理由として行われた不利益な措置であり、学園は、本件クラス担任外しが行われた当時、組合の活動が積極的に行われており、組合に対する嫌悪感を強めていたことから、年度途中であるにもかかわらず、あえてクラス担任から外すという不利益な措置を講じたものであると考えられる。
 そうすると、本件クラス担任外しは、組合が積極的に活動することを困難にするものであっただけでなく、学園が組合の存在を嫌悪していること、学園では組合員であることを理由に殊更不利益な措置を講じることがあるということを組合や教職員らに知らしめるものであったと認めるのが相当である。 したがって、本件クラス担任外しは、労組法第7条第3号の不当労働行為にも当たる。
2 本件文書の配布は不当労働行為に当たるか。
 (1) 本件文書は、本件トラブルが、組合員Aの対応に一方的な問題があって発生したものであって組合員Aの教師としての適性には問題があるようにあえて印象付ける内容であったといわざるを得ない。
 さらに、本件文書には、本件生徒らが、本件トラブルにおける組合員Aの対応を非難する内容や、組合員Aの教師やクラス担任としての適性を疑問視する言葉が生々しく記載されていた。
 しかし、年度途中にクラス担任を変更することになったからといって、このような内容を、生徒やその保護者が目にする文書にあえて記載する必要性があったとは考え難い。
 特に、学園は、本件クラス担任外しの後、組合員Aに対し、学年付担任として、二学年全体の指導に当たる可能性のある職務を命じていたのであるから、本件文書を配布すれば、組合員Aが学園内で教師として一層苦しい立場に追い込まれることを認識していながら、あえて配布に及んだものと考えられる。
 加えて、本件文書の配布は、本件クラス担任外しについて生徒と保護者に伝えるものであったから、上記の本件クラス担任外しと同様の目的をもって行われた行為であったと認めるのが自然である。
 (2) 以上のとおり、学園が本件文書を配布したことは、本件クラス担任外しによって既に厳しい状況に立たされた組合員Aを一層苦しい状況に追い込むものであったことなどからすれば、本件クラス担任外しと同様、組合員であることを理由として行われたものであったと認めるのが相当である。 したがって、本件文書の配布は、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たる。
 (3) 本件文書の配布は、組合員Aが組合員であることを理由として行われたものであったと考えられるところ、その内容からすれば、本件文書が配布されたことは、将来的に、組合員Aが、学園の生徒やその保護者との間の信頼関係を構築することを困難にさせるものであった。
 そうすると、本件文書の配布は、学園に勤務する教職員らに、組合に加入すると学園から殊更不利益な取扱いを受けることがあるということを知らしめるための行為であったというべきである。 したがって、本件文書の配布は、組合の組織や活動に打撃を与える行為であったと認めるのが相当であり、労組法第7条第3号の不当労働行為にも当たる。
3 救済方法
 学園は、遅くとも27年4月1日までに組合員Aをクラス担任に就任させるべきである。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
都労委平成24年(不)第3号 全部救済 平成25年11月5日
東京地裁平成27年(行ク)第417号 緊急命令申立ての認容 平成28年3月31日
東京地裁平成27年(行ウ)第17号 棄却 平成28年6月29日
東京高裁平成28年(行コ)第275号 棄却 平成28年12月14日
最高裁平成29年(行ヒ)第140号 上告不受理 平成29年7月20日
 
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