労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京高裁平成28年(行コ)第275号
明泉学園不当労働行為救済命令取消請求控訴事件 
控訴人  学校法人X(「法人」) 
被控訴人  国(処分行政庁・中央労働委員会) 
被控訴人補助参加人  Z高等学校教職員組合(「組合」) 
判決年月日  平成28年12月14日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、①法人の運営する高校のクラス担任であった組合員A1が、授業時間中に教室に入らない約10名の生徒を指導した際、本件生徒らが感情的になり、トラブルとなったことを理由として、学園が組合員A1をクラス担任から外す発令を行ったこと、②法人が組合員A1の担当クラスの生徒に、本件生徒らの組合員A1に対する意見等を記載した文書を配布したことが、いずれも、労組法第7条第1号、第3号の不当労働行為に当たるとして、救済申立てが行われた事案である。
2 初審の東京都労委は、本件クラス担任外し及び本件文書の配布はいずれも不当労働行為であったと認め、法人に対し、組合員A1をクラス担任に就任させること、文書掲示等を命じた。法人は、初審命令を不服として、再審査を申し立てたが、中労委は、再審査申立てを棄却するとの命令を発した。
3 法人は、これを不服として東京地裁にその取消しを求める行政訴訟を提起したが、同地裁は法人の請求を棄却した。
4 法人は、これを不服として東京高裁に控訴したが、同高裁は法人の控訴を棄却した。 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用(補助参加により生じた費用を含む。)は、控訴人の負担とする。  
判決の要旨  第3 当裁判所の判断
 当裁判所も、控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は、次のとおり付加訂正するほか、原判決「事実及び理由」中の第3に記載のとおりであるから、これを引用する。
(原判決の補正)
(1) 41頁11行目の「原告」を「本件高校」に改める。
(2) 41頁26行目から42頁1行目にかけて及び46頁19行目の「本件組合所属の組合員」を「本件組合員」に改める。
(3) 45頁22行目の「本件生徒意見書ら」を「本件生徒ら意見書」に改める。
(4) 46頁8行目の次に改行して次のとおり加える。
 「 これに対し、控訴人は、上記4名は同日1校時のホームルームに出席していたとして、1校時に4日付け聴取がなされた事実を否定するかの主張をするが、前記(ア)aのとおり、B3も1校時に本件生徒らのうちI、H、Z、K、U、Tの6名に対して応接室で4日付け聴取を行った旨を述べているところ、上記6名はいずれも1校時に出席したものとされており、4日付け聴取を受けた生徒は1校時を出席したものとして取り扱われたことが窺われるから、前記認定を左右するものではない。」
(5) 46頁11行目の「B4副報告書」を「B4報告書」に、同行目の「B1教頭、B5、B3」を「B1教頭ら」にそれぞれ改める。
(6) 49頁16行目から52頁3行目までを次のとおり改める。
  「b 本件全証拠をもってしても、本件懇請発言があったことを認めるに足りる証拠はない。本件生徒ら意見書中には、本件懇請発言があったとするもの、あるいは本件懇請発言があったことを前提とするものがあるが、その作成経緯(前記1(2))や、4日付け聴取に関与した者の中に本件トラブル発生の最大の原因を作ったB2がいることに照らし、到底その記載内容を採用できるものではない。かえって、証拠によれば、本件生徒らはA1に椅子の背もたれを持って詰め寄りながら『MAがここに来るんだ。お前はここから出て行け。』という言葉を投げつけただけであったことが認められる。すなわち、本件生徒らは、A1に対して、MAと会えるのはこれが最後だとか、手紙を渡したいとかいう情報を伝えていない。MAが来校することをB2が黙認していたことを知らないA1にとっては、本件生徒らが本件高校が禁止している退学した生徒の来校という発言をしたことから、非日常的な異常事態の発生のリスクを感じつつ、先が読めないという状況の中に突然置かれたことになり、通常の教員であっても相当程度混乱するような緊迫した状態に陥ったものと認められる。
  A1はB2からMAの来校予定を聞かされていたわけではなく、本件高校においては、そもそも退学者が校内に立ち入り、在学生と交流することは原則として禁止されている上、既に5校時の始業時刻を過ぎており、また、ミモザにおいて、前記本件高校における禁止事項に反し、また、授業時間中に、MAと本件生徒らが本件高校内で交流することについて教員その他の責任ある立場の者が立ち会っていたことを窺わせる事情もないことから、本件高校の教員であるA1にとってEHの申出はそもそも容認できる内容ではない。仮に本件生徒らに対して一定の配慮を示す必要があるとすれば、それはとりもなおさず、退学者との校内における交流が原則として禁止され、授業の始業時刻も過ぎている本件においては、A1の判断と責任において本件生徒らの禁止事項への違反と怠学を容認するよう強いることを意味し、その結果としてA1において、このような大元のルールに反し、規範意識に欠ける対応をしたとして後に職責違反を咎め立てられかねない状況に追い込まれる可能性があるといえるから、控訴人のいう配慮とは、不当な要求であるといわざるを得ない。A1の指導が不適切であったということは到底できず、むしろ、ミモザから教室に戻るよう指導したことは、標準的な力量を有する教員の標準的な指導の水準又はこれを上回る水準にあるものというべきである。」
(7) 52頁6行目から同8行目にかけての「仮にその指導が事務的、機械的にすぎ、本件生徒らに対する配慮に欠ける面があると評価するにしても、」を削る。
(8) 52頁23行目から同24行目にかけての「その発言は生徒の行為に対するものとしてやや穏当を欠く面があるものの、」を削る。
(9) 53頁9行目から同12行目までを削る。
(10) 53頁13行目の「しかしながら、」を削る。
(11) 53頁22行目の「A1の」から同23行目の「事実であるが、」までを削る。
(12) 53頁25行目から同26行目にかけての「このようにやむを得ずにした」から54頁1行目までを「謝罪の際に『じゃあ』と一言発してしまったとしても、緊迫した事態下においては通常の教員であっても発してしまう発言であって、たまたま生徒から反発が出たとしても、教員あるいはクラス担任の標準的な資質の欠如を窺わせるものではない。」に改める。
(13) 55頁1行目の「同人作成の報告書」及び同12行目の「A1作成の報告書」をいずれも「本件報告書」に改める。
(14) 55頁7行目の「B1教員ら」を「B1教頭ら」に改める。
(15) 56頁2行目から3行目にかけての「公正さに疑問の残るものである。」を次のとおり改める。
  「公正さを欠くものである。控訴人は、本件高校においてはこの種の聴取をB1教頭らに行わせるのが通常であると主張するが、本件トラブル発生の最大の原因を作ったB2に本件生徒らの聴取を担当させることは調査の公平に対する信頼性をその基礎から崩壊させるものである。控訴人の上記主張は採用することができない。」
(16) 56頁22行目及び同26行国の「原告」をいずれも「本件高校」に改める。
(17) 57頁4行目の「報告書」及び同5行目から6行目にかけての「A1の作成した報告書」をいずれも「本件報告書」に改める。
(18) 58頁14行目から24行目までを次のとおり改める。
  「エ 以上によれば、本件トラブルにおける本件生徒らに対するA1の指導は、標準的な力量を持つ標準的な教師による指導の水準と同等又はこれを上回るものである。A1の指導に不適切な点があったことを認めるに足りる証拠はない。そうであるにもかかわらず、控訴人は、緊急の必要性もないのに、A1本人に対する弁明の機会も与えず、本件生徒らの一部に対する4日付け聴取など11月4日の1日だけで拙速に調査を終了させたものであって、その調査方法も公正さを欠くものであった。
  そうすると、本件解任には必要性も合理性もなかったものというべきである。」
(19) 59頁16行目の「第三次」を削る。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
都労委平成24年(不)第3号 全部救済 平成25年11月5日
中労委平成25年(不再)第87号 棄却 平成26年12月3日
東京地裁平成27年(行ク)第417号 緊急命令申立ての認容 平成28年3月31日
東京地裁平成27年(行ウ)第17号 棄却 平成28年6月29日
最高裁平成29年(行ヒ)第140号 上告不受理 平成29年7月20日
 
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