労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ひまわりの会 
事件番号  神労委平成23年(不)第18号 
申立人  全国福祉保育労働組合神奈川県本部、同緑陽苑分会 
被申立人  社会福祉法人ひまわりの会 
命令年月日  平成25年3月12日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人が①申立人組合県本部の執行委員長X1を有料老人ホームAの生活相談員の責任者から解任し減給処分としたこと、②同人をAの生活相談員から特別養護老人ホームB所属の運転手に配置転換したこと、③上記①及び②並びに職員の処分問題についての申立人組合分会及び県本部の組合活動に対して介入したこと、④分会の申し入れた団交に誠実に応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 神奈川県労委は法人に対し、1 上記①の処分をなかったものとして取り扱うこと等、2 上記②の配置転換をなかったものとして取り扱うこと等、3 文書の手交・掲示を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人の全国福祉保育労働組合神奈川県本部執行委員長X1に対する平成23年2月21日付け責任者解任及び減給処分をなかったものとして取り扱い、同人を責任者に復帰させるとともに、同年4月から責任者復帰に至るまでの間、上記処分がなかったならば支給されるべきであった職務手当相当額に年率5分相当額を加算した額の金員を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人の全国福祉保育労働組合神奈川県本部執行委員長兼同緑陽苑分会分会長X1に対する平成23年4月18日付け配置転換をなかったものとして取り扱い、同人を有料老人ホーム緑陽白鳥ホームの生活相談員に復帰させなければならない。
3 被申立人は、本命令受領後、速やかに下記の文書を申立人らに手交するとともに、同文書の内容を縦1メートル、横2メートルの白色用紙に明瞭に認識することができる大きさの楷書で記載した上で、被申立人の特別養護老人ホーム緑陽苑、緑陽苑地域ケアセンター及び有料老人ホーム緑陽白鳥ホーム内の職員の見やすい場所に毀損することなく10日間掲示しなければならない。
 当法人が、①貴全国福祉保育労働組合神奈川県本部の執行委員長であるX1を平成23年2月21日付けで生活相談員の責任者から解任し減給処分としたこと、②同年4月1日から貴全国福祉保育労働組合神奈川県本部緑陽苑分会の分会長を兼任した同人を同月18日付けで特別養護老人ホーム緑陽苑所属の運転手業務に配置転換をしたこと、③①及び②並びに職員の処分問題に関する上記県本部及び上記緑陽苑分会の組合活動に対して介入したこと、④上記緑陽苑分会の申し入れた①及び②並びに職員の人事問題等を交渉事項とする団体交渉に誠実に応じなかったことは、労働組合法第7条第1号、第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると神奈川県労働委員会において認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
平成 年 月 日
 全国福祉保育労働組合神奈川県本部
  執行委員長 X1 殿
 全国福祉保育労働組合神奈川県本部緑陽苑分会
  分会長 X1 殿
社会福祉法人ひまわりの会
理事長 Y1
判断の要旨  1 組合員X1に対する減給処分及び配置転換について
 X1は本件処分により責任者手当の支給を停止されており、経済上の不利益が認められる。また、本件配置転換は、X1の従前の経験や培ってきた技能をほとんど生かすことができなくなる点で職務上の不利益が認められる。
 本件処分等の不当労働行為性についてみると、法人は当初、X1が組合員X2の処分問題に関して行った組合活動を申立人組合県本部とは関係のないX1の単独行動と捉えて問題視する姿勢を示したが、申立人組合分会から同人の行動は県本部として取り組んだものである旨記載された回答書を受け取った後は、同人の行動が組合活動であることを明確に認識したにもかかわらず、同人の組合活動を嫌悪して本件処分等に及んだものと認められる。
 本件処分の合理性に関しては、法人が処分の根拠としたX1の行動については一部に問題のあったことが窺われるが、法人の主張を裏付ける議事録等が書証として提出されなかったことなどもあり、事実関係を全体としてみると、本件処分に十分な理由があるとは認められない。また、本件配置転換は、業務上の具体的必要性や人選の合理性に疑問があるだけでなく、手続の相当性も欠落しており、合理性を認めることはできない。
 以上から、本件処分及び配置転換は、組合員であること又は正当な組合活動をしたことを理由とする不利益取扱いに当たる。
2 支配介入について
 法人は、前記1のとおり、分会がX1の行動は組合活動であることを明らかにした上、同人を分会長に就任させると、一転して分会の活動に対する不信感をあらわにし、本件処分等により同人を直接攻撃して組合活動からの排除を図る一方、分会員以外の職員に対して分会とは別の職員団体を設立するよう呼びかけるに至っている。かかる法人の対応は、自主的に決定されるべき分会等の組織運営や組合活動に対する明白な干渉であり、分会等の弱体化を企図したものであると認められる。
 以上から、本件処分及び配置転換並びに職員の処分問題についての分会及び県本部の活動に対する法人の対応は、分会等の運営に対する支配介入に当たる。
3 団交拒否について
 法人は、本件処分等に関し分会が申し入れた団交の開催について、要求の根拠をあらかじめ文書で回答するよう求めるなど複数の条件を付し、分会がその条件を受諾しない限り日程調整に応じないとの姿勢を堅持していたものといえる。また、本件救済申立ての後は、一度は団交に応じたものの、本件処分についての自らの主張や本件配置転換に関連する新規事業計画について具体的に説明したり、必要な資料を提示するといった誠意ある対応をとることはなかった。
 以上から、分会の団交申入れに対する法人の対応は不誠実であるといえる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成25年(不再)第17号 棄却 平成26年3月12日
東京地裁平成26年(行ク)第383号 緊急申立ての一部認容 平成27年3月25日
東京地裁平成26年(行ウ)第189号 棄却 平成27年11月27日
東京高裁平成28年(行コ)第3号 棄却 平成28年4月21日
最高裁平成28年(行ツ)第255号、平成28年(行ヒ)第295号 上告棄却・上告不受理 平成28年9月29日
 
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