労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 ネグロス電工
事件番号 中労委平成21年(不再)第15号
再審査申立人 ネグロス電工株式会社
再審査被申立人 全国金属機械労働組合港合同
命令年月日 平成22年5月12日
命令区分 一部変更
重要度  
事件概要 本件は、会社が、①平成19年6月に定年を迎える組合員Xの雇用延長に係る団体交渉に誠実に対応しなかったこと、②同人の平成19年夏季一時金に関する団交に応じなかったこと、③同人に対し、定年後の就労を認めず、雇用延長ではなく再雇用契約を求めたこと及び平成19年夏季一時金を支給しなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
初審大阪府労委は、前記のうち、①Xの再雇用の具体的条件に係る誠実な協議の実施及び同人との再雇用契約書の締結に関して不利益取扱いがなければ支払われたであろう賃金相当額と既払額との差額の支払、②文書手交を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、会社はこれを不服として、再審査を申し立てた。
命令主文 Ⅰ 本件初審命令主文を次のとおり変更する。
1 ネグロス電工株式会社(以下「会社」という。)は、全国金属機械労働組合港合同(以下「組合」という。)の組合員Xの定年退職後の再雇用条件について、次の措置を講じなければならない。
(1)会社は、組合の組合員Xに対し、平成19年6月14日付け定年者再雇用社員雇用契約書の締結に関して、不利益取扱いがなければ支払われたであろう賃金相当額と既に支払った賃金額との差額を支払わなければならない。
(2)前項の履行に当たっては、会社は、組合員Xの賃金・労働時間等具体的な再雇用条件について、組合と誠実に協議し、決定しなければならない。
2 会社は、組合に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。


年月日
全国金属機械労働組合港合同 殿
ネグロス電工株式会社
当社が、貴組合の組合員X氏の定年退職に当たって、平成19年6月14日付け定年者再雇用社員雇用契約書記載の労働条件を提示したことは労働組合法第7条第1号及び第3号に、平成19年夏季一時金に関する団体交渉に応じなかったことは労働組合法第7条第2号に、それぞれ該当する不当労働行為であると中央労働委員会において認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
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3 その余の本件申立てを棄却する。
Ⅱ その余の本件再審査申立てを棄却する。
判断の要旨 1 争点1(Xの雇用延長についての団交における会社の対応は、労組法7条2号又は3号に当たるか。)
組合は、団交の場で口頭により団交を申し入れ、これに対し、会社は再雇用制度ができたら会社から団交を申し入れることを了解したと主張するが、①団交を申し入れたとする組合の証言は一貫性及び整合性がなく信用性に欠けていること、②これまで会社から団交を申し入れたことはないこと、再雇用制度制定後、会社から団交を申し入れないことに対して、組合は何ら抗議も行っていないこと等から、組合から団交を申し入れたとする事実を認めることはできず、会社の対応は不当労働行為ということはできない。
2 争点2(Xの平成19年夏季一時金に関する組合の団交申入れに対する会社の対応は、労組法7条2号に当たるか。)
組合から19年夏季一時金について団交申入れがあったこと、夏季一時金はXの個別的な労働条件に関する事項で義務的交渉事項に当たることは明らかである。また、就業規則で支給日に在籍していることが要件に定められているとしても、団交の場で根拠を示して説明すべきであり、労使交渉により、別異の解決の余地は存するのであり、同団交に応じなかったことは、不当労働行為である。
3 争点3(会社がXの定年後の就労を認めず、雇用延長ではなく再雇用契約を求めたことは、労組法7条1号又は3号に当たるか。)
Xに提示された再雇用条件は、賃金月額が5万円程度、定年退職時と比較して約6分の1という著しく低いものであって、他の定年退職者と比べても大きな格差があり、その内容は著しく合理性を欠いている。
また、団交の場においてXの定年退職後の雇用延長について会社に質したことがある等再雇用に至る経緯から、会社は、Xや組合に再雇用の労働条件を説明すべきであったにもかかわらず、何ら事前の説明を行っていないことは誠実な対応とはいい難く、定年退職日の前日にXに再雇用条件を提示した会社の対応は不自然である。加えて、会社管理職が定年退職後に出勤したXに対し不法侵入であると不適切な発言を行っている。
これら諸点を勘案すると、会社の対応は従前から会社における唯一の組合員であるXを嫌悪し、定年後の再雇用に当たり、本件再雇用条件を提示することによって意図的に経済的に不利益に取り扱うとともに、もって、組合の弱体化を企図した不当労働行為である。
掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成19年(不)第32号 一部救済 平成21年3月24日
東京地裁平成22年(行ウ)第361号 棄却 平成24年3月19日
東京地裁平成22年(行ク)第314号 緊急命令申立ての認容 平成24年3月19日
東京高裁平成24年(行コ)第154号 棄却 平成24年7月26日
最高裁平成24年(行ヒ)第428号 上告不受理 平成25年9月20日
 
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