概要情報
事件名 |
高見澤電機製作所外1社(事業再建)外2件 |
事件番号 |
中労委平成17年(不再)第23号外(26・27・28・71・72・73) |
再審査申立人 |
(23号)富士通株式会社、(26号・72号)株式会社高見澤電機製作所、(27号・28号・73号)全日本金属情報機器労働組合外2組合、(71号)富士通コンポーネント株式会社 |
再審査被申立人 |
(23号・26号・71号・72号)全日本金属情報機器労働組合外2組合、(27号・28号)富士通株式会社・株式会社高見澤電機製作所、(73号)高見澤電機製作所外2社 |
命令年月日 |
平成20年11月12日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
重要命令 |
事件概要 |
1 A事件 (1)高見澤及び富士通が、(i)信州工場にあったデバイス技術部を移転したこと、(ii)信州工場の業務の一部をZ通信に営業譲渡したこと、(iii)Z通信への転社者、希望退職者の募集等による高見澤の事業再建策の実施に伴い、支部組合員に対して人事異動を行ったこと(以下、上記(1)(i)デバイス技術部の移転、(ii)信州工場の業務の一部の営業譲渡、(iii)転社者及び希望退職者の募集等の事業再建策並びにこれに伴う一連の人事異動等を「本件組織変更等」)、(2)高見澤が、(i)信州工場内に仕切り壁を設置し、支部機関紙の配布を妨害したこと、(ii)デバイス技術部の移転、事業再建策、11年度賃上げを交渉事項とした団体交渉において、不誠実な対応をしたこと、(iii)転社者及び希望退職者の募集に際し、組合員の切り崩しを図ったこと、(3)富士通が、高見澤の事業再建策等を交渉事項とした団交を拒否したことが不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
2 B事件 (1)高見澤が、グループ会社全体を統括する管理・営業・技術開発部門の持株会社への営業譲渡(「本件持株会社設立等」)が高見澤と信州工場の事業の将来構想及び同社と同工場の労働者の雇用・労働条件に与える影響並びにその悪影響の回避措置・救済措置についての団交において、不誠実な対応をしたこと、(2)富士通が、本件持株会社設立等を交渉事項とした団交を拒否したことが不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
3 C事件 (1)高見澤が、信州工場の存続・発展のための今後の経営計画・事業計画及び当該計画のもとでの信州工場の労働者の雇用の確保と労働条件の維持・向上のための方策を交渉事項とした団交において、不誠実な対応をしたこと、(2)富士通及びFCLが、上記のことを交渉事項とした団交を拒否したこと、(3)高見澤、富士通及びFCLが、支部組合員の賃上げ、一時金等の労働条件を、FCLに転籍した労働者より下回らないようにしなかったことが不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
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命令主文 |
[1] A事件及びC事件に係る初審命令主文の救済部分を取り消し、これらの事項に係る救済申立てを棄却 [2] 組合の本件各再審査申立てを棄却
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判断の要旨 |
[1]富士通及びFCLの使用者性について 富士通及びFCLは、資本関係、役員の状況及び営業取引関係において、親会社として高見澤の経営に対し一定の支配力を有していたとみることはできるが、それは親会社がグループの経営戦略的観点から子会社に対して行う管理・監督の域を超えてのものとはいい難く、直接の雇用契約関係にない高見澤従業員の基本的な労働条件等に対して、直接の雇用主である高見澤と同視し得る程度に、現実的かつ具体的な支配力を有しているということはできず、高見澤の従業員との関係において、労組法第7条の使用者には当たらないと判断される。よって、富士通及びFCLは、本件各事件について不当労働行為責任を負う者とはいえない。 [2]高見澤の各行為の不当労働行為性について ア A事件関係 (ア)本件組織変更等による不利益取扱い及び支配介入について a デバイス技術部の移転に伴うX1委員長の人事異動問題については、支部との同意が得られなかったことから引き続き信州工場勤務としたのであって、このような高見澤の取扱いは格別不合理なものとはいえず、X1委員長を信州工場に留め置いたことは不利益取扱い及び支配介入には該当しない。 b 高見澤は、事業再建策の実施について、組合の理解と納得を目指して十分な協議を行ったものの、合意が得られなかったのであって、このような高見澤の取扱いは格別不合理なものとはいえず、高見澤が、事業再建策の提案を行ったこと並びにその提案に基づき信州工場従業員のZ通信への転社者及び希望退職者の募集を実施したことは支配介入には該当しない。
c 高見澤は、化工課に所属していたX2執行委員を含む支部組合員の人事異動について、組合の理解と納得を目指して十分な説明と協議を行った上で実施したことが認められるから、当該人事異動について組合との間で合意にまでは至らなかったとしても、当該人事異動は支部組合員に対する不利益取扱い及び支配介入には該当しない。 d 高見澤による別組合及び職制を利用した支部組合員の切り崩しがあったとは認められない。 (イ)組合活動妨害による支配介入について 高見澤による信州工場とZ通信との間の仕切り壁の設置は、支部組合員とZ通信に転社した従業員との分断を意図したものではなく、業務上の必要により行われたとみるのが相当であり、またZ通信の従業員入口を変更したことも支部の宣伝活動を妨害したとは認められず、支配介入には該当しない。 (ウ)本件組織変更等に関する高見澤の団交における態度について a デバイス技術部移転に伴うX1委員長の人事異動に関して2回行われた組合との団交における高見澤の態度が不誠実であったとは認められず、労組法7条2号に該当しない。 b 事業再建策の提案及び実施、化工課の支部組合員の人事異動、X2執行委員の人事異動に関する組合との団交においては、結局、組合と高見澤の主張が平行線をたどったものであるが、その経緯に照らすと、高見澤の態度が不誠実であったとは認められず、労組法7条2号に該当しない。 c 11年度の賃上げについての団交は19回行われ、高見澤は経営状況について改めて説明するなどして、組合の理解を得るための努力を尽くしていたことが認められ、団交における高見澤の交渉態度が不誠実であったとの証拠も提出されておらず、労組法7条2号に該当しない。 イ B事件関係(本件持株会社設立等に関する高見澤の団交における態度について) 本件持株会社設立等に伴う雇用・労働条件問題に関する組合との団交においては、結局、組合と高見澤の主張が平行線をたどったものであるが、その経緯に照らすと、高見澤の態度が不誠実であったとは認められず、労組法7条2号に該当しない。 ウ C事件関係 (ア) 「信州工場の存続・発展のための今後の経営計画・事業計画」等に関する高見澤の団交における態度について団交において高見澤が組合の要求事項に対して行った説明等が不誠実なものであったとはいえず、高見澤が交渉権限もなく単に形式的に団交を行っていたとは認められず、労組法7条2号に該当しない。 (イ) 支部組合員の労働条件とFCLに転籍した労働者の労働条件について高見澤において賃上げ及び一時金の支給がなかったのは、高見澤の経営が極めて厳しい状態にあったためであると推認され、支部組合員の賃上げ、一時金等の労働条件がFCLに転籍した労働者の労働条件を下回っていたことは、支部組合員に対する不利益取扱い及び支配介入には該当しない。 |
掲載文献 |
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