労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  富士通・高見澤電機製作所 
事件番号  長野地労委平成11年(不)第2号 
申立人  全日本金属情報機器労働組合長野地方本部 
申立人  全日本金属情報機器労働組合長野地方本部高見沢電機支部 
申立人  全日本金属情報機器労働組合 
被申立人  富士通株式会社 
被申立人  株式会社高見澤電機製作所 
命令年月日  平成17年 3月23日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)十分な団交を経ずに、会社の子会社への転社、退職勧奨等を含む一連の事業再建を実施したこと及びそれに伴い組合員の異動・職種変更を行ったこと、(2)会社と子会社との間に隔離壁を設置するなどして、組合の宣伝活動を妨害したこと、(3)賃上げに関する団交において合理的な説明なく、賃上げゼロ回答に固執したこと等が、会社及び会社の過半数株を保有する関連会社による不当労働行為であるとして、争われた事件で、(1)会社に対し、労働条件に関する誠実団交応諾、(2)会社に対し、文書手交、(3)関連会社に対し、会社の事業再建策に関する誠実団交応諾、(4)関連会社に対し、文章手交を命じ、その余の申立を棄却した。 
命令主文  1 被申立人株式会社高見澤電機製作所は、申立人より株式会社高見澤電機製作所信州工場の 従業員の労働条件について団体交渉の申入れがあった場合には、誠実に団体交渉に応じなけ ればならない。

2 被申立人株式会社高見澤電機製作所は、本命令書写しの交付の日から1週間以内に、下記 の文書を申立人に手交しなければならない。(大きさはA4判とし、年月日は手交する日を 記載すること。)

                   記

                        平成  年  月  日

 全日本金属情報機器労働組合

  中央執行委員長  X1 様

 全日本金属情報機器労働組合長野地方本部

  執行委員長 X2 様

 全日本金属情報機器労働組合長野地方本部高見沢電機支部

  執行委員長 X3 様

                             富士通株式会社

                             代表取締役社長 Y1

 当社が全日本金属情報機器労働組合長野地方本部高見沢電機支部より平成11年5月12日に申し入れられた株式会社高見沢電機製作所信州工場の事業再建策に関する団体交渉について、これを拒否したことは、この度、長野県労働委員会により、不当労働行為と認定されましたので、今後、再びこのような行為を繰り返さないようにいたします。


5 申立人のその余の申立は、これを棄却する。 
判定の要旨  1900 営業譲渡・合併
1300 転勤・配転
Y2が技術及び資源の有効活用による開発力の効率化を理由に佐久市に所在する信州工場のデバイス技術部を須坂市の開発センターに移転し、所属従業員を配転したことには一応の合理性が認められ、また、組合員の労働条件変更の事前協議を定めた協定に反しているともいえず、さらに、同部に所属する組合委員長X3の異動についても一方的に強行していないことからすると、会社の措置が支配介入や不利益取扱いといえないとされた例。

1900 営業譲渡・合併
Y2が組合と合意していない段階で、事業再建策として信州工場を子会社である申立外千曲通信に営業譲渡し、信州工場所属従業員に転社及び希望退職の募集を行っているが、これは組合員の労働条件変更の事前協議を定めた協定に違反するものであって、組合の団結権を侵害する支配介入に該当するとされた例。

1900 営業譲渡・合併
1300 転勤・配転
Y2が事業再建策を実施後、千曲通信への転社及び希望退職に応じなかった信州工場の組合員を異動及び職種変更したことは、営業譲渡に伴う業務の一元化などの合理性が認められ、また、交替制勤務がなくなり交代勤務手当がなくなったからといって直ちに不利益となるものともいえず、さらに、執行委員X5の異動は同人が異動できない理由を明らかにしないなど同意権の濫用とも受け取れる対応によるものとみられることからすると、組合員の異動及び職種変更が支配介入や不利益取扱いといえないとされた例。

1900 営業譲渡・合併
3106 その他の行為
2610 職制上の地位にある者の言動
5121 挙証・採証
組合は、Y2が別組合を利用して宣伝・恫喝をしたり、職制を利用して組合員の切り崩し行った旨主張するが、Y2が別組合に指示したり、関与させたこと及び職制による組合員の切り崩しが行われたことの疎明はなく、組合の主張は採用できないとされた例。

1900 営業譲渡・合併
3106 その他の行為
Y2が事業再建策実施後、信州工場と千曲通信の間仕切りに壁を設置したことをもって直ちに不当ということはできず、壁の設置により組合活動に支障が生じたとの疎明もないから、支配介入ということはできないとされた例。

1900 営業譲渡・合併
2240 説明・説得の程度
2246 併存団体との関係
Y2は組合及び別組合に事業再建策を提案後、両組合と団体交渉を重ねてきたが、組合間で交渉姿勢に違いのあることを利用して、別組合と協定した内容で千曲通信への転社及び希望退職の実施を通知することにより、組合との合意に向けての努力を回避して事業再建策を実施しようとしたものと認められ、また、株主総会を期限として交渉を進め、組合の質問には答えるものの自ら十分な説明資料を提供したとは言い難いと認められ、このようなY2の事業再建策実施までの交渉態度は不誠実なものであったとされた例。

1900 営業譲渡・合併
2240 説明・説得の程度
2300 賃金・労働時間
Y2は事業再建策の終了を宣言した後、組合員の異動に関する団体交渉において、異動の必要性を十分説明しておらず、また、組合が交替制勤務から通常勤務に変更となることに伴う労働条件変更の指摘に十分な回答をしないなどが不誠実な交渉態度であったとされた例。

1900 営業譲渡・合併
4916 企業に影響力を持つ者
5121 挙証・採証
Y1は、Y2の株式の53%を所有し、代表取締役をはじめ取締役の過半数を派遣していることと、Y2の取引関係等を考え合わせると、Y2の本件事業再建策はY1のグループ会社再編の一環として、Y1の指示又はその承認のもとに、Y1の支配・影響力を受けて実行されているものと認められるが、Y1の直接の実行行為や明示的な指示若しくはこれに類する行為は認められず、また、Y1の不当労働行為意思についても疎明がないのであるから、Y1に支配介入や不利益取扱いを認めることはできないとされた例。

1900 営業譲渡・合併
4916 企業に影響力を持つ者
Y1は、Y2の過半数株主としてはもちろん、派遣役員を通じての支配力・影響力と取引関係上の支配力を有しており、Y2の本件事業再建策の中止や変更を行うことができる立場にあり、Y2の再編に伴う雇用の継続や退職・転社など基盤的労働条件について団体交渉に応じ、実効ある交渉を行うことができると認められるので、Y1に団体交渉上の使用者性を認め、被申立人としての適格性を認めることが相当とされた例。

1900 営業譲渡・合併
2250 未妥結・打切り・決裂
2307 その他
親会社であるY1は、子会社であるY2の再編に伴う雇用の継続や退職・転社などにつき団体交渉上の使用者と認められるにもかかわらず、組合との5回の話し合いにおいて、組合と今後協議をすることは考えていないと回答するなど、実質的な交渉を行っていないのであるから、Y1の交渉態度が不誠実であるとされた例。

業種・規模  電気機械器具製造業 
掲載文献   
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
長野地労委平成13年(不)第3号 棄却 平成17年 3月23日
長野地労委平成14年(不)第1号 一部救済 平成17年 9月28日
中労委平成17年(不再)第23号外(26・27・28・71・72・73) 一部変更 平成20年11月12日
東京地裁平成21年(行ウ)第295号 棄却 平成23年5月12日
東京高裁平成23年(行コ)第215号 棄却 平成24年10月30日
 
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