概要情報
事件名 |
東京都自動車整備振興会 |
事件番号 |
中労委平成18年(不再)第17号 |
再審査申立人 |
社団法人東京都自動車整備振興会 |
再審査被申立人 |
全統一労働組合 |
命令年月日 |
平成19年5月23日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
|
事件概要 |
1 本件は、社団法人東京都自動車整備振興会(振興会)が、平成13年度賃上げに関し、組合との間で妥結した後、別組合(オアシス分会)と再交渉を行って組合との妥結内容を上回る水準(オアシス水準)で再妥結したため、組合が振興会に対しオアシス水準と同様の内容を組合員に適用するよう求めたところ、振興会がこれに応じなかったことが不当労働行為であるとして、組合が東京都労委に救済を申し立てた事件である。 2 東京都労委は、振興会が平成13年度賃上げに関しオアシス水準と同様の内容を組合員に適用しなかったことは不当労働行為であるとして、振興会に対し、(1)組合員に対し、オアシス水準と同様の内容の賃金改定を行ったものとしての取扱い及び差額の支払、(2)文書交付等を命じたところ、振興会はこれを不服として、上記初審命令の取消し及び組合の救済申立ての棄却を求めて再審査を申し立てたものである。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(1) 振興会は、平成13年度賃上げに関しオアシス分会とオアシス水準で再妥結したのは、組合から賃金格差是正原資を調整給名目で全職員に割り振った案を一方的に押し付けられるようになったため、組合員と組合員以外の職員との間で調整給による不合理な格差が生じていたことから、これを是正するために行ったものであると主張する。 しかし、調整給は、長年にわたって、組合と振興会との合意の上で割り振られ、支給されてきたものであって、組合から一方的に押し付けられたものであるとはいえず、本件における調整給による格差をもって不合理なものとはいい切れない。 (2) 平成13年度賃上げ交渉における振興会の対応をみると、振興会は、組合との妥結内容より有利な内容のオアシス水準でオアシス分会と再妥結し、オアシス水準が組合員以外の全職員に適用されたことにより、組合員と組合員以外の職員との間で昇給額に格差が生じ、組合員だけが昇給額において不利益を受ける結果となっている。その上、振興会は、調整給の内容を変更する必要性やその根拠等を示して、組合の理解を得るための努力を尽くし、誠意をもって説明したとはいえない。 (3) (1)振興会の一連の対応は、組合との団体交渉の意義を軽視するものであって、組合とオアシス分会との間で回答内容及び団体交渉の期日の設定を差別的に取り扱うものであること、(2)振興会は、組合の活動を嫌悪しており、オアシス分会との関係で中立性を疑われる認識を有していたものであることを総合して勘案すれば、振興会は、平成12年にオアシス分会が結成されたことを契機として、同13年度賃上げ交渉において、組合との妥結内容よりも有利な妥結内容であるオアシス水準を組合員に適用しないことにより、組合員の給与を相対的に引き下げる効果をもたらすことを意図したものであると判断される。 よって、このような振興会の一連の対応は、組合の影響力の減殺ないし組合の弱体化を企図したものであり、組合の運営に対する支配介入であると判断される。 |
掲載文献 |
|
|