概要情報
事件名 |
西日本旅客鉄道(西労近畿) |
事件番号 |
中労委平成10年(不再)第33号 |
再審査申立人 |
ジェイアール西日本労働組合、ジェイアール西日本労働組合近畿地方本部 |
再審査被申立人 |
西日本旅客鉄道株式会社 |
命令年月日 |
平成18年6月21日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、(1)O電車区の助役Y1が西労の組合員X1に対し、西労からの脱退を勧奨したこと(「本件脱退勧奨」)、(2)近畿地本からの転勤等に関する団体交渉の申入れに応じなかったこと(「本件団交申入れ」)、(3)A電車区の西労の組合員5名をT工場へ転勤させたこと(「本件転勤」)が不当労働行為に当たるとして救済申立てがなされた事件である。 初審大阪府労委は、本件救済申立てを棄却したところ、組合らはこれを不服として再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
(1 )初審命令を次のとおり変更する。 (2 )会社は、組合員に対し、人事上の不利益の示唆又は利益の誘導などによって組合からの脱退を勧奨して組合の運営に支配介入してはならない。 (3 )上記(2)に関する文書手交 (4 )その余の本件救済申立ては棄却する。 |
判断の要旨 |
1 本件脱退勧奨について ア Y1がX1に対し、西労からの脱退を勧奨したこと自体については争いがない。争いがあるのは、Y1の脱退勧奨がどのような内容で行われたか及び職制の立場で行われた脱退勧奨か否かである。 イ そこで、Y1の言動が同人の所属する別組合の組合活動としてなされたものであるか、職制の立場でなされたものであるかについて検討する。 (1) Y1のX1に対する西労からの脱退勧奨は、当初、別組合の分会書記長から働きかけを受けていたこと、また、Y1は同書記長からX1の別組合加入に関する協力を依頼され加入勧誘を行っていたこと等が認められる。 (2) Y1は、人事異動の人選に関与する権限はないが、区長の補佐又は代理として従業員の勤務状況等の個別的事情を把握し区長へ報告を行っており、この報告が人事異動等において考慮される区長の所見作成の際に参考とされることから、その指揮下にあるX1ら運転士の人事上の決定について、事実上影響を及ぼし得る立場にあったことが推認でき、また、X1もそのことを認識していた。 (3) 本件脱退勧奨の内容及び上記Y1が部下の人事上の影響力を有する地位にあったことを勘案すると、本件脱退勧奨は、それまでの単なる別組合の組合員としての脱退勧奨・加入勧誘行為とは異なり、転勤の決定に影響を与え得る職制の立場から、X1の希望する転勤という材料を用いて西労からの脱退を勧奨したものであるといえる。 ウ 次に、本件脱退勧奨を会社に帰責できるかという点について検討する。 (1) 会社の代表者は、スト権提案等を行うJR総連に批判的な立場をとっていたが、西労はJR総連に賛同して結成された労働組合であり、数次にわたるストライキを行っている。さらに会社の社長が「一企業一組合が最も望ましい姿だと思う」と述べていたこと、会社には会社従業員の過半数を組織し、会社と会社の進むべき方向等について一致協力して取り組むことを確認する旨の労使共同宣言を行っている別労組が存在することからみると、会社は西労を好ましからぬ存在と考えていたものと推認できる。
(2) Y1は、本件当時の転勤にあっても事実上の影響力を行使し得る立場にあったものと推認し得るところ、職制の立場からX1の脱退を決意させるため、西労を好ましからぬ存在とみる会社の意向を暗に示すとともに、X1の脱退が会社の意向に沿うことを示唆する、会社の意を体したと認められる発言を行っている。 エ 以上アないしウの事情を総合的に勘案すると、本件脱退勧奨は、Y1が西労の存在を好ましく思わぬ会社の意を体して行ったもので、会社に帰責されて然るべきものであり、労組法7条3号の支配介入に該当する。 2 本件団交申入れ拒否について ア 本件団交申入れ事項は、新型車両の導入に伴う余剰人員の活用を図るとされる転勤等について人事の運用、転勤等の人選基準等を明らかにするよう求めるものであり、労働協約で規定する団交事項に該当する。そうすると、会社が労働協約に定める団交事項に当たらないとして本件団交の開催を拒否したことは問題があったといえる。
イ 本件団交申入れに至る経過をみると、新型車両導入及びこれに伴う余剰人員問題等に関して、地方経営協議会及び4回の団交を行った後、神戸支社は交渉を打ち切り、近畿地本は交渉の継続を主張したものの本件団交申入れまでの約3か月の間、交渉の申入れは行っていない。 ウ 本件団交申入れに対し、神戸支社は、団交には応じていないものの要求項目のそれぞれに対してその見解を示している。 エ 以上からすると、本件団交申入れについて、神戸支社が労働協約に定める団交事項には当たらないとして団交開催を拒否したことに問題はあったが、転勤先を含む人員の運用については数度にわたり話合いを行っており、また、本件団交申入れに対しても実際には相応の対応をしており、これらの対応が特段不誠実なものであったとは認め難い。このことに加えて、その後近畿地本らから団交申入れはなされていないことからすると、本件団交申入れに対する会社の対応をもって団交拒否の不当労働行為とまでは言い難い。 (3 )本件転勤について (1)本件転勤は、新型車両の導入に伴うA電車区の生じた余剰人員の解消のため行われたものであるが、検修の一元化や車両を効率的に運用できるという会社の方針を不当ということはできないこと、(2)異動先をT工場としたことは、同工場では余剰人員を活用した車両制作等の業務が行われていたことから不適当であるとはいえないこと、(3)本件転出者の選出基準については、特段不合理なものとは認められないこと、(4)本件転勤による不利益が通常受忍すべき限度を超えたものであることを認めるに足りる事情の立証はなされていないこと等から、本件転勤は、業務上の必要性に基づくもので、その人選も特段不合理なものとはいえず、会社がA電車区分会の弱体化のために恣意的に本件転勤を行ったと認められない。
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掲載文献 |
不当労働行為事件命令集135集《18年5月~8月》836頁 |