概要情報
事件名 |
西日本旅客鉄道(西労近畿) |
事件番号 |
東京地裁平成18年(行ウ)第418号 |
原告 |
西日本旅客鉄道株式会社 |
被告 |
国(処分行政庁:中央労働委員会) |
被告補助参加人 |
ジェイアール西日本労働組合 |
被告補助参加人 |
ジェイアール西日本労働組合関西地域本部 |
判決年月日 |
平成20年1月24日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
X組合は、Y会社が、①大阪支社に勤務していた組合員X1に対し転勤等の人事権を利用して脱退勧奨をしたこと、②団体交渉申入れを拒否したこと、③明石電車区に勤務していた組合員X2を転勤させたことは、不当労働行為であるとして、大阪地労委に救済を申し立てた。同委員会は、いずれも不当労働行為に当たらないとして申し立てを棄却したところ、これを不服としてX組合から再審査申立てがなされ、中労委は、上記①の脱退勧奨は不当労働行為に当たるとして、初審命令を一部変更した(「本件命令という。)。 本件は、Y会社が、本件命令を不服としてその取消しを求めて提訴した事案である。
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判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用を含め、原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
① Y会社が訴外労働組合と争議権の行使を必要とするような労使紛争を発生させず、列車等の安全運行に関してすべてを優先して取り組むことが唱われた労使共同宣言を締結していたにもかかわらず、訴外労働組合から脱退した組合員により結成されたX組合がストライキを行った等に照らすと、Y会社がX組合を好ましくないものと考えていたことは十分に推認できる。 ② 労働組合法2条1号所定の使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にあたる者が使用者の意を体して労働組合に体する支配介入を行った場合には、使用者との間で具体的な意思の連絡がなくとも、当該支配介入をもって使用者の不当労働行為と評価することができる。 Y会社の助役は、部下である従業員の人事について、影響力を有しており、さらに、Y1助役は、運転士の運用計画を担当する計画助役の地位にあるのだから、Y会社の利益代表者ではないが、利益代表者に近接する職制の地位にあったといえる。 ③ 上記の観点から、Y1助役の本件脱退勧奨の内容を検討すると、Y1助役による本件脱退勧奨の発言の中には、組合員X1に対して、区長等への報告を前提とする天王寺電車区への転勤という人事上の利益に絡めて行われたものがあり、これらの各発言は、Y1助役の助役という職制上の地位に基づき行ったものというべきである。 ③ Y1助役による本件脱退勧奨が、訴外労働組合の組合員の立場から組合活動をして行った側面があることは否定できない。 しかしながら、本件脱退勧奨の中に、Y1助役の発言のように、上司としての人事に関する職制の地位に基づいて行われたものが重要な要素として含まれている本件事案においては、Y1助役の各発言について、訴外労働組合の組合員としての発言であることが明らかである等の特段の事情がない限り、Y会社の意を体してされたものと認めるのが相当である。 本件においては、上記のような特段の事情を認めるに足りる事情は窺われないから、当該Y助役の各発言は、Y会社の意を体して行われた脱退勧奨であると評価することができる。 |