労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  天雲産業株式会社 
事件番号  大阪地労委 平成12年(不)第60号 
申立人  全大阪金属産業労働組合 
被申立人  天雲産業株式会社 
命令年月日  平成16年 2月19日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、(1)分会員2名を課長に昇格させないこと、(2)通勤手当の取扱いの変更、平成12年度賃上げ等及び同年夏季一時金に関する不誠実団交、(3)就業中の分会員2名に対する会社役員による監視、(4)就業時間中にワッペンを着用した分会員2名に対する警告が不当労働行為であるとして争われた事件で、会社に対し、通勤手当変更及び平成12年度賃上げ、同年夏季一時金に関して誠実団交応諾及び文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人天雲産業株式会社は、申立人全大阪金属産業労働組合が平成11年8月24日付け文書で申し入れた通勤手当の変更をめぐる事項、及び同12年3月1日付け要求書で申し入れた平成12年度賃上げを議題とする団体交渉に、考課査定の内容及びその結果に基づく配分方法を示すなどして誠実に応じなければならない。
2 被申立人天雲産業株式会社は、申立人全大阪金属産業労働組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
           記
                  年 月 日
全大阪金属産業労働組合
 執行委員長 X1 様
天雲産業株式会社
 代表取締役 Y1
 当社が行った下記の行為は、大阪府地方労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
           記
(1)平成11年8月24日付けで申入れのあった、通勤手当の変更の理由を議題とする団体交渉に誠実に応じなかったこと。
(2)平成12年3月1日付けで申入れのあった、平成12年度賃上げ要求を議題とする団体交渉に誠実に応じなかったこと。
(3)平成12年5月22日付けで申入れのあった、平成12年夏季一時金の要求を議題とする団体交渉に誠実に応じなかったこと。
3 申立人のその他の申立ては棄却する。 
判定の要旨  1200 降格・不昇格
会社における管理職への昇格についてみると、従業員すべてが一定の経験年数を経れば当然に管理職に昇格することを期待しうるような組織や人事体制にはなっているとはいえないこと、別の部署の責任者に昇格させる制度にはなっていないとする会社主張は一応首肯できるものであること、会社により昇格させた者の理由の説明には一応の合理性があり、分会員2名が他の部員と比較して管理職としての必要な資質をより備えているとの具体的な疎明がないことからすると、会社が組合員であることや組合活動を嫌悪して分会員2名を課長に昇格させなかったものとまではみることはできないとされた例。

2240 説明・説得の程度
本件通勤手当に係る団交において、会社は、就業規則そのものの変更ではないこと及び取扱規定を新設する理由、取扱規定の適用の仕方等について、就業規則や取扱規定を提示するなどして組合の納得や理解を得るべく具体的かつ十分な説明を行ったとみることはできないから、会社の対応は不誠実であったと判断され、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2240 説明・説得の程度
平成12年度賃上げに係る団交については、団交の時点で組合は考課査定につき会社の説明では納得していないと考えられ、少なくとも組合員の考課査定については、どのような点を評価したか可能な限り事項を摘示して説明する必要性があると考えられるところ、会社がそのような考課査定に基づく賃上げ額の具体的な配分方法について、組合の納得を得られるべく十分説明していたとみることはできず、また、賃上げ額の根拠を明らかにしなかったことについては、経常利益の額を提示しないことについての合理的な理由を示しておらず、かかる会社の対応は不誠実であり、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2231 組合の不誠実
2240 説明・説得の程度
2302 労務管理・労使関係
労使協定についての会社の対応については、そもそも労使協定をいかなる内容とするかは、原則として労使の話合いに委ねられるべきであり、労使間に対立点があれば双方が互いに協議し歩み寄ることが望まれるところ、本件においては会社の姿勢にかたくなさがみられることは否めないものの、労使協定を巡る交渉については一度団交で話し合われたのみで、その後組合から団交を申し入れたと認めるに足る事実はないから、会社の対応に不誠実さがあったとまでみることはできないとされた例。

2240 説明・説得の程度
平成12年夏季一時金交渉における会社の対応についてみると、団交において、組合が考課査定の内容や配分方法を説明するよう求めたのに対し、会社は、考課査定や配分方法に関し、その内容については会社の方針であり明らかにできない旨答え、それ以上の問いかけに応じなかったことが認められ、かかる会社の対応は、不誠実であり、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとされた例。

3106 その他の行為
専務の職場巡回行動に関する申立てについては、組合から抗議を行ったとの疎明はなく、また、組合活動に対する具体的な支障についての疎明がないとして、この点に係る請求は棄却するとされた例。

0210 リボン・ワッペン等の着用
1604 その他
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
就業中のワッペンの着用が組合活動として正当性を持つか否かは、当該企業の業種、労働者の職務内容等とワッペン着用の態様(形状、文言、着用の仕方)を勘案した具体的、総合的な判断を必要とするところ、本件においては、会社には、職場秩序の維持の観点からする就業規則上の規定があること、ワッペン着用就労したことに対して、会社は文書による注意を与えるにとどまり、格別の懲戒処分には至っていないこと等を考慮すると、会社が文書による注意をしたことを直ちに不合理ということはできず、当該文書注意は必ずしも不当労働行為意思によるものといえないとされた例。

2240 説明・説得の程度
4505 その他
4614 文書手交のみを命じた例
会社が平成12年夏季一時金交渉において誠実に対応しなかった行為は不当労働行為に該当するが、同一時金の仮払を求めてした仮処分申請において和解が成立し、仮払がなされていることからすると、同一時金交渉は労使双方で合意・解決したとみるのが妥当であるとして、文書手交の救済をもって足りるとされた例。

業種・規模  金属製品製造業 
掲載文献   
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成16年(不再)19・20号 棄却 平成18年3月23日
東京地裁平成18年(行ク)第223号 緊急命令申立の却下 平成19年4月9日
東京地裁平成18年(行ウ)第166号(第1事件)・平成18年(行ウ)第304号(第2事件) 棄却、却下 平成19年4月9日
東京高裁平成19年(行コ)第154号 棄却 平成19年12月12日
東京高裁平成19年(行サ)第192号、平成19年(行ノ)第186号 上告受理申立て却下 平成20年3月5日
 
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