概要情報
事件名 |
天雲産業 |
事件番号 |
東京地裁平成18年(行ウ)第166号(第1事件)・平成18年(行ウ)第304号(第2事件) |
第1事件原告兼第2事件被告補助参加人 |
天雲産業株式会社 |
第2事件原告兼第1事件被告補助参加人 |
全大阪金属産業労働組合 |
第1事件・第2事件被告 |
国(処分をした行政庁 中央労働委員会) |
判決年月日 |
平成19年4月9日 |
判決区分 |
棄却、却下 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、①組合員2名を課長に昇格させないこと、②通勤手当の取扱いの変更、平成12年度賃上げ及び同年夏季一時金等を議題とする団体交渉に誠実に応じなかったこと、③業務中の組合員らに対し会社役員による監視をさせたこと、④組合員らの就業期間中のワッペン着用に対し文書注意を行ったことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。初審大阪地労委は、①通勤手当の取扱いの変更及び平成12年度賃上げに関する誠実団交応諾、②文書交付(①及び平成12年夏季一時金の不誠実団交に関して)を命じ、その余の申立ては却下したところ、これを不服として会社及び組合から再審査の申立てがなされ、中労委は再審査申立てをいずれも棄却した。会社及び組合は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、会社及び組合の請求を棄却又は却下した。 |
判決主文 |
1.第1事件原告の請求を棄却する。 2.第2事件原告の訴えのうち、大阪府地方労働委員会が大阪地労委平成12年(不)第60号事件について発した命令の一部取消しを求める部分を却下する。 3.第2事件原告のその余の訴えに係る請求を棄却する。 4.訴訟費用は、補助参加によって生じた部分を含め、第1事件については第1事件原告の負担とし、第2事件については第2事件原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
争点1(課長職新設並びにX1、X2を課長に昇格させないことについての不当労働行為の成否)について 会社が課長職を新設したこと及び部長不在時の管理の代行などの一定程度の必要性、合理性が認めれるというべきであり、また、課長に昇格した者の人選についても、一定の合理性が認められ、反組合的活動に対する恩賞であると認めるに足りる証拠はなく、さらにX1、X2が、仮に組合の組合員でなく、あるいは当該組合活動をしていなければ、課長に昇格していたであろうと窺わせる事情も、本件全証拠を精査しても見あたらないことから、課長職新設並びにX1、X2を課長に昇格させないことは、不当労働行為に当たらないとされた例。 争点2(通勤手当の取扱いの変更、平成12年度賃上げ及び同年夏季一時金に関する団体交渉についての不当労働行為の成否)について 会社は、①通勤手当の取扱い変更に関して、その経緯及び理由、取扱規程の適用の仕方等について、取扱規程を提示するなどしつつ具体的かつ十分な説明をしなかったこと、②平成12年度賃上げについて、組合員X1、X2の考課査定に関して、どのような査定を行って賃上げ額を決定したかに関して、可能な限り査定項目に即した具体的な説明をしなかったこと及び経常利益の開示の求めに応じなかったこと、③同年夏季一時金について、組合員の考課査定に関して、どのような査定を行って一時金額を決定したかに関して、可能な限り査定項目に即した具体的な説明をしなかったことにつき、それぞれ誠実説明義務違反があり、会社のこれらの各行為は不当労働行為に該当するとされた例。 争点3(会社専務の監視威圧行動という不当労働行為の成否)について 会社専務が職場内を巡回していたことは、特に不自然な行動であるとはいい難く、組合が会社専務の監視につき抗議文を提出したことは認められるが、会社専務が監視を繰り返したというのであれば、組合は当然抗議に出てしかるべきと考えられるところ、そのような抗議行動をした形跡は認められないし、抗議行動をとらなかった合理的説明もなされていない等から、会社専務が監視威圧行動をしているという組合の主張には理由がないとされた例 争点4(ワッペン就労に対する注意についての不当労働行為の成否)について ①会社では、就労規則上会社の諸規定、諸規則、上長の命令等に従い誠実に職務を行うこと等が定められており、②X1、X2が着用したワッペンは、直径5.5センチメートルの円形で、それなりに目を引く形態のものであり、かつ、掲載文言もおよそ業務に関係のないものであることが認められ、ワッペンを着用して就労することは、就労場所において印刷物を貼付したのと同様の効果があり、業務妨害するおそれもある等と認めるのが相当である。そうだとすると、会社がワッペンを着用して就労するX1、X2に対し、ワッペンを外すように指示することには、就労規則上の根拠があるし、上長の指示に従わなかった以上、X1、X2が注意をうけるもやむを得ないというべきであり、当該措置が会社の組合に対する支配介入の不当労働行為意思に基づく行為であるとは認めるに足りる証拠はなく、よって、組合の主張は理由がないということになるとされた例。 争点5(謝罪文の必要性)について 組合は、会社の強固な不当労働行為意思からすれば、本件中労委命令は、文書交付では足りず、謝罪分による制裁が必要不可欠であると主張するが、本件で成立が認められた不当労働行為の内容やその他の諸事情を総合的に勘案すれば、中労委が文書交付を命じたことについて、裁量権の範囲の逸脱・濫用は認め難いから、組合の主張には理由がないとされた例。 |