労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  根岸病院 
事件番号  東京地労委 平成11年(不)第35号 
申立人  根岸病院労働組合 
被申立人  医療法人社団根岸病院 
命令年月日  平成15年 7月15日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  病院が、(1)組合に事前に協議することなく初任給を切り下げたこと、(2)初任給切下げに関する団交に不誠実に対応したことが不当労働行為であるとして争われた事件で、会社に対し、(1)誠実団交応諾、(2)従来の初任給額に春闘で妥結したベースアップ分を加算した金額とした上での是正賃金の支払い、(3)文書掲示を命じた。 
命令主文  1 被申立人医療法人社団根岸病院は、申立人根岸病院労働組合が平成11年3月12日付要求書 により申し入れた、11年3月1日の初任給引下げについての団体交渉に、初任給の決定に当 たって考慮した事実等を裏付ける資料等を提示した上で、誠実に応じなければならない。
2 被申立人病院は、申立人組合が被申立人に対し、11年3月1日以降に新規採用された職員 のうち申立人組合に加入している者を明示した場合は、当該組合員の初任給額を、10年4月 1日の同一職種の初任給額に11年度以降の春闘で妥結したベースアップ分を加算した金額と した上で、当該組合員について採用以降現在までに既に実施された昇給がなされたものとし て賃金を是正し、既に支給した賃金との差額を当該組合員に支給するとともに、上記のとお り是正した賃金を、主文第1項の団体交渉により妥結した新初任給額が施行される日、又は 本命令が確定した日から1年が経過した日のいずれか早く到来した日まで、当該組合員に支 払わなければならない。
3 被申立人病院は、本命令書受領後1週間以内に、55cm×80cm(新聞紙2頁大)の大きさの 白紙に、下記内容を楷書で明瞭に墨書して、被申立人病院職員の見やすい場所に、10日間掲 示しなければならない。
                    記
                                   年 月 日
   根岸病院労働組合
    執行委員長 X1 殿
                          医療法人社団根岸病院
                           理事長 Y1
  当法人が、貴組合から平成11年3月12日付要求書により申入れのあった、平成11年3月1 日の初任給引下げについての団体交渉に誠実に応じなかったこと、及び貴組合に事前に協議 することなく平成11年3月1日に初任給を引き下げたことは、東京都地方労働委員会におい て不当労働行為であると認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
4 被申立人病院は、前各項を履行したときは速やかに当委員会に文書で報告しなければなら ない。 
判定の要旨  2240 説明・説得の程度
2249 その他使用者の態度
2300 賃金・労働時間
本件初任給引下げは、組合員全体の労働条件に密接に関連する事項であるので、義務的団体交渉事項であると解するのが相当であるが、病院は本件初任給引下げによる経営改善の効果や他病院の初任給の状況等について具体的な説明はしておらず、自己の主張を裏付ける具体的な根拠を提示しないばかりでなく、本件初任給引下げの見直しを全く考慮せず団体交渉に臨んでおり、組合を団体交渉の相手方と認めない立場をとっていることから、病院は本件についての団体交渉に誠実に応じたとはいえず、団体交渉拒否に当たるとされた例。

2625 非組合員化の言動
病院は、団体交渉や協議を行うことが不可能な時期に、協議することなく抜打ち的に初任給引下げを組合に通知したことは極めて作為的かつ不自然であること、新規採用者の初任給のみを引き下げるのでは合理的な経営改善につながるとは考えられず、本件初任給引き下げが病院の経営上の必要性に迫られた合理的な人件費抑制の措置であったとは考え難いこと等からすると、本件初任給引下げは、組合の弱体化を図る意図に基づいてなされたと解され、支配加入に該当するとされた例。

4603 その他
救済としては、病院の組合嫌悪の意図が強固であるため、団体交渉を命じるだけでは不十分であるから、一旦本件初任給引下げを白紙に戻し、平成11年3月1日以降に新規採用された組合員に対して、従前の初任給額を基礎にし、採用後の昇給等を反映した是正賃金を支払うよう命じること、また、本来組合員の労働条件は労使の自主交渉で決定すべきであるから、是正賃金の支払いは期限(最長1年)を定めて命じることが相当であるとされた例。

業種・規模  医療業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集126集494頁 
評釈等情報   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成15年(不再)第43号 一部変更 平成17年11月18日
東京地裁平成18(行ク)第123号 訴訟参加申立ての却下 平成18年7月6日
東京地裁平成17年(行ウ)第572号、東京地裁平成18年(行ウ)第50号 一部取消 平成18年12月18日
東京高裁平成19年(行コ)第23号 一部取消 平成19年7月31日
最高裁平成19年(行ツ)第310号及び第311号
平成19年(行ヒ)第339号及び第340号
上告棄却・不受理 平成20年3月27日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約250KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。