概要情報
事件名 |
根岸病院 |
事件番号 |
東京地労委 平成 8年(不)第70号
東京地労委 平成10年(不)第45号
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申立人 |
東京地方医療労働組合連合会 |
申立人 |
根岸病院労働組合ほか個人2名 |
被申立人 |
医療法人社団根岸病院 |
命令年月日 |
平成12年 2月15日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
病院が、(1)満61歳を迎えた組合員2名の嘱託契約更新を拒否したこと、(2)定年延長・嘱託再雇用・就業規則改定問題等にかかる組合との団体交渉において誠実に対応しなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件で、(1)定年延長・嘱託再雇用問題について、関連資料・再雇用基準を提示するなどしての誠実な団体交渉、(2)就業規則改定問題等についての誠実な団体交渉、(3)文書掲示、(4)命令履行時の労働委員会への文書報告を命じ、その余の申立て(2名の嘱託再雇用、バックペイ等)を棄却した。 |
命令主文 |
主 文 1 被申立人医療法人社団根岸病院は、申立人根岸病院労働組合が申し入れた (1)平成8年8月15日付「要求書」第二項、第三項および平成9年7月8 日付「要求書」第一項にそれぞれ記載された定年延長問題およびこれに関連す る事項についての団体交渉において、被申立人主張の根拠となる経営に関する 資料等と定年延長についての「試案」を提示し、(2)平成8年8月15日付 「要求書」第一項(申立人X1の嘱託契約更新拒否問題)および平成10年5 月1日付「緊急団交申し入れ書」についての団体交渉において、嘱託契約更新 の可否について判断する際の具体的基準や対象組合員に対する上記基準の適用 の理由を明らかにするなどして、誠実に対応しなければならない。 2 被申立人病院は、申立人組合が申し入れた平成9年7月8日付「要求書」第 四項ないし第六項(就業規則改定問題、三六協定問題および介護休暇制度問題) を議題とする団体交渉に誠実をもって応じなければならない。 3 被申立人病院は、本命令書受領の日から1週間以内に、55センチメートル ×80センチメートル(新聞紙2頁大)の大きさの白紙に、下記の内容を楷書 で明瞭に墨書して、被申立人病院職員の見やすい場所に、10日間掲示しなけ ればならない。 記 年 月 日 根岸病院労働組合 執行委員長 X2 殿 医療法人社団根岸病院 理事長 Y1 当病院が、貴組合から申入れのあった平成8年8月15日付「要求書」第二 項、第三項および平成9年7月8日付「要求書」第一項にそれぞれ記載の定年 延長問題およびこれに関連する事項についての団体交渉において、病院主張の 根拠となる経営に関する資料等と定年延長についての「試案」を提示せず、平 成8年8月15日付「要求書」第一項(X1氏の嘱託契約更新拒否問題)およ び平成10年5月1日付「緊急団交申し入れ書」についての団体交渉において、 嘱託契約更新の可否について判断する際の具体的基準や対象組合員に対する上 記基準の適用の理由を明らかにしなかったこと、および平成9年7月8日付 「要求書」第四項ないし第六項(就業規則改定問題、三六協定問題および介護 休暇制度問題)について、貴組合が申し入れた団体交渉に応じなかったことは、 いずれも不当労働行為であると東京都地方労働委員会において認定されました。 今後このような行為を繰り返さないよう留意します。 (注:年月日は文書を掲示した日を記載すること。) 4 被申立人病院は、前項を履行したときは、すみやかに当委員会に文書で報告 しなければならない。 5 その余の申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
1106 契約更新拒否
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
満61歳を迎えた組合員である看護助手1名と准看護婦1名に対する嘱託契約の更新拒否について、2名の外にも更新を拒否された者がおり、しかもその中には組合員以外の者がいる蓋然性が高いこと、その2年後には61歳以上の看護助手は病院には存在しなくなったこと、61歳以上の准看護婦の中に組合員が存在することなどからすれば、組合員であるが故の不利益取扱いではなく、組合への支配介入にもあたらないと判断された例。
2240 説明・説得の程度
2243 対案不提出
病院が、団体交渉において、組合に対して定年延長についての年次計画を策定し提示すると約束し、その後、当該計画の提出は不可能であると安易に態度を変えたことについて、病院主張の根拠となる経営計画に関する資料を提示するなどして組合に誠意をもって説明する必要があったと判断された例。
2240 説明・説得の程度
会社が、わずか1回の団体交渉開催の事実をもって、以後の団体交渉の必要性とその進展の可能性を全く否定することは、流動的な労使関係の本質を見誤った一方的な見解であると判断された例。
2240 説明・説得の程度
交渉が行き詰ったことを理由に団体交渉を拒否することは、正当な理由による団体交渉拒否であるとは言えないと判断された例。
2240 説明・説得の程度
2243 対案不提出
病院には、組合が本件救済申立を行ったことを理由に用意していた対案を示すことを止めたり、嘱託契約の必要性判断の具体的基準や適用理由を明らかにしないなど、労使双方の一致点を見いだす努力が欠けており、誠意をもって病院が団体交渉に応じたものとは認められないと判断された例。
2240 説明・説得の程度
2回行われた団体交渉において、嘱託契約の更新拒否という労働者としての地位の喪失に関する労働条件の重大な変更にもかかわらず、同契約の必要性判断の基準及び適用理由を明らかにせず、その後の団体交渉を一切拒否していることからすれば、病院の対応は、不誠実な交渉態度かつ正当な理由のない団体交渉拒否というべきであると判断された例。
2120 交渉委任
2248 実質的権限のない交渉担当者
団体交渉における病院側の交渉担当者であるY1理事の交渉態度は、理事長がY1理事に一任している旨回答したことがあったこと、賃金・一時金についての団体交渉では理事長が出席していなくても労使合意に至っていることからして、団体交渉の議題について決定権や当事者能力を持たないが故のものというよりは、病院としての意思決定を受けたうえでその意を体したものとみるのが相当であり、理事長出席を求める組合の主張は採用できないと判断された例。
2242 回答なし
2303 福利厚生
組合の要求事項は、労働条件の変動との関連づけが不分明であるなど、未だ団体交渉事項として成熟性に欠けており、これに関する団体交渉に病院が応じないことは、不当労働行為にあたらないと判断された例。
2240 説明・説得の程度
2242 回答なし
病院が検討すると回答してから4ヶ月弱経過した後の検討事項についての組合からの団体交渉申し入れに対し、病院の見解、検討結果を説明する必要があったのにこれに応答せず、一切の説明をしなかったことは不誠実な態度であり、団体交渉拒否にあたると判断された例。
4505 その他
病院の、不誠実団交、団体交渉拒否を認め、団体交渉に誠意をもって応じること、資料や試案などを示しての誠実な対応を命じるとともに、文書掲示、労働委員会への履行報告を命じた例。
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業種・規模 |
医療業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集116集201頁 |
評釈等情報 |
 
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