労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 根岸病院
事件番号 東京地裁平成18(行ク)47号
参加申立人 東京地方医療労働組合連合会
根岸病院労働組合
個人X1
相手方(原告) 医療法人社団根岸病院
相手方(被告)
判決年月日 平成18年5月16日
判決区分 訴訟参加申立ての却下
重要度  
事件概要  中労委命令を不服として相手方病院が提起した取消訴訟において、本件命令に係る救済命令が取り消されると、その取消判決により参加申立人らの権利が害されることを理由に、参加申立てを行った事件である。
 東京地裁は、組合の参加を許可し、個人X1の参加を却下した。
判決主文 1 参加申立人東京地方医療労働組合連合会及び同根岸病院労働組合の参加申立てを許可する。
2 参加申立人X1の参加申立てを却下する。
3 参加申立人X1の参加に関する費用は同人の負担とする。
判決の要旨 ① 行訴法22条1項は「訴訟の結果により権利を害される第三者」に当該訴訟への参加を認めているところ、ここに「権利を害される」とは、取消判決の効力自体によって直接に権利が侵害される場合だけでなく、訴訟の結果の拘束力(行訴法33条)を通じて権利を害される場合をも含むと解され、労組法27条に定める労働委員会の救済命令制度は、同法7条が定める不当労働行為の各類型に応じて一定の救済利益を有すると認められる労働組合及び労働者に対して、救済申立権を保障していると解されるから、参加申立人らが行訴法22条1項にいう「権利を害される第三者」といえるか否かは、問題となっている不当労働行為の類型に応じて、労組法がいかなる者に救済申立権を保障しているかを探求することにより、判断されるべきものであるとされた例。

② 本件訴訟において取消しの対象となっているのは、中労委命令のうち病院に団交応諾命令を命じた救済命令であるが、 労組法7条2号は「使用者が雇用する労働者の代表者」との団体交渉を正当な理由がなくて拒むことを禁止しているので あるから、同条号の不当労働行為についての救済利益は、団体交渉の主体である労働者の代表者、すなわち労働組合(ここに上部団体も含まれる。)に帰属することは明らかであり、本件訴訟において、中労委命令の右部分が取り消され、確定 した場合には、その拘束力により中労委が救済申立てを棄却する命令を発することがあるから、それによって、救済申立人である参加申立人連合会及び同組合の法律上の利益が害される関係にあるといえ、参加申立人連合会及び同組合は行訴法22条1項所定の「権利を害される第三者」に当たるとされた例。

③ 右②の労組法7条2号の文言や、同法1条1項が、団体交渉につき「使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締 結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする」と定め、また、同法14条が、労働協約の当事者となり得る主体として「労働組合と使用者又はその団体」と定めていることから、労組法はいわゆる団交拒否という不当労働行為からの救済利益の主体として労働組合のみを想定しており、その構成員である組合員に対しても救済の利益を保障していると解するのは困難であるところ、参加申立人Xが組合の組合員であり、また、本件中労委命令が病院に命じた団交応諾命令がXの雇用関係上の権利にかかわるもの であるとしても、同命令が取り消されることにより、Xの救済を求める権利が害されるということはできないとされた例。

④ 参加申立人Xは中労委命令の当事者となっているが、本件事件の救済申立ての内容からすると、Xは申立てが棄却され た嘱託契約の更新拒否という不利益取扱の救済命令申立てとの関係で同命令の当事者とされているにすぎないから、Xが 同命令の当事者であることをもって、Xの参加人としての適格性を基礎づけることはできないとされた例。

⑤ 右のとおりであるから、参加申立人連合会及び同組合は行訴法22条1項にいう「訴訟の結果により権利を侵害される第三者」に当たるが、参加申立人Xはこれに当たらないとされた例。

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京地労委平成8年(不)第70号・平成10年(不)第45号 一部救済 平成12年2月15日
中労委平成12年(不再)第26号・第29号 棄却・一部変更 平成17年6月16日
東京高裁平成18年(行ス)39号 訴訟参加申立ての棄却 平成18年6月28日
東京地裁平成17年(行ウ)第313号 棄却 平成19年4月18日
東京高裁平成19年(行コ)第163号 棄却 平成20年7月10日
最高裁平成20年(行ヒ)第354号 上告不受理 平成21年5月13日
最高裁平成20年(行ツ)第307号
最高裁平成20年(行ヒ)第353号
上告棄却・上告不受理 平成21年5月13日