労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 根岸病院
事件番号 東京高裁平成18年(行ス)39号
抗告人 個人X1
相手方 医療法人社団根岸病院
相手方 国(裁決行政庁 中央労働委員会)
判決年月日 平成18年6月28日
判決区分 訴訟参加申立ての棄却
重要度  
事件概要  中労委命令を不服として相手方病院が提起した取消訴訟において、本件命令に係る救済命令が取り消されると、その取消判決により参加申立人らの権利が害されることを理由に、参加申立てを行った事件である。
 東京地裁は、組合の参加を許可し、個人X1の参加を却下した。個人X1はこれを不服として、東京高裁に抗告許可申立てを行ったところ、同裁判所は抗告を棄却した。
判決主文 1 本件抗告を棄却する。
2 抗告費用は抗告人の負担とする。
判決の要旨 ① 行訴法22条1項は、裁判所は、訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは、当事者若しくはその第三者の申立てにより又は職権で、決定をもって、その第三者を訴訟に参加させることができる旨定めているところ、ここに「権利を害される」とは、取消判決の形成力を受けるため、その判決主文によって直接自己の権利を害される第三者をいうべきものと解すべきであるが、権利とは必ずしも厳格な意味における権利に限定されるものではなく、法的利益であってもよいが、単なる事実上の利益、経済上の利益は含まれないものと解されるとされた例。
② 労組法27条に定める労働委員会の救済命令制度は、同法7条が定める不当労働行為の各類型に応じて一定の救済利益を有すると認められる労働組合又は労働者に対して、救済申立権を保障しているものと解されるから、抗告人X1(個人) が行訴法22条1項にいう「権利を害される第三者」といえるか否かは、問題になっている不当労働行為の類型に応じていかなる者に救済申立権を保障しているかにより、判断すべきことになるとされた例。
③ 本件訴訟において、取消しの対象となっているのは、中労委命令のうち病院に団体交渉応諾命令を発した救済命令であるところ、労組法7条2号は、「使用者が雇用する労働者の代表者」との団体交渉を正当な理由なくして拒むことを禁止しているのであるから、同条号の不当労働行為についての救済利益は、団体交渉の主体である労働者の代表者すなわち労働組合(その上部団体が含まれることもある。)に帰属しているとされた例。
④ 労働組合の構成員である組合員については、労組法7条2号、6条、1条1項、14条の文言ないし趣旨に照らすと、団体交渉の拒否についての救済の利益を直接的に保障されていると解することはできず、本件において、嘱託再雇用問題、特に再雇用基準の提示などによる誠実団体交渉がXにとって密接な利害関係の有するものであることが優にうかがえるけれども、これはあくまでも事実上の利益ないし経済上の利益にすぎず、法的な利益ということはできないとされた例。 
⑤ 右のとおりだとすると、X1は、本件中労委命令が取り消されることによりその救済を求める権利が害される第三者であるとはいえず、本件訴訟の結果により権利を害される第三者には当たらないとされた例。

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京地労委平成8年(不)第70号・平成10年(不)第45号 一部救済 平成12年2月15日
中労委平成12年(不再)第26号・第29号 棄却・一部変更 平成17年6月16日
東京地裁平成18(行ク)47号 訴訟参加申立ての却下 平成18年5月16日
東京地裁平成17年(行ウ)第313号 棄却 平成19年4月18日
東京高裁平成19年(行コ)第163号 棄却 平成20年7月10日
最高裁平成20年(行ヒ)第354号 上告不受理 平成21年5月13日
最高裁平成20年(行ツ)第307号
最高裁平成20年(行ヒ)第353号
上告棄却・上告不受理 平成21年5月13日