労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本貨物鉄道・北海道旅客鉄道(全動労不採用) 
事件番号  中労委平成 1年(不再)第25号 
中労委平成 1年(不再)第27号 
再審査申立人  日本貨物鉄道 株式会社 
再審査申立人  北海道旅客鉄道 株式会社 
再審査被申立人  全国鉄動力車労働組合 
再審査被申立人  全国鉄動力車労働組合北海道地方本部 
命令年月日  平成 6年 1月19日 
命令区分  一部変更(初審命令を一部取消し) 
重要度   
事件概要  本件は、国鉄の分割・民営化により発足した両会社が、国労組合員1704名を採用しなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
 初審北海道地労委は、これを不当労働行為であるとし、(1)上記1704名(北海道旅客鉄道1675名、日本貨物鉄道29名)の昭和62年4月1日付採用の取扱い、(2)就労職場等についての組合との協議、(3)バック・ペイ(国鉄清算事業団からの支給額との差額)及び(4)これらに関する文書の手交と掲示を命じた。
 両会社が、これを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は、初審命令の一部を変更し、(1)初審命令の救済対象者のうち国鉄清算事業団の離職者の中から採用希望者を改めて選考し、昭和62年4月1日付採用として取扱い、命令交付日から3年以内に就労させること、(2)就労職場等についての組合との協議、(3)採用者に対し、平成2年4月2日から就労までの間、昭和62年4月1日に採用されていたら得られたであろう賃金相当額60%の支払いを命じ、併せて文書交付を命じた。 
命令主文  I 初審命令主文を次のように改める。
1 再審査申立人北海道旅客鉄道株式会社は、初審命令別表1記載の組合員のうち、日本国有 鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法(昭 和61年法律第91号)の失効に伴い平成2年4月2日に申立外日本国有鉄道清算事業団からの 離職を余儀なくされた者(以下「清算事業団離職者」という。)であって、本命令交付後同 社にその職員として採用されることを申し出たものの中から、日本国有鉄道改革法(昭和61 年法律第87号、以下「改革法」という。)第23条第1項の規定により同社の設立委員の提示 した職員の採用の基準等を参考として同社が改めて公正に選考し、その結果採用すべきもの と判定した者を、昭和62年4月1日をもって同社の職員に採用したものとして取り扱い、本 命令交付日から3年以内に就労させなければならない。
2 再審査申立人日本貨物鉄道株式会社は、初審命令別表第2記載の組合員のうち、清算事業 団離職者であって、本命令交付後同社にその職員として採用されることを申し出たものの中 から、改革法第23条第1項の規定により同社の設立委員の提示した職員の採用の基準等を参 考として同社が改めて公正に選考し、その結果採用すべきものと判定した者を、昭和62年4 月1日をもって同社の職員に採用したものとして取り扱い、本命令交付日から3年以内に就 労させなければならない。
3 再審査申立人北海道旅客鉄道株式会社及び同日本貨物鉄道株式会社(以下「両会社」とい う。)は、上記第1項及び第2項による選考の経過、判定の結果及び選考が公正に行われた ことについて、それらに用いた資料を添えて、それぞれ、当委員会に報告しなければならな い。
4 両会社は、上記第1項及び第2項を履行するに当たり、昭和62年4月1日をもって両会社 の職員に採用したものとして取り扱われる者(以下「採用対象者」という。)の就労すべき 職場・職種について、それぞれ、再審査被申立人らと協議しなければならない。
5 両会社は、採用対象者に対して、平成2年4月2日からこれらの者が就労するまでの間、 これらの者がその期間についてそれぞれ昭和62年4月1日に両会社に職員として採用されて いたならば得られたであろう賃金相当額の60%に相当する額を支払わなければならない。
6 両会社は、本件命令交付後、速やかに再審査被申立人らに対してそれぞれ次の文書を交付 しなければならない。
                      記
                  文  書  1
  昭和62年4月1日の採用及び同年6月1日の補充採用においては、当社の職員として不採 用とされた貴組合の組合員の一部については、不当労働行為に当たる行為があったと中央労 働委員会により認定されました。
  今後は、法令を遵守し、正常な労使関係の形成に努めます。
                              平成  年  月  日
   国鉄労働組合
    中央執行委員長 X1 殿
   国鉄労働組合札幌地方本部
    執行委員長   X2 殿
   国鉄労働組合青函地方本部
    執行委員長   X3殿
   国鉄労働組合旭川地方本部
    執行委員長   X4 殿
   国鉄労働組合釧路地方本部
    執行委員長   X5 殿
                           北海道旅客鉄道株式会社
                            代表取締役 Y1 印
                文  書  2
  昭和62年4月1日の採用においては、当社の職員として不採用とされた貴組合の組合員の 一部については、不当労働行為に当たる行為があったと中央労働委員会により認定されまし た。
  今後は、法令を遵守し、正常な労使関係の形成に努めます。
                             平成  年  月  日
   国鉄労働組合
    中央執行委員長 X1 殿
   国鉄労働組合札幌地方本部
    執行委員長   X2 殿
   国鉄労働組合青函地方本部
    執行委員長   X3 殿
   国鉄労働組合旭川地方本部
    執行委員長   X4 殿
   国鉄労働組合釧路地方本部
    執行委員長   X5 殿
                          日本貨物鉄道株式会社
                           代表取締役 Y2 印
7 再審査被申立人らのその余の救済申立てを棄却する。
II 再審査申立人らのその余の各再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  1500 不採用
国鉄改革に際し、新会社に採用を希望した全動労組合員に対して、国鉄が採用候補者名簿に登載せず、その結果、これらの者を設立委員が新会社に採用すると決定しなかったことが少なくとも一部の者について不当労働行為であるとされた例。

3900 「不利益の範囲」
国鉄改革に際し、新会社に採用を希望した全動労組合員に対して、国鉄が採用候補者名簿に登載せず、その結果、これらの者を設立委員が新会社に採用すると決定しなかったことが少なくとも一部の者について不利益取扱があったと判断された例。

4417 条件付命令・協議命令
命令交付後新会社に職員としての採用を申し出た者の中から、新会社が改めて公正に選考し、その結果採用すべきものと判定した者を、昭和62年4月1日をもって新会社の職員に採用したものとして取り扱い3年以内に就労させることを命じた例。

4417 条件付命令・協議命令
会社が採用対象者を選考する際に、選考の経過、判定の結果及び選考が公正に行われたことについて、それらに用いた資料を添えて労働委員会に報告することを命じた例。

4417 条件付命令・協議命令
救済対象者の数を具体的に明示せず「相当数となるようにすべきである」とした例。

4417 条件付命令・協議命令
昭和62年4月1日をもって新会社の職員に採用したものとして取り扱われる者の就労すべき職場・職系について、組合と協議することを命じた例。

4408 バックペイが認められなかった例
清算事業団を離職した平成2年4月2日から就労するまでの期間について、昭和62年4月1日に新会社に採用されていたならば得られたであろう賃金相当額の60%に相当する額の支払いを命じた例。

4612 P.Nに替えて他の措置を命じた例
陳謝文の手交及び掲示を命じた初審命令を文書交付に変更した例。

5006 採用の請求
新会社発足に当たっての社員の採用は、典型的な新規採用の場合における企業の採用の自由とはその性質を異にしており、しかも、本件不採用は不当労働行為に該当するのであるから採用命令は企業の採用の自由を侵害するものではないとされた例。

5006 採用の請求
基本計画において定められた採用人員枠を超えて採用を命ずることは救済命令の裁量の範囲を逸脱するものであり、会社の経営状態からも命令の実現は不可能であるとの会社主張が斥けられた例。

5006 採用の請求
補充採用において、採用を辞退し、あるいは募集に応募しないような組合員と雇用契約を締結することは、法律上も事実上も実現不可能であるとの会社主張が斥けられた例。

1500 不採用
承継法人の職員の採用にあたり、全動労と他の組合員の採用率に著しい格差のあることが不当労働行為とされた例。

4911 解散事業における使用者
国鉄による承継法人の職員となるべき者の選定及び採用候補者名簿の作成は、承継法人の設立委員の補助機関として行ったものであり、その過程に不当労働行為と目される行為があった場合の責任は設立委員に帰属するとされた例。

1500 不採用
改革法23条5項にいう採用とは文字どおり採用のみを指し、不採用については同条項が適用されないとの会社の主張が斥けられた例。

5121 挙証・採証
承継法人の職員の採用にあたり、全動労と他の組合の組合員との採用率に著しい格差の生じた合理的理由の疎明がない場合、大量観察方式による判断が許されるとされた例。

3607 労働者の行為と不利益取扱の程度との関連
国鉄改革の過程において職場規律の是正に必ずしも協力的でなかった全動労組合員の行動にはそれが勤務の評定に影響を与えることとなったとしても無理からぬ側面もあったとされた例。

1500 不採用
北海道会社の昭和62年6月1日付補充採用における不採用の措置は会社発足までの経過、補充採用に見られる顕著な組合間格差等からみて少なくとも一部の者について不当労働行為であるとされた例。

4909 事業分離後の新企業体
商法上の発起人に相当する鉄道会社の設立委員が負うべき不当労働行為とされる行為の責任は当該鉄道会社に帰属するとされた例。

業種・規模  鉄道業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集99集1044頁 
評釈等情報  中央労働時報 平成6年5月10日  875号 14頁 

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
北海道地労委昭和62年(不)第6号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  平成 1年 1月12日 決定 
東京地裁平成 6年(行ウ)第67号 救済命令の全部取消し  平成12年 3月29日 判決 
東京高裁平成12年(行コ)第161号 控訴の棄却  平成14年10月24日 判決 
最高裁平成15年(行ヒ)第17号 上告不受理決定  平成15年12月15日 判決 
最高裁平成15年(行ツ)第19号 上告の却下  平成15年12月15日 決定 
最高裁平成15年(行ヒ)第16号(上告却下・上告不受理) 上告却下・上告受理  平成15年12月15日 決定 
最高裁平成15年(行ツ)第18号 上告の棄却  平成15年12月15日 判決 
最高裁平成15年(行ヒ)第16号(上告の棄却) 上告の棄却  平成15年12月22日 判決 
 
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