事件名 |
日本貨物鉄道外1社(全動労不採用) |
事件番号 |
東京高裁平成12年(行コ)第161号
|
控訴人 |
全日本建設交運一般労働組合全国鉄道本部 外1名 |
控訴人 |
中央労働委員会 |
被控訴人 |
日本貨物鉄道株式会社 |
被控訴人 |
北海道旅客鉄道株式会社 |
判決年月日 |
平成14年10月24日 |
判決区分 |
控訴の棄却 |
重要度 |
|
事件概要 |
国鉄分割民営化により新会社として発足した日本貨物鉄道株式会社及
び北海道旅客鉄道株式会社に全動労組合員313名が採用されなかったことが、労働組合所属を理由とする差別的取扱いの不当労
働行為にあたるとする救済申立てにつき、北海道地労委により発せられた救済命令に対して会社らが再審査を申し立てたところ、
中労委は命令を一部変更し、組合員313名のうち、清算事業団離職者であって、両会社への採用を申し出た者の中から改めて公
正に選考し採用すべきと判定した者について採用したものとして取り扱えとの命令を発した。両会社はこれを不服として東京地裁
に行政訴訟を提起したところ、同地裁は中労委命令を取り消す旨の判決を言い渡したことから、中労委は東京高裁に控訴したが、
同高裁は控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 |
判決の要旨 |
4911 解散事業における使用者
承継法人の設立委員は、国鉄を通じてその職員に対し、承継法人の職員の労働条件及び職員の採用の基準を提示して、職員の募集
を行い、国鉄はこの採用の基準に従って、日本貨物鉄道ら承継法人のために採用候補者の選別を行い、設立委員は、国鉄が作成し
た名簿に記載された職員の中から承継法人の職員を採用することとされているのであり、国鉄は、承継法人の設立委員が提示した
採用基準に従って、承継法人のために採用候補者の選別をする事務を委ねられているにすぎず、設立委員、ひいては承継法人らが
雇用契約の一方当事者であり、労組法七条の使用者であることはいうまでもない。そして、採用手続きにおいて不当労働行為が
あったときは、承継法人らは、当該不当労働行為に具体的に関与したか否かに関わらず、不当労働行為責任を免れないものと解す
るのが相当である。
4911 解散事業における使用者
本件不採用は、国鉄の事業を引き継ぐ承継法人らが国鉄の職員であった組合員を採用しなかったというものであり、職員の採用対
象者は国鉄又は国鉄から移行した清算事業団の職員に限られ、外部採用は予定されていなかったことに鑑みると、国鉄の事業を引
き継ぐ承継法人が設立された経緯、組合員が採用されなかった経緯等の具体的な事情の如何にかかわらず、承継法人らの職員の採
用が新規採用であり企業には採用の自由があることのみを根拠として、組合員の不採用が不利益取扱に当たらず、したがって、支
配介入にも当たらないと解することも相当でない。
4911 解散事業における使用者
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
限られた採用定員を前提に承継法人の職員の採用候補者の選別を委ねられた国鉄が、採用候補者の選別をした際、処分歴、昇給昇
格歴、業務知識、技能、業務処理能力といった点に加え、違法な争議行為やワッペン着用闘争等の職場規律に反する行動を繰り返
し、職員に企業人としての自覚と行動力を身につけさせることを目的として行われた企業人教育の実施にも反対してこれに参加し
なかったことなど国鉄の分割民営化に強硬に反対する立場からの一連の行動が相当程度の重きをもって考慮された職員管理調書に
依拠したことは、国鉄の再建という当時の特別な状況下における労働者の団結権の保障と企業の採用の自由との調和点として、不
当労働行為に当たるとはいえず、そのような状況下において、本件組合員を含む特定の採用希望者を採用候補者に選別しなかった
国鉄に不当労働行為意思があったとも認められない。本件組合員らが国鉄によって採用候補者に選別されなかったのは、本件組合
員が組合に所属していること自体を理由とし、あるいは組合員が組合員として労働組合の正当な行為をしたことをの故をもってさ
れたとはいえないから、本件組合員のうち少なくとも一部の者については組合所属あるいは組合活動の故に不利益取扱いがされた
と断じ、これが不利益取扱及び支配介入にあたるとして日本貨物鉄道らの不当労働行為責任を認めた本件命令は、その判断を誤っ
ているというほかない。
|
業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集37集792頁 |
評釈等情報 |
|