労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  エスエムシー 
事件番号  東京地労委 平成 2年(不)第64号 
申立人  関東化学・印刷・一般労働組合エスエムシー支部 
被申立人  エスエムシー  株式会社 
命令年月日  平成 5年 4月20日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、(1)管理職等の言動を通じて組合の結成を非難、組合加入の抑止、組合からの脱退勧奨をしたこと、(2)組合員X1、X2両名に始末書又は損失報告書の提出を命じたこと、(3)組合員X3、X4両名を機密事項の担当から外し、さらにX3に対して配転を命じたこと、(4)組合員の電話受信を妨害したこと、(5)組合の行ったアンケート調査を妨害したことが不当労働行為として争われた事件である。
東京地労委は、(1)(3)(4)(5)についてこのような方法により組合の組織運営に支配介入してはならないこと及び文書手交と文書掲示を命じ、その余の申立ては棄却した。 
命令主文  1 被申立人エスエムシー株式会社は、次のような方法により、申立人関東化学・印刷・一般労働組合エスエムシー支部の組織運営に支配介入してはならない。
(1) 部長、課長、課長代理、係長、主任または事務課員らの言動を通じて、申立人組合の結成を非難し、同組合を否認あるいは誹謗し、従業員の同組合への加入を抑止し、同組合からの脱退を勧奨し、または同組合員への電話の受信を妨害すること。
(2) 申立人組合員に対し、仕事を外しまたは配転するなどの方法により同組合からの脱退を強要すること。
(3) 申立人組合の行うアンケート調査を妨害すること。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、下記文書を楷書で明瞭に墨書して、被申立人会社の本社正面玄関および草加第一、第二、第三工場の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
              記
                 平成  年  月  日
関東化学・印刷・一般労働組合エスエムシー支部
支 部 長  X5殿
              エスエムシー株式会社
              代表取締役 Y1
 当社が行った以下の行為は、不当労働行為であると東京都地方労働委員会において認定されました。今後このような行為を繰り返さないよう留意します。
(1) Y2購買部長が平成2年6月12日に購買部の夕礼において組合結成を暗に非難するなどした発言、Y3事務課主任らが同月18日に貴組合員であったX6氏および同X3氏に対して脱退を勧奨した発言、Y4製造一部六課係長が同月20日に貴組合X5支部長に対して組合を否認するなどした発言、Y5事務課長およびY6事務課課長代理が同月26日に事務課の朝礼において、Y7購買管理課長が同日に購買部の朝礼において、Y8製造一部二課長が同日に貴組合X7執行委員に対しておよびY4製造一部六課係長が同日に製造一部六課のパート社員らに対してそれぞれ組合を否認するなどした発言、Y9生産統括部長が同年11月2日に貴組合X1書記長に対して脱退を勧奨するなどした発言ならびにY10製造一部六課長が同年6月29日に貴組合員X8氏の電話の受信を妨害したこと。
(2) 同年6月25日ごろ貴組合員であったことを理由としてX6氏およびX3氏の仕事を外し、また、同年11月中旬にX3氏に配転を命じたこと。
(3) 同年10月24日に貴組合が行ったアンケート調査を妨害したこと。
(注:年月日は文書を掲示した日を記載すること。)
3 被申立人会社は、前項を履行したときは、すみやかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
課長らの発言は朝礼ないしこれに近接する時間帯に一斉にされていること等からみて会社の意を体してなした一連のものとみるのが相当であり、組合を否認又は軽視し、組合加入を抑止する意図のもので支配介入にあたるとされた例。

1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
製品の変色事故等について組合員X1らに始末書又は損失報告書を提出したことには、業務上の必要性があり、その記載すべき内容も同人らを咎めることを主眼としたものとは認められないこと等からして、組合所属故の嫌がらせではないとされた例。

1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
X3らに対し、組合員であることを理由として「機密事項」からの仕事外しをし、さらにX3に対しては事務課から製造部へ配転したことは、組合の脱退強要であり、支配介入にあたるとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
課長が組合員の電話受信につき許可をとるよう述べたことは、これまで私用電話は黙認しており、組合用務の電話により業務に支障を来たしたことも認められないのであることからみて行き過ぎであり、組合員であるが故の嫌がらせであるとされた例。

3100 スパイ
組合のアンケート調査は就業時間外に社外で行ったもので、内容も団交資料のためのものであり、これを会社が従業員に不安を与えるとして回収したことは正当な組合活動に対する妨害行為として支配介入にあたるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
生産統括部長の発言は「組合なんかやめろ」というものであり、組合脱退を勧奨する趣旨のものであるから支配介入であるとされた例。

4820 単一組織の支部・分会等
支部は関東労組の下部組織であるが、独自の規約、組織を持ち独立した財政を営んでおり、独立した労働組合でないとの主張は採用できないとされた例。

5140 資格審査
組合の資格審査は命令が発せられるまでになされれば足り、本案審査前に決定しないことは違法であるとの主張は採用できないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
夕礼における部長の発言は公式な会合での発言であり、組合の結成を暗に非難し、組合加入を抑止する内容のもので、支配介入に該当するとされた例。

2611 その他の従業員の言動
2622 組合員調査
3411 その他の従業員の言動
Y4係長は管理職ではないが、会社係長、班長らが同時期に組合加入の調査をしていることからみて会社の意向によるものであり、その内容も、組合員であることを理由とする不利益取扱いを示唆するもので支配介入にあたるとされた例。

2623 脱退届け作成・提出強要
3411 その他の従業員の言動
提出された脱退届には同一文書のコピーとみられるもの30枚、会社用箋にワープロによる同一文面のもの20枚が含まれており、会社の関与した疑いがあるが、これだけをもって会社が脱退届の作成、配布に関与した支配介入とはいえないとされた例。

業種・規模  一般機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集96集640頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京地労委 平成 2年(不)第68号/他 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  平成 3年 8月 6日 決定 
東京地労委 平成 2年(不)第64号/他 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  平成 3年 8月 6日 決定 
中労委 平成 3年(不再)第51号 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  平成 6年 9月 7日 決定 
東京地裁 平成 6年(行ウ)第343号 請求の棄却  平成 8年 3月28日 判決 
東京地裁 平成 5年(行ウ)第169号 請求の棄却  平成 8年 3月28日 判決 
東京高裁 平成 8年(行コ)第46号 控訴の棄却  平成 8年 9月30日 判決 
東京高裁 平成 8年(行コ)第40号 控訴の棄却  平成 9年 1月30日 判決 
最高裁 平成 9年(行ツ)第6号 上告の棄却  平成 9年10月23日 判決 
最高裁 平成 9年(行ツ)第98号 上告の棄却  平成 9年11月27日 判決 
東京高裁 平成 9年(行ソ)第13号 請求の棄却  平成12年 9月26日 判決 
 
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