労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  エスエムシー 
事件番号  最高裁平成 9年(行ツ)第98号 
上告人  エスエムシー株式会社 
上告人参加人  関東化学・印刷・一般労働組合エスエムシー支部 
被上告人  東京都地方労働委員会 
判決年月日  平成 9年11月27日 
判決区分  上告の棄却 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、<1>管理職等の言動を通じて、組合結成を非難し、組合加入を抑止し、組合からの脱退の推奨をしたこと、<2>組合員X1、X2両名に始末書又は損失報告書の提出を命じたこと、<3>組合員X3、X4両名を給与電算処理などの「機密事項」業務から外し、さらにX3に対して配転を命じたこと、<4>組合員の電話受信を妨害したことが争われた事件である。
 東京地労委は、上記<1>、<3>、<4>及び<5>に関して、このような方法により組合の組織運営に支配介入してはならないこと及び文書掲示を命じ、<2>についての申立て等その余の申立てについては棄却した。
 会社は、これを不服として、行政訴訟を提起していたものであるが、東京地裁が請求を棄却し、東京高裁も控訴を棄却したため、上告したところ、最高裁はこれを棄却した。 
判決主文  本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。 
判決の要旨  4822 混合組合
労働者が自主的に組織した労働組合であることが明らかである関東労組が個人加入と団体加入のいずれも認める混合組合であるからといって、格別の弊害があるとも考えられないことから、同組合は労働組合法2条本文にいう「団体又はその連合団体」にあたると解すべきである。

4820 単一組織の支部・分会等
参加人支部の組合員らは、関東労組の支部規約準則を自らの規約として承認・制定したものということができ、支部規約上、労働協約の締結には、関東労組の指示を受けることが必要であるとされていることから、上部組織である関東労組の役員が関与したからといって参加人支部に独立性がないということはできない

2620 反組合的言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
Y1部長の発言は、従業員に対し、虚言に惑わされないようにと注意するにとどまらず、会社が組合を歓迎していないし、組合は不要であり、組合加入者に再考を促す旨の発言であり、組合の結成を非難し、従業員の組合加入を抑止する内容の発言として組合の組織運営に対する支配介入に該当する。

2620 反組合的言動
2622 組合員調査
Y2係長の発言は、上司の指示による組合加入状況調査を貫徹しようとして、会社の意を体してなされたもので、組合を否認し、組合員であることを理由とする不利益取扱いを示唆する威嚇的な発言であり、組合の組織運営に対する支配介入に該当する。

2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
会社課長らの発言は、Y3取締役の指示に基づいて、各管理職が朝礼等において、管理職の立場から従業員に対し、会社が組合支部と交渉をしない旨告げるものであり、組合を否認し少なくとも軽視し、交渉相手として認めないとする会社の方針を従業員に告知し、従業員の組合加入を抑止しようとする意図のもとになされた一連の発言であると認められ、組合の組織運営に対する支配介入に該当する。

5130 法2条但書との関係
労組法2条1号所定の「使用者の利益を代表する者」に該当するか否かは、個々の担当職務等によって、その者の加入によって労働組合の自主性が損なわれるかどうかを基準として個別に検討する必要があるところ、Y4、Y5の当時の担当職務は、直接人事権を有しないことはもとより、職務として会社の労働関係の計画・方針に関する機密事項に接する立場にもないから、同所定の者に該当しない。

2700 威嚇・暴力行為
組合員X5に対する電話受信・取次業務の担当替えの措置は、X5が組合員であるという理由で、もっぱら組合用務の私用電話を禁ずるためにしたもので、従業員が私用電話を取り次ぐことを禁止する趣旨ではないから、組合員であることを理由とする嫌がらせというほかなく、組合の組織運営に対する支配介入である。

0200 宣伝活動
3020 組合活動への制約
原告管理職による本件アンケート調査紙の回収は、同紙の配布が正当な組合活動であることから、正当な組合活動を妨害する行為であって、組合の組織運営に対する支配介入である。

4617 その他
ポストノーティスは、憲法21条の自由をなんら侵害するものでないから、各行為が不当労働行為と認定したこと及び今後このような行為を繰り返さないように留意することを記載した文書の掲示は、同種行為の再発を妨止するための相当な措置であると認められ、労働委員会に委ねられた裁量の範囲内にあるというべきである。

業種・規模  一般機械器具製造業 
掲載文献  労働委員会関係裁判例集32集559頁 
評釈等情報  中央労働時報 1997年12月10日 930号 44頁 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京地労委平成 2年(不)第68号/他 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  平成 3年 8月 6日 決定 
東京地労委平成 2年(不)第64号/他 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  平成 3年 8月 6日 決定 
東京地労委平成 2年(不)第64号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  平成 5年 4月20日 決定 
中労委平成 3年(不再)第51号 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  平成 6年 9月 7日 決定 
東京地裁平成 6年(行ウ)第343号 請求の棄却  平成 8年 3月28日 判決 
東京地裁平成 5年(行ウ)第169号 請求の棄却  平成 8年 3月28日 判決 
東京高裁平成 8年(行コ)第46号 控訴の棄却  平成 8年 9月30日 判決 
東京高裁平成 8年(行コ)第40号 控訴の棄却  平成 9年 1月30日 判決 
最高裁平成 9年(行ツ)第6号 上告の棄却  平成 9年10月23日 判決 
東京高裁平成 9年(行ソ)第13号 請求の棄却  平成12年 9月26日 判決