労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  白百合会(緊急命令申立て) 
事件番号  東京地裁平成22年(行ク)第224号 
申立人  中央労働委員会 
被申立人  社会福祉法人白百合会 
決定年月日  平成24年1月19日 
決定区分  緊急命令申立ての認容 
重要度  重要命令に係る決定 
事件概要  1 法人が、①団体交渉の実施日時又は場所を一方的に制限して団体交渉を拒否したこと、②組合らとの合意事項に係る労使協定書を取り交わすことを拒否したこと、③団体交渉において不誠実な対応をしたこと、④組合委員長に対し、デイサービスセンター(以下「デイセンター」という。)の介護職員との兼務を命じたこと、⑤同委員長をデイセンター専従介護職員に配置転換したこと、⑥介護職員に対し、寮母室で休憩するよう命じたこと、⑦組合員の契約更新に当たり実労働時間数を削減する等したこと、⑧長野県医療労働組合連合会を誹謗中傷する発言を行ったこと、⑨組合員全員の氏名の開示を求めたこと、⑩組合員と個別交渉を行ったこと、⑪就業規則の変更手続における労働者代表の選出投票を不公正な方法で行ったこと等が、不当労働行為に当たるとして、長野県労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審長野県労委は、法人に対し、①組合らとの合意事項に関する労使協定の締結、②団体交渉の開催条件を一方的に制限して応諾を拒否することの禁止及び交渉ルールの制定、③団体交渉において主張の根拠となる資料を提示しない不誠実な対応の禁止、④組合らとの交渉事項に関する個別交渉の禁止、⑤組合らに対する誹謗中傷発言や組合員氏名の開示要求等の禁止、⑥組合委員長に対する異動命令の撤回及び原職復帰後における異動前の実労働時間の適用、⑦職員の休憩場所を寮母室に限定し、待機させることの禁止、⑧文書手交及び掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。
 法人は、これを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は、上記1④⑥⑦は不当労働行為に当たらないと判断し、初審命令を一部変更して、①日時又は場所を制限して団体交渉を拒否することの禁止、②団体交渉で確認された事項の書面化、③組合委員長の異動命令がなかったものとしての取扱い、④文書手交及び掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。
 これに対し、法人はこれを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したため、中労委は緊急命令の申立てを行ったのが本件であるが、同地裁は申立てを認容した。
決定主文  1 被申立人は、被申立人を原告、国を被告とする当庁平成22年(行ウ)第221号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決の確定に至るまで、申立人が平成21年(不再)第8号事件について発した平成22年3月3日付け命令主文第1項ないし3項に従い、
(1) 組合から同組合の組合員の労働条件等に係わる事項について団体交渉を申し入れられたときは、自らが申し入れた日時又は場所でなければ応じられないとの理由で、これを拒否してはならない。
(2) 組合との間で、平成19年5月24日の団体交渉において口頭で確認された同組合の組合員の勤務日数、実労働時間数及び夜勤に関する事項について書面を作成しなければならない。
 なお、上記書面の作成に当たっては、同組合及び長野県医療労働組合連合会との間で、書面の用語及び表現につき、誠実に協議しなければならない。
(3) 組合執行委員長に対し、平成20年3月3日付けで命じたデイセンターへの異動命令がなかったものとして取り扱い、同人をH荘の介護職員に復帰させなければならない。
 また、復帰後の組合執行委員長に対しては、平成20年3月31日以前の労働契約書による1日の実労働時間数を適用するとともに、同日以前における1か月当たり勤務日数を割り当てなければならない。
2 申立費用は被申立人の負担とする。  
決定の要旨  1 救済命令の適法性について
 ①被申立人は、団体交渉に対し、いずれも土、日曜日又は祝日に、R会館で実施することに固執し、その余の日時又は場所での実施に応じようとしなかったこと、②被申立人は、団体交渉において組合員の勤務日数、実労働時間数及び夜勤に関する事項について口頭で合意が成立したのに、この合意の存在を否定し書面化に応じなかったこと、③被申立人は、組合委員長に対し、デイセンターの専従介護職員を命じたこと、④被申立人は、組合委員長との労働契約の更新に当たり、実労働時間数を従前よりも削減する労働条件の変更を行ったことが認められ、被申立人の上記各行為は労組法7条1号ないし3号の不当労働行為に当たり、これらに対する本件救済命令は適法と認められる。
2 緊急命令の必要性について
 申立人が本件命令を発し、本件命令書の写しが被申立人に交付された後も、被申立人が本件救済命令を履行しておらず、被申立人には自発的に本件救済命令を履行しようとする意思がないこと、本案事件の判決の確定に至るまで本件救済命令の不履行の状態が継続した場合、被申立人が今後も団体交渉の日時及び場所に固執し、団体交渉が行われないことや、団体交渉で確認された事項の書面化に応じず、また、不当労働行為に該当する組合委員長に対する異動命令がなかったものとして取り扱われないことにより、組合の活動が著しく阻害され、その結果、組合員に個人的被害が生じるおそれがあることが一応認められ、被申立人の主張を考慮に入れても、現時点において、本件救済命令について、緊急命令の必要性があるといえる。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
長野県労委平成19年(不)第1号 一部救済 平成21年1月28日
中労委平成21年(不再)第8号 一部変更 平成22年3月3日
東京地裁平成22年(行ウ)第221号 棄却(主位的請求)・却下(予備的請求) 平成24年1月19日
東京高裁平成24年(行コ)第51号 一部変更(却下・棄却) 平成24年6月26日
東京高裁平成24年(行タ)第24号 緊急命令の一部取消・却下 平成24年6月26日
東京高裁平成24年(行タ)第119号 却下 平成24年7月20日
最高裁平成24年(行ヒ)第391号 上告不受理 平成24年11月27日
 
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