労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 オサメ工業
事件番号 東京地裁平成18(行ウ)303号
原告 オサメ工業株式会社
被告
被告補助参加人 全日本金属情報機器労働組合大阪地方本部
被告補助参加人 全日本金属情報機器労働組合オサメ工業支部
判決年月日 平成19年6月25日
判決区分 棄却
重要度  
事件概要  会社が、①結成間もない組合からの団交申入れ直後から、組合支部執行委員長に対する解雇通告、組合支部役員に対する辞表提出要求を行ったこと、②従業員に対する組合加入妨害を行ったこと、③その後の団体交渉に誠実に対応しなかったこと、④組合活動のための会社施設等の使用・貸与を拒否したことが不当労働行為であるとして争われた事件で、初審大阪府労委は、会社に対し、①会社要求の交渉条件に固執することなく誠実に団体交渉に応じること、②文書手交を命じ、その他の申立てを棄却した。
 会社はこれを不服として再審査を申し立てたが、中労委は、本件再審査申立てを棄却した。これを不服として、会社が、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は請求を棄却した。
判決主文 1.原告の請求を棄却する。
2.訴訟費用は、補助参加によって生じた費用を含め、原告の負担とする。
判決の要旨 (争点1)社長の組合支部役員3名に対する発言の不当労働行為該当性について
① 社長の組合支部役員3名に対する「誰が組合を作ったんだ。お前ら、いい年して、いいことか悪いことか分からんのか。」「X1はクビにする。だからお前たちも明日、辞表を書いてもってこい。」という発言は、組合支部の結成をあからさまに非難し、その結成又は活動を萎縮させるものであり、支配介入に当たると認められるとされた例。
(争点2)会社のX1に対する解雇通告の不当労働行為該当性について
② 会社及び社長は、組合支部の結成を嫌悪し、とりわけ執行委員長のX1を強く非難し、組合支部を結成したことを理由にX1に対し、口頭及び書面で解雇通告を行ったと認めるのが相当であり、このような解雇通告は、会社の反組合的意図で行われたことは明らかであり、速やかに撤回されたとはいえ、精神上の不利益扱いに当たるといえるし、また、組合支部の結成又は活動を萎縮させるものであり、支配介入にも該当するものであるとされた例。
(争点3)社長のX2に対する発言の不当労働行為該当性について
③ 社長の組合支部の組合員であるX2に対する「組合に入るのか。」「組合を抜けるんやったら今のうちや。」「将来のことを考えるように。」等の発言は、組合からの脱退を勧奨するものであり、支配介入に該当するとされた例。
(争点4)社長の非組合員対する発言の不当労働行為該当性について
④ 社長の非組合員に対する「組合に入るのは構わん」「お前ら、分かっているやろな。ここを辞めたら、他に行くとこないぞ。」という発言は、会社の代表者の地位にある者がその従業員に対し、組合加入に否定的な意見を述べたものであり、組合不加入の勧告又は組合加入の妨害といえ、支配介入に該当するとされた例。
(争点5)会社のX3に対する辞令の不当労働行為該当性について
⑤ 会社は、X3を製造部デリバリ担当責任者に任命する旨の辞令を発し、X3に対する給与を月額五千円増額した。この辞令は、会社の反組合的な態度、会社がX3に対してことさらに組合を脱退するように働きかけていたこと、X3が脱退届けを出したわずか二日後に右記辞令が発令されていること、製造部デリバリ担当者という肩書はこのとき初めて設けられた異例なものであり、昇給を伴うものであることという各事情に照らすと、X3が組合支部を脱退する明確な意思を有していることを知った会社がX3の脱退に対する利益供与等として右記辞令を発したと認めるのが相当であって、支配介入に当たるとされた例。
(争点6)
 団体交渉拒否の有無について
⑥ 会社は団体交渉の出席者の人数について労使それぞれ三名以内という労使の共通認識があったと主張するが、抗議行動の際には会社の人選の要求に対して、組合が三名で対応した事実は認められるものの、このことは抗議行動に対する面談に過ぎず、これをもって団体交渉における人数制限の合意なり、会社がいうところの共通認識として、人数制限を要求することを正当化する事情とは到底考え難い。また、会社は正当な組合活動とはいえない不穏当な行動に照らし、団体交渉の出席者の人数を三名以内に限定することは冷静な話し合いのための合理的な制限であると主張するが、組合の行動は、X1に対する解雇通告等に対する抗議、団体交渉の早期開催の要請等であり、反組合的な行為に端を発する正当な理由に基づくものといえる上、その行為態様等からして抗議行動や要求として不相当なものとはいえないし、組合の団体交渉出席者は七名又は八名であって、会社が応じられないほどの多人数であったとも認められないから、当該人数制限は合理的なものとはいえない。
  これらのことに加え、会社が反組合的な態度をしばしば示していることと等に照らせば、会社が合理的な理由なく団体交渉の出席者人数を三名に制限することなどの条件に固執し、実質的な団体交渉に応じなかったと認められ、かかる不誠実な態度は団体交渉拒否に当たるとされた例。

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成15年(不)第82号 一部救済 平成17年3月4日
中労委平成17年(不再)第18号 棄却 平成18年4月5日
東京地裁平成19年(行ク)第104号(本案事件:平成18年(行ウ)第303号) 緊急命令申立の認容 平成19年6月25日
東京高裁平成19年(行コ)第245号 棄却 平成19年11月29日
最高裁平成20年(行ツ)第81号、平成20年(行ヒ)第85号 上告棄却・不受理 平成20年3月27日
 
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