概要情報
事件名 |
西日本旅客鉄道(全動労配属) |
事件番号 |
東京高裁平成13年(行コ)第144号
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控訴人 |
中央労働委員会 |
控訴人参加人 |
全日本建設交運一般労働組合西日本鉄道本部 |
被控訴人 |
西日本旅客鉄道株式会社 |
判決年月日 |
平成14年10月30日 |
判決区分 |
控訴の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
国鉄の分割・民営化に伴う会社発足時の職員の配置及びその後の配属に関し、全動労所属の組合員91名を労働組合の所属等を理由として、本来と異なる職場、職種に配属する差別的取扱いが行われたとの申立てにより、大阪地労委は、これらの配属は不当労働行為にあたり、組合所属のいかんによらない公正な方法による再配属を命じた。会社は再審査を申し立てたところ中労委は、命令の一部を変更し、改めて公正な方法で配属の見直しを行い、本来の職場、職種に復帰すべき者と判定した者を復帰させることを命じた。会社はこれを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は中労委命令を取り消したため、中労委が東京高裁に控訴を申し立てたが、同高裁は中労委の控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とし、当審における補助参加によって生じた費用は控訴人補助参加人の負担とする。 |
判決の要旨 |
4911 解散事業における使用者
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
改革法第二三条は、承継法人の設立委員に、国鉄を通じて職員の募集をし、国鉄から提出を受けた採用候補者の名簿に基づいて採用の通知をする権限を付与してはいるものの、それ以外に承継法人の職員の配属についての設立委員の権限は何ら規定していないところ、採用と配属とは法的に別個の事項であるから、改革法第二三条が設立委員の配属権限を明文で規定していない以上、設立委員に配属権限があるとすることは、同条の文理的解釈上困難である。
4911 解散事業における使用者
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
設立委員は、承継法人の職員の採用手続きにおいて、新規に採用する職員の募集を国鉄を通じて行い、その際、労働条件及び採用の基準を国鉄を通じて提示し、国鉄から提出された採用候補者名簿に記載された者の中から採用者を決定する権限を有するにすぎず、自ら採用候補者の認定及び採用候補者名簿の作成行為をすることができない上、国鉄が行うこれらの行為を規制し又は国鉄の指揮監督し得る権限も有しないことからすれば、設立委員は、採用候補者の選定及び採用候補者名簿の作成に関し、労働契約の一方当事者である雇用主とはいえないのみならず、「雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位」にあったと解することもできない。したがって、設立委員は、国鉄の行った採用候補者の選定及び採用候補者のに名簿の作成に関し、労組法上七条の「使用者」とはいえないから、これらの過程に不当労働行為と目される行為があったとしても、その行為に関する「使用者」としての責任は、現実にその行為を行った国鉄ないしこれを引き継いだ清算事業団が負うべきものであって、設立委員ひいては会社がその責任を負うものということはできない。
4911 解散事業における使用者
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
設立委員のした3・16配属通知は、会社のなした通達によって会社の昭和62年4月1日付けの配属発令としての効力を有するに至り、会社に採用された者のうち3・10人事異動において兼務発令を受けた者は、会社の鉄道事業本部の各現業機関に所属し、兼務として近畿圏運行本部運輸部管理課に配属されたものと認められるから、本件配属は会社自身の行為によってなされたものということができる。改革法によれば、承継法人はその職員を新規に採用するものとされているところ、一般に新規に採用した職員をいかなる職務、勤務場所に就かせるかについては、労働契約の制約の下で、使用者の労務指揮権に基づく広範な裁量に委ねられると解される。本件についてみても、会社は本件組合員を含む新規採用職員の勤務箇所、従事すべき業務等を決定し、同組合員にこれを命ずる相当広範囲な労務指揮権を有するものということができる。会社のした本件通達による本件配属は、新規採用職員に対する労務指揮権の発動としてその裁量の範囲内においてされたものと認められるから、仮に3・10人事異動に不当労働行為と目される点があり、本件通達による本件配属が3・10人事異動、3・16配属通知とその内容が同じであったとしても、そのことだけで、会社に不当労働行為意思があったとはいえず、これが不当労働行為に該当するということはできない。
4911 解散事業における使用者
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
国鉄がした3・10人事異動に不当労働行為と目すべき点があるとしても、会社にその責任が帰属することはなく、また、設立委員がした3・16配属通知について不当労働行為を問題にする余地はないし、さらに、本件配属等について会社に不当労働行為責任があるともいえないから、上記と異なる判断の下にされた本件命令は、その余の争点について判断するまでもなく、取消しを免れない。
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業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集37集828頁 |
評釈等情報 |
 
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