概要情報
事件名 |
西日本旅客鉄道(全動労配属) |
事件番号 |
東京地裁平成10年(行ウ)第29号
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原告 |
西日本旅客鉄道株式会社 |
被告 |
中央労働委員会 |
被告参加人 |
全日本建設交運一般労働組合西日本鉄道本部 |
判決年月日 |
平成13年 5月 9日 |
判決区分 |
救済命令の全部取消し |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、国鉄の分割・民営化に伴う会社発足時の職員の配属及びその後の配属に関し、全動労所属の組合員91名を組合所属等を理由として、本来と異なる職場、職種に配属する差別取扱いが行われたとして救済申立てがあった事件である。 初審大阪地労委は、これらの配属は不当労働行為に当たるとして、組合所属のいかんによらない公正な方法による再配属等の救済を命じ、会社はこれを不服として再審査の申立てを行い、中労委は、初審命令の一部を変更し、改めて公正な方法で配属の見直しを行い、本来の職場、職種に復帰すべきと判定した者を復帰させること等を命じた。 会社は、これを不服として取消訴訟を提起していたところ、同地裁は、中労委命令を取り消す旨の判決を言い渡した。 |
判決主文 |
1 被告が中労委平成2年(不再)第6号事件(初審大阪地労委昭和62年(不)第67号事件)について、平成9年12月17日付けで発した命令のうち、Ⅰ項の1から5まで及びⅡ項を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とし、補助参加によって生じた費用は被告補助参加人の負担とする。
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判決の要旨 |
1500 不採用
6150 当事者能力・当事者適格
設立委員は、承継法人の職員の採用手続において、新規に採用する職員の募集を国鉄を通じて行い、その際、労働条件及び採用の基準を国鉄を通じて提示し、国鉄から提出された採用候補者名簿に記載された者の中から採用者を決定する権限を有するにすぎず、自ら採用候補者の選定及び採用候補者名簿の作成の行為をすことができない上、国鉄が行うこれらの行為を規制し又は指揮監督し得る権限も有しないことからすれば、設立委員は、採用候補者の選定及び採用候補者名簿の作成に関し、労働契約の一方当事者である雇用主とはいえないのみならず、「雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位」にあったと解することもできず、設立委員は、国鉄の行った採用候補者の選定及び採用候補者名簿の作成に関し、労働組合法第七条の「使用者」とはいえないから、これらの過程に不当労働行為と目される行為があったとしても、その行為に関する「使用者」としての責任は、現実にその行為を行った国鉄ないしこれを引き継いだ清算事業団が負うべきものであって、設立委員ひては会社がその責任を負うべきものということはできない。
1300 転勤・配転
6150 当事者能力・当事者適格
昭和62年3月10日人事異動は、国鉄がその有する人事権に基づいて行ったものであることが明らかであり、仮に3月10日人事異動について不当労働行為と目される行為があったとしても、その責任は国鉄ないしこれを引き継いだ清算事業団が負うべきものであり、設立委員及び会社にその責任が帰属するいわれはないというべきであり、また、同年3月16日配属通知は、それが、承継法人の職員に対する配属命令の権限を有しない設立委員によってされているのであるから、それ自体では配属発令としての効力を有しないものであり、職員の配属を事前に通知する趣旨で行われた事実上の措置と解するほかはなく、これについて不当労働行為(配属についての組合間差別)を問題とする余地はないから、その責任が原告に帰属するとはいえない。
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
設立委員から採用通知を受けている者は、採用を辞退した者を除いて、昭和62年4月1日付けで会社に採用されたものとみなす旨の社長通達(以下「本件通達」という。)は、同年3月31日から同年4月1日にかけての列車の運行を間断なく継続し、承継法人の円滑な事業運営を開始するためには、3月10日人事異動における承継法人の勤務箇所、職名等を、承継法人の発足時における社員の勤務箇所、職名等として取り扱うのが最良の方法であるとした会社の設立委員の判断と同一の判断の下に、会社が社員おのおのに対する個別的な判断を一切経由することなく、3月16日配属通知をそのまま同年4月1日付けの配属命令とみなす措置を執ったものと認められ、本件通達による本件配属が、3月10日人事異動、3月16日配属通知とその内容が同じであるからといって、会社に不当労働行為意思があったとはいえず、これが不当労働行為に当たるとすることはできない。
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
会社が、承継法人に採用された者の勤務箇所、従事すべき業務等を命ずることについて相当広範な労務指揮権を有するところ、会社は、この労務指揮権に基づき、組合員X1及びX2への配属を行ったものということができ、その配属について、少なくとも会社に不当労働行為意思があったとまではいえず、したがって、会社がしたX1及びX2の配属が会社自身の不当労働行為であるとはいえないし、仮に国鉄がした3月10日人事異動に不当労働行為と目される行為があったとしても、そのことを理由にX1及びX2への配属がされたとすることもできない。
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業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集36集243頁 |
評釈等情報 |
 
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