事件名 |
大手前高松高等(中)学校 |
事件番号 |
東京地裁平成 6年(行ウ)第186号
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原告 |
学校法人倉田学園 |
被告 |
中央労働委員会 |
被告参加人 |
香川県大手前高松高等(中)学校教職員組合 |
判決年月日 |
平成 9年 1月29日 |
判決区分 |
救済申立棄却命令の一部取消し |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、学園が、<1>「教育を金もうけの手段にするな」等のビラ
貼付及び宣伝車による街頭宣伝活動を理由として、執行委員長X1他組合員6名を出勤停止処分にしたこと、<2>生徒数の減少
を理由として、X1を休職処分とし、休職期間満了後退職させたこと、<3>始業時刻を15分繰り上げて生徒指導をする業務命
令違反を理由として、組合員X2及びX3を出勤停止処分にし、その後、同人らを教諭から非常勤講師に降職処分を行い、さらに
非常勤講師の雇止めをしたこと等が争われた事件である。
初審香川地労委は、学園の不当労働行為を認め、<1>X1他6名に対する出勤停止処分がなかったものとして取り扱い、金員
の支払、<2>X1に対する休職処分がなかったものとして取り扱い、原職復帰及びバックペイ、<3>X2及びX3に対する出
勤停止処分及び降職処分がなかったものとして取り扱い、原職復帰及びバックペイを命じ、その余の申立てを棄却したところ、こ
れを不服として学園から再審査申立てがなされた。
中労委は、香川地労委の命令を維持し、再審査の申立てを棄却したところ、学園はこれを不服として行政訴訟を提起した。東京
地裁は、中労委が維持した地労委の命令の一部を取り消し、その余の学園の請求を棄却した。 |
判決主文 |
1 被告が、中労委平成元年(不再)第99号事件について、平成6
年4月20日付けでした別紙1記載の命令中、香川県地方労働委員会が香労委昭和56年(不)第2号、昭和57年(不)第4号
(一部)及び昭和61年(不)第1号(一部)事件について、平成元年9月8日付けでした別紙2記載の主文の命令のうち、主文
1項の部分並びに同3項において申立人組合組合員X2、同X3に対する昭和56年8月4日付け出勤停止処分がなかったものと
して取り扱い、昭和56年8月5日から復帰する日までの間に同人らが受けるはずであった各賃金相当額(各一時金を含む。)か
ら既に支給した額を控除した額及びこれに各支払期日の翌日から支払済みに至るまで年5分の割合で算出した金員を付加して支払
うことを命じた部分(昭和57年3月31日付け降職処分により同人らが受け得なかった各賃金相当額にかかる部分を除く。)に
ついて、原告の再審査申立てを棄却した部分を取り消す。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを3分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。参加によって生じた訴訟費用もこれを3
分し、その1を被告補助参加人の負担とし、その余を原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
1401 労務の受領拒否
6341 事実認定の誤り
学園は、組合結成当初から組合を嫌悪しており、組合員が宣伝活動を行う経過の中で学園側のとった対応に問題がなくはないが、
宣伝活動の内容及び態様からみて、この宣伝活動によって一般公衆に誤った印象を与え、その後の生徒募集に重大な影響を及ぼ
し、地域における私立の教育機関である学園にとって回復し難い損害を与える危険があるので、懲戒処分に付したこと自体は相当
で、賃金上の不利益を伴うにとどまる出勤停止処分が選択されているのであるから、懲戒権を濫用したとはいえず、不当労働行為
意思に基づくものということはできない。
1401 労務の受領拒否
学園がX1に休職を命じたことについては、人員を整理する必要性は一応存するといえるが、休職処分の回避措置、休職対象者の
選定、労使間の事前説明等の諸点において、首肯できる理由を見出すことはできず、著しく合理性を欠いた措置であったというべ
きである。 学園は、組合の活動を嫌悪し、組合の執行委員長であるX1を学園から排除しようとして、休職処
分を行ったものと認められる。
1106 契約更新拒否
X1に対する休職期間満了による退職は、休職処分が著しく合理性を欠くにもかかわらず復職させなかったものであり、同じく不
当労働行為意思に基づいてなされたものということができる。
1401 労務の受領拒否
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
校長の命じた本件早朝生徒指導命令は有効なものであるにもかかわらず、命令に違背し、校長等に命令に従うよう促されたほか、
警告書が発されているのに聞き入れなかったことを考慮すれば、出勤停止処分を課することは相当性がある。
学園が本件早朝生徒指導命令に関する団体交渉の申入れを拒絶していることは非難は免れないが、選択された懲戒処分の程度から
みて、懲戒権の濫用に当たるとはいえず不当労働行為に該当しない。
1401 労務の受領拒否
本件早朝生徒指導命令が労使関係が険悪化しているところで、事前の打診もなく突然組合幹部が指名されるなど、学園の姿勢に組
合が疑いをもち、反発することも無理からぬ点があることなどの事情に照らすと、X2及びX3の1年間にわたる本件早朝生徒指
導命令違反が、直ちに懲戒解雇に相当すると評価することはできないのであって、X2及びX3を降職処分としたことは、重きに
失するというべきである。
1106 契約更新拒否
本件雇止めは、学園がX2及びX3の非常勤講師としての契約を更新しないこととして契約期間の満了の通知を行ったことによる
ものであるが、不当労働行為である降職処分を前提とするものであるから、不当労働行為に当たるといわざるを得ない。
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業種・規模 |
教育(自動車教習所を含む) |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集32集53頁 |
評釈等情報 |
中央労働委時報 1997年6月 924号 27頁
労働判例 1997年6月1日 713号 69頁
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