事件名 |
郵政省延岡郵便局差戻 |
事件番号 |
東京地裁昭和45年(行ウ)第74号
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原告 |
国 |
原告 |
全逓信労働組合宮崎県北部支部 |
被告 |
公共企業体等労働委員会 |
被告参加人 |
国 |
被告参加人 |
全逓信労働組合宮崎県北部支部 |
判決年月日 |
昭和46年 8月 6日 |
判決区分 |
救済申立棄却命令の一部取消し |
重要度 |
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事件概要 |
郵便局長が団交申入れを拒否したこと等が争われた事件で、公労委
は、ビラの撤去についての文書手交と組合事務室の入室妨害に関し、組合が遺憾の意を表することを条件として文書手交を命じ、
その他の申立ては棄却した。
国及び全逓信労働組合宮崎県北部支部(以下「申立組合」という。)はこれを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起した。同
地裁は、ビラの撤去に関し、組合が遺憾の意を表することを条件として命じた文書手交を除き、救済申立棄却命令を取消したた
め、公労委及び申立組合はこれを不服として、東京高裁に控訴したが、同高裁は、一審判決を取り消し、東京地裁に差し戻した。
東京地裁は、(1)郵便局長の団交拒否、(2)申立組合役員に対する尾行、(3)申立組合の集会に対する監視がいずれも不
当労働行為を構成しないとして、これらの点に関する組合の救済申立を棄却した部分を取り消した。 |
判決主文 |
1 申立人原告全逓信労働組合宮崎県北部支部、被申立人延岡郵便局
長間の昭和36年(不)第32号救済命令申立事件につき、被告が昭和40年3月8日にした別紙命令書記載の命令中、主文第2
項ならびに第3項のうち(1)原告全逓信労働組合宮崎県北部支部が昭和36年8月17日にした団体交渉の申入れに対する拒
否、(2)同月16日の全逓信労働組合宮崎県地区本部の役員に対する尾行および(3)同月14日の同原告の集会に対する監視
がいずれも不当労働行為を構成しないとして、これらの点に関する同原告の救済申立を棄却した部分を取り消す。
2 原告全逓信労働組合宮崎県北部支部のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、原告国と被告との間においては、被告の負担とし、原告全逓信労働組合宮崎県北部支部との間においては、訴訟
費用を二分し、その一を同原告の、その余を被告の負担とし、参加人国の参加によって生じた費用は二分し、その一を参加人国
の、その余を原告全逓信労働組合宮崎県北部支部の負担とし、参加人全逓信労働組合宮崎県北部支部の参加によって生じた費用
は、原告国の負担とする。 |
判決の要旨 |
3020 組合活動への制約
郵便局長が、当該郵便局職員以外の者の局舎内への入構を禁止した措置は、その必要性を是認できず、その結果組合役員らの組
合事務所の使用を妨害したことは、労働組合の運営に対する支配介入として不当労働行為を構成する。
5007 謝罪・陳謝・誓約文の手交・掲示
6353 抽象的不作為命令、条件付き救済命令
労働組合が不当労働行為の原因となった行為につき遺憾の意を表する文書を使用者に交付することを停止条件とする救済命令
は、労働者に一定の不利益行為を命じたと同様の結果となり、労働委員会の権限を越脱し、かつ救済命令の目的に背馳し、違法で
ある。
2213 交渉人数
2245 引き延ばし
6343 団体交渉拒否に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
郵便局長が、打合せ中であったこと及び外部組合員が多数動員されていることを理由として団体交渉の申入れを拒否したこと
は、正当な理由と認めることはできず、不当労働行為を構成する。
3100 スパイ
組合委員長に同行し、事務室からの退去を要求するとともに、その行動についてメモをとる尾行は、職場秩序維持のためやむな
くとられた行為であり、組合運営に対する支配介入とならない。
3100 スパイ
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
組合書記長の入局を阻止するために必要がなかったにもかかわらず尾行し、組合の連絡場所を発見したのは、組合役員の行動に
対する干渉妨害であり、不当労働行為を構成する。
3100 スパイ
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
郵便局長らが、公道上で休憩時間中に開催された組合集会を監視し、その状況を記録し、組合員からの再三の退去要求に応じな
かったことは、組合員の意思決定や発言に重要な影響を及ぼすことになるから、組合運営に対する支配介入となる。
1300 転勤・配転
組合役員の配置転換等は、多数の組合役員が一挙に異動させられたというだけで、他の職員と比較するなど、当該処分が不利益
処分であるとの具体的な根拠が明示されておらず、不利益処分とは認められない。
2620 反組合的言動
使用者の発言が不当労働行為となるかどうかは、その発言がなされた時期、場所、相手方等を総合して、組合の運営に対して支
配力を及ぼしたかどうかによって決すべきである。郵便局長の組合支部長に対する発言は、誹謗する意図があったとは考えられ
ず、ことの成り行きからのやりとりに過ぎないものであり、組合運営に対する支配介入になるとは認められない。
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業種・規模 |
分類不能の産業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
ジュリスト昭和43年度重要判例解説 岸井貞夫
172頁
労働判例 46年11月1日 134号 6頁
労働関係民事裁判例集 19巻5号 1197
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