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自然毒のリスクプロファイル:クサウラベニタケ(Entoloma rhodopolium ) イッポンシメジ科イッポンシメジ属

クサウラベニタケ(Entoloma rhodopolium ) イッポンシメジ科イッポンシメジ属

特徴 地方名

めじんなかせ (岩手,青森県),にたり(埼玉県,前橋市), あぶらいっぽん(前橋市),ささしめじ(金沢市),にせしめじ(秋田,青森地方),うすすみ,さくらっこ,どくよもだけ,どくしめじ(秋田県), いっぽんしめじ(岩手,新潟,富山,長野県)と呼ばれることあり

傘の大きさ 3 10 cm程度で比較的小型〜中型 
形と色 

傘 :灰色〜黄土色(赤みを帯びるものもある),茶色のものもある。

   乾燥時は絹のような光沢があり,湿潤時は濡れたような色, ムラがあり,粘性がある。

ひだ:白色から成熟すると肉色になる。

柄 :柄にも絹のような光沢がある。比較的、細い。縦スジがある。

   中空でもろく指でつまむと容易につぶれるものが多いが中実のものもある。 
発生時期   夏〜秋
発生場所   広葉樹の地上に発生する。
その他 

粉臭さやガス臭さがあるが, 苦みはない

地方名:アシボソシメジ(埼玉),ウススミ(秋田),サクラッコ(秋田),ニタリ(大分),メイジンナカセ 
間違いやすい食用キノコ  ウラベニホテイシメジ (食用でかじると 苦い ので,クサウラベニタケと区別できる),ホンシメジ,ハタケシメジ  
症状   嘔吐,下痢,腹痛などの胃腸などの消化器系中毒を起こす。発汗などムスカリン中毒の症状も現れる。
毒性成分   溶血性タンパク,コリン,ムスカリン,ムスカリジンなど

 

   

傘は黄土色 ひだ,白色に近いもの(上)。

ひだは白色から肉色まで成熟とともに変化し,柄は細く華奢なものが多い。

成熟したもので,傘が茶色で,ひだは肉色のもの(上)。

右の写真はひだが黄土色もの


傘は,灰色で傘の中心から放射上にシミのあるもの(左),黄土色(左から
2 番目),

やや大型の黄土色で傘の周囲が波打って上に反っている(左から 3 番目),茶色(右)

のタイプなどがある。


は,細くて中空のものからやや太めでぎっしり詰まった中実のものまでさまざまである。

(写真のキノコは,採取後に凍結乾燥してを縦に割ったものである。)


よく似ている食用きのこ(1)

ウラベニホテイシメジ は傘に親指で押したような跡がある(中央)が,幼菌で傘が開く前のもの(左)や右の写真ではそのような跡は見られない。右は,傘に白いかすり模様が見える。はクサウラベニタケ比較すると太くしっかりしている。



よく似ている食用きのこ(2) 他には,カクミノシメジ(左),ハタケシメジ(),シメジモドキ()

 1

(1)毒性成分
ムスカリン、ムスカリジン、コリン(=悪心、嘔吐)

特定の蛋白質 ( 分子量 4 万、水溶性 )  (=溶血活性も持ち合わ せている)


 

おびただしい発汗や頭痛,腹痛を発症するが,数時間でおさまる。

まれに,死に至ることもある。 ベニテングタケの項を参照

 

(2)食中毒の型 胃腸系、神経系 

(3) 中毒症状 腹痛、嘔気、嘔吐、下痢など。 また、ムスカリン類を含むことから、神経系のムスカリン中毒の症状もあらわれる。ひどい場合は死亡する。

 

(4)発症時間 摂食後 10 分〜数時間後 
(1)発症事例*1
 
( 症例 1)

平成元年 (1989 ) 大阪府交野市の夫婦が幼菌のクサウラベニタケをハタケシメジと間違えて採った。翌朝、傘径約 3cm の幼菌 2 本を豆腐と一緒に澄まし汁にいれ、夫が 1 本の 4 分の 1 、妻が 4 分の 3 を摂食。大変美味しかったので、残り 1 本は昼食用に残した。妻は摂食 4 時間後、胸のむかつき、腹痛、下痢を発症、水を飲み何度も吐き出した。昼ごろには、手のひらが軽く痺れ、頭がボーっとし、目を閉じても赤いきのこが見える感じがしたが、夕方には落ち着いた。その後 6 日間、市販の胃腸薬を服用。夫も下痢をしたが、夕方には回復している。

( 症例 2  集団食中毒例 )

正規の流通経路に乗り、販売されていたきのこを購入した飲食店が、客にクサウラベニタケと知らずに調理したところ、 14 人が発症した。毒キノコ摂食後 1 時間以内に全員が頻回の嘔気、嘔吐、激しい下痢などの消化器症状を発症。発熱、自律神経症状はなく、白血球の軽度増加意外に異常を認めなかった。補液、止痢剤などの対症療法により、翌日には症状軽快、治癒となった。

  ( その他 )

平成 19 10 21 日に,松本市で開催された「市場まつり」で購入したキノコを摂取した6名全員が、嘔吐、下痢の症状を示した。

平成 16 10 17 日,八王子市高尾山で採取した 3 種類のキノコのうち,ホンシメジと自身で判断したものを炒め物にして 3 名で摂取したところ, 30 分後から全員が嘔吐,下痢の症状 示し,入院した.

平成 21 9 15 日に,山形県尾花沢市内の山中で採取したキノコを、 17 日の夕方6〜7時頃にキノコ汁にして摂取したところ、午後8時頃から嘔吐,下痢の激しい中毒症状を示した。

クサウラベニタケはツキヨタケに次いで、最も誤食の多いきのこである。摂食後の症状は、副食にした食品の種類の違い、摂食量、年齢差、体調などの個人差により、軽症から重症な下痢、嘔気、嘔吐、腹痛などがみられる。 医療機関に受診し治療を受けた者と受けていない者とでは諸症状の回復期間に有意差を認めるため、できるだけ早く治療を受けるべきである

(2)患者数
※厚生労働省発表

クサウラベニタケ

/ 年度

発生件数

摂食者総数

患者数

死者数

2015

6

20

20

0

2014

0

0

0

0

2013

0

0

0

0

2012

7

21

18

0

2011

1

2

2

0

2010

17

95

59

0

2009

2

13

11

0

2008

6

25

22

0

2007

7

26

25

0

2006

6

15

15

0

2005

5

17

13

0

2004

16

42

41

0

2003

4

71

48

0

2002

8

25

24

0

2001

2

8

8

0

2000

3

10

8

0


(参考)
イッポンシメジとして中毒事例数を記すが、イッポンシメジ (E. sinuatum) は日本では生育していないと考えられており、この事例の多くはクサウラベニタケと考えられる。

イッポンシメジ

/ 年度

発生件数

摂食者総数

患者数

死者数

2015

1

2

2

0

2014

0

0

0

0

2013

0

0

0

0

2012

0

0

0

0

2011

1

1

1

0

2010

2

7

7

0

2009

0

0

0

0

2008

1

4

4

0

2007

1

5

5

0

2006

0

0

0

0

2005

0

0

0

0

2004

1

5

4

0

2003

0

0

0

0

2002

0

0

0

0

2001

0

0

0

0

2000

1

4

4

0

(3)中毒対策  クサウラベニタケはツキヨタケに次いで、最も誤食の多いきのこである。摂食後の症状は、副食にした食品の種類の違い、摂食量、年齢差、体調などの個人差により、軽症から重症な下痢、嘔気、嘔吐、腹痛などがみられる。
医療機関に受診し治療を受けた者と受けていない者とでは諸症状の回復期間に有意差を認めるため、できるだけ早く治療を受けるべきである。
(1)毒性成分の分析法1 (*3)
(1)諸外国での状況 

(1)その他の参考になる情報  *3  

毒をもつクサウラベニタケには苦味は無いが、食用のウラベニホテイシメジは苦味がある。 
<クサウラベニタケの呈色反応>

・硫酸バニリン反応

蒸留水 3ml に濃硫酸 8ml を加え、バニリン 1g を溶解させ、試薬を調整。

食用のウラベニホテイシメジは赤紫色になるが、有毒のクサウラベニタケは変色しない。
間違いやすいキノコ 
一般名 

ウラベニホテイシメジ

学名  Entoloma sarcopum
発生場所 一般にコナラ、クヌギ、アカマツの混ざった林の地上に発生する大型のキノコ 最も間違えやすいキノコの代表である。
発生時期  一般的には秋 
形態 

傘:絹状繊維模様を認め、それが途切れたところに指で押したような後が付いているときがある。表面には白っぽいカスリ模様がある。

ヒダ:はじめはクリーム色から白色(胞子が成熟すると)淡紅色 ( ピンク色 ) になる。

柄:中実で固くしまっている。指でつまんでも容易にはつぶれない。 

味:苦い 
一般名  ホンシメジ 
学名 

Lyphyllum shimeji (Kawam.) Hongo

Lophyllum aggregatum (Secr.) K ü hner

Tricholoma shimeji Kamam  
発生場所   松林や雑木林に群生する ( コナラ、アカマツなどの地上に群生する )
発生時期   
形態  傘:表面の色は暗灰褐色から淡灰褐色、白色のカスリ模様がつく。 はじめは暗色であるが、成熟するにつれて淡色になる。

ヒダ:成熟しても白色から淡クリーム色

柄:基部が徳利状に膨らむ(中には上下同大のものもある)
一般名  ハタケシメジ 
学名  Lyophyllum decastes Fr.:Fr Sing  
発生場所 

木のない道端でも生える ため、ハタケシメジと呼ばれている

林内、庭園、畑地、道端などに多数が群がって発生する 
発生時期  ( 梅雨時 ) 
形態 

傘:饅頭型からほとんど平らに開き、のちに中央部がくぼむことがある。 表面は暗オリーブ褐色〜灰褐色、老成すればやや淡色となり、縁部は下方に巻く。表面には白いカスリ模様があることが多い

柄:上下同大、または下方が膨らみ、わずかに帯白色。上部は粉状 
引用文献・参考  1)

編著者・奥沢康正、久世幸吾、奥沢淳治 「毒きのこ今昔−中毒症例を中心にして−」(株)思文閣出版

 

2)

編著者・水野卓、川合正允 「キノコの化学・生化学」(株)学会出版センター

 

3)

クサウラベニタケの毒性成分の研究 ( 1 ) 生物活性と毒性成分の探索

鈴木 久美子,采 輝昭,藤本 治宏 ,山崎 幹夫

薬学雑誌, 107 巻, 971-977 (1987).

 

鈴木 久美子 ,采 輝昭 ,山崎 幹夫

クサウラベニタケの毒性成分の研究 ( 2 ) : 溶血素の精製と溶血条件の検討

薬学雑誌, 108 巻, 221-225 (1988).

 

4)その他の参考資料

山形県衛生研究所発行 「毒に注意 山菜とキノコ」 (写真:郡山女子大学  広井 勝)

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