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平成26年度食品からのダイオキシン類一日摂取量調査等の調査結果について

 

   

平成27年10月5日

医薬・生活衛生局  生活衛生・食品安全部

道野  監視安全課長

担当:塩川・菅原(4241・4242)

 

 

 

 

平成26年度食品からのダイオキシン類一日摂取量調査等の調査結果について

 

 我が国の平均的な食生活における食品からのダイオキシン類の摂取量の推計や個別食品における汚染実態を把握するため、従来より、国立医薬品食品衛生研究所を中心に調査を行い、その結果を公表してきたところです。今般、平成26年度の調査結果が取りまとめられましたので、お知らせします。

 平成26年度における食品からのダイオキシン類の一日摂取量は、 0.69 pg TEQ/kg bw/ 0.26 ~2.02 pg TEQ/kg bw/ 日)と推定され、日本における耐容一日摂取量(TDI 4 pg TEQ/kg bw/日より低いものでした。また、一部の食品を過度に摂取するのではなく、バランスの取れた食生活が重要であることが示唆されました。
 なお、本調査結果については、平成27年9月29日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会において報告されています。
 

 本調査は、厚生労働科学研究( 食品の安心・安全確保推進研究事業) 食品を介したダイオキシン類等有害物質摂取量の評価とその手法開発に関する研究」(研究代表者:渡邉敬浩 国立医薬品食品衛生研究所 食品部第三室長)により実施されたものです。

 

 

平成26年度食品を介したダイオキシン類等有害物質摂取量の評価とその手法開発に関する研究(概要)

1 目的

 

 ダイオキシン類は焼却炉や産業廃棄物の野焼き等で生成されたり、過去に使用されたポリ塩化ビフェニル等に由来するものであったりすることが知られている。ダイオキシン類は土壌や海底の泥等に蓄積され、動物体内では脂肪に蓄積しやすく排泄されにくいこと、また急性毒性の他に発がん性、催奇形性、免疫毒性の疑いがあり、内分泌攪乱作用により生殖障害を起こすおそれもあるなど、人体への影響が懸念されている。
 本調査においては、平均的な食生活における食品からのダイオキシン類の摂取量を推定するとともに、ダイオキシン類の摂取の寄与が大きい個別食品等のダイオキシン類の汚染実態を把握する。

 

2 方法

(1) ダイオキシン類一日摂取量調査 (トータルダイエットスタディ)

 

 全国7地域8機関で、購入した食品を平成2022年度国民健康・栄養調査の地域別食品摂取量(1歳以上)を踏まえて調製を行い、13群に大別して、混合し均一化したもの及び飲料水(合計14食品群)注1を試料として ダイオキシン類注2を分析し、国民の平均的な食生活におけるダイオキシン類の一日摂取量注3を算出した。

 

(2) 個別食品等のダイオキシン類の汚染実態調査

    国内で流通していた個別食品について、(1)と同様にダイオキシン類を分析した。

3 結果の概要

(1) ダイオキシン類一日摂取量調査 (トータルダイエットスタディ)

 

 食品からのダイオキシン類の国民平均一日摂取量は、0.69 pg TEQ/kg bw/日(0.26~2.02 pg TEQ/kg bw/) 注4と推定され、平成26年度の結果は前年度よりやや高い値であった。摂取量推定値の最大値(2.02 pg TEQ/kg bw/日)の場合でも、日本における耐容一日摂取量(TDI4 pg TEQ/kg bw/日)より低く、その半分程度であった。

 


<図 ダイオキシン類一日摂取量の全国平均年次推移>

 

(2) 個別食品等のダイオキシン類の汚染実態調査

 

 魚介類(30試料)及び魚油を使用した健康食品(10試料)並びに調製粉乳(26試料)を調査した結果、 それぞれ0.0001626 pg TEQ/g(中央値0.19 pg TEQ/g)、05.6 pg TEQ/g(中央値0.00024 pg TEQ/g)、0.000160.048 pg TEQ/g(中央値0.0013 pg TEQ/g)であった。

 魚介類のうち最大値が検出された試料はマグロで、脂肪含量が48.4%と高い部位であったことが、ダイオキシン類濃度が高くなった要因の一つと考えられる。

  また、魚油を使用した健康食品のうち最大値が検出された試料について、製品に記載されている最大摂取量に基づきダイオキシン類摂取量を推定したところ、0.32 pg TEQ/kg bw/注5となり、TDI8.0%に相当した。

 以上より、ダイオキシン摂取量は経年的に減少傾向にあるが、一部の魚介類等からは依然として比較的高い濃度が検出されており、今後も調査を継続し動向を見守る必要があると考えられる。

 
1 平成26年度個別食品中のダイオキシン類の濃度>

食品

試料数

ダイオキシン類濃度(pg TEQ/g

平均値

中央値

最小値~最大値

魚介類

アジ

5

0.39

0.29

0.25 0.83

イカ

5

0.053

0.041

0.00016 0.11

カレイ

5

0.35

0.24

0.091 0.74

サケ

5

0.35

0.38

0.035 0.70

サンマ

5

0.17

0.18

0.13 0.19

マグロ

5

6.1

1.2

0.025 26

魚油を使用した健康食品

10

0.72

0.00024

0 5.6

調製粉乳

26

0.0083

0.0013

0.00016 0.048

 

注1 ダイオキシン類摂取量への寄与が大きい食品群(10群(魚介類)及び11群(肉類、卵類))について3セットずつ試料を調製し、それ以外の群は1セットの試料を調製。

注2 世界保健機構(WHO)により毒性等価係数が定められているポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDDs)7種、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)10種及びコプラナーPCBs (Co-PCBs)12種の合計29種。

注3 算出にあたり、毒性等価係数は WHO 2005 TEF を使用。

注4 日本人の平均体重を50 kgと仮定して換算。
注5 日本人の平均体重を50 kgと仮定して換算。


 

 

【用語説明】

 

・ダイオキシン類:

ダイオキシン及びコプラナーPCB

 

・ダイオキシン:

ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(Polychlorinated dibenzo- p -dioxinsPCDDs

ポリ塩化ジベンゾフラン(Polychlorinated dibenzofuransPCDFs

 

・コプラナーPCBCoplanar polychlorinated biphenylsCo-PCBs):

PCDDs 及びPCDFsと類似した生理作用を示す一群のポリ塩化ビフェニル(PCB)類

 

・トータルダイエットスタディ:

人が通常の食生活において、食品を介して化学物質等の特定の物質がどの程度実際に摂取されるかを把握するための調査方法。トータルダイエットスタディには、「マーケットバスケット方式」と「陰膳方式」の2種類あり、本調査では「マーケットバスケット方式」を採用している。

 

・マーケットバスケット方式 

広範囲の食品を小売店等で購入し、必要に応じて摂食する状態に加工・調理した後に分析し、食品群ごとの 化学物質等の特定の物質 の平均含有濃度を算出する。これに、特定の集団(例えばすべての日本人)におけるこの食品群の平均的な消費量を乗じることにより、食品群ごとに 特定の物質 の平均的な摂取量を推定する。この結果を全食品群について足し合わせることにより、この集団の 特定の物質 の平均的な摂取量を推定する。

 

TEFToxic Equivalency Factor/毒性等価係数):

ダイオキシン類は異性体により毒性の強さがそれぞれ異なっており、ダイオキシン類として全体の毒性を評価するためには、合計した影響を考えるための手段が必要であることから、最も毒性が強い2,3,7,8-TeCDDの毒性を1として他のダイオキシン類の毒性の強さを換算するための係数のこと。なお、今回は2005年にWHOで再評価されたTEFを用いている。

 

TEQ Toxic Equivalent 毒性等量):

ダイオキシン類は通常、毒性強度が異なる異性体の混合物として環境中に存在するので、摂取したダイオキシン類の量は、各異性体の量にそれぞれのTEFを乗じた値を総和した毒性等量として表す。

 

TDITolerable Daily Intake/耐容一日摂取量):

長期にわたり体内に取り込むことにより健康影響が懸念される化学物質について、その量まではヒトが一生涯にわたり摂取しても健康に対する有害な影響が現れないと判断される一日当たりの摂取量。

ダイオキシン類のTDIについては、19996月に厚生省及び環境庁の専門家委員会で、当面4 pg TEQ/kg bw/日(1日、体重1 kg当たり、4 pg TEQの意味。体重50 kgの人であれば、4 pg TEQ×50 kgで計算し、TDI200 pg TEQとなる。)とされている。

 

 

平成26年度厚生労働科学研究補助金 食品の安全確保推進研究事業

 

食品を介したダイオキシン類等有害物質摂取量の評価と

塩素化ダイオキシン類のトータルダイエット調査

                                        研究代表者     渡邉敬浩        国立医薬品食品衛生研究所食品部

                                        研究分担者     堤 智昭          国立医薬品食品衛生研究所食品部
 

研究要旨

マーケットバスケット方式によるトータルダイエット( TD )試料を用いて、ダイオキシン類 (PCDD/PCDFs 及び Co-PCBs) の国民平均一日摂取量を求めた。国民健康・栄養調査による地域別の国民平均食品摂取量に基づいて食品を購入し、飲料水を含め 14 群から成る TD 試料を全国 7 地区 8 機関で調製した。ダイオキシン類濃度が高い食品を含む第 10 群(魚介類)及び 11 群(肉・卵類)については、各機関がそれぞれ各 3 セットの試料を調製し、その他の食品群は各 1 セットの試料を調製した。 10 及び 11 群については試料毎にダイオキシン類を分析し、その他の群は全地区の試料を混合して分析し、ダイオキシン類の一日摂取量を求めた。その結果、ダイオキシン類の国民平均一日摂取量は 0.69 (範囲: 0.26 2.02 pg TEQ/kg bw/day と推定された。 10 群(魚介類)からのダイオキシン類摂取が全体の約 9 割を占めていた。摂取量推定値の平均は、日本の耐容一日摂取量( 4 pg TEQ/kg bw/day )の約 17% であった。摂取量推定値の最大は 2.02 pg TEQ/kg bw/day であり、平均値の約 2.9 倍となり耐容一日摂取量の半分程度に相当した。同一機関であっても推定される摂取量に 1.2 7.6 倍の開きがあり、 10 群に含まれている魚介類のダイオキシン類濃度が大きな影響を与えた。

 

 

食品からの塩素化ダイオキシン類の摂取量調査に関する研究

 

食品からの塩素化ダイオキシン類の摂取量調査に関する研究
個別食品中の塩素化ダイオキシン類の実態調査

                                        研究代表者     渡邉敬浩        国立医薬品食品衛生研究所食品部

                                        研究分担者     堤 智昭          国立医薬品食品衛生研究所食品部

研究要旨

魚介類及び魚油を使用した健康食品、並びに調製粉乳について、ダイオキシン類濃度の調査を行った。魚介類 30 試料(アジ、イカ、カレイ、サケ、サンマ、マグロについて各 5 試料)を調査した結果、ダイオキシン類濃度は 0.00016 26 pg TEQ/g( 中央値 0.19 pg TEQ/g) の範囲であった。健康食品 10 試料(鮫肝油加工食品 2 試料、精製魚油加工食品 8 試料)を調査した結果、ダイオキシン類濃度は 0 5.6 pg TEQ/g( 中央値 0.00024 pg TEQ/g) の範囲であった。ダイオキシン類濃度の最も高かった健康食品から摂取するダイオキシン類の TDI に占める割合は最大で約 8.0% であった。また、調製粉乳( 26 試料)を調査した結果、ダイオキシン類濃度は 0.00016 0.048 pg TEQ/g (中央値 0.0013 pg TEQ/g )の範囲であった。ダイオキシン類濃度の最も高かった調製粉乳から摂取するダイオキシン類の TDI に占める割合は最大で 15% 程度であった。

モンテカルロシミュレーションにより推定した、魚介類からのダイオキシン類摂取量( ND=0 )の平均値は、全年齢層( 1 歳以上)が 1.2 pg TEQ/kg/day 、幼児 1 1-3 歳)が 1.9 pg TEQ/kg/day 、幼児 2 4-6 歳)が 1.5 pg TEQ/kg/day 、学童( 7-12 歳)が 1.4 pg TEQ/kg/day 、中学・高校生( 13-18 歳)が 0.92 pg TEQ/kg/day 、成人( 19-64 歳)が 0.89 pg TEQ/kg/day 、高齢者( 65 歳以上)が 1.2 pg TEQ/kg/day であった。平均値は幼児 1 が最も大きく、年齢の上昇と共に低下して中学・高校生および成人で最も小さくなり、高齢者でやや増加した。また、摂取量の 90 tile 値及び 95 tile 値についても平均値と同様に、幼児 1 が最も大きく、年齢の上昇と共に低下して中学・高校生及び成人で最も小さくなり、高齢者でやや増加した。

 

 

 

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