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研究活動の不正行為への対応に関する指針について

平成19年4月19日

科 発 第0419003号厚生科学課長   決定
医政病発第0419001号国立病院課長  

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1 本指針の目的

平成18年2月28日、総合科学技術会議において「研究上の不正に関する適切な対応について」が決定された。当該決定では、研究費の提供を行う府省及び資金配分機関は、不正が明らかになった場合の研究費の取扱いについてあらかじめ明確にすること及び研究費の配分先となる研究機関に対し、研究上の不正行為に関する規定の整備等の所要の措置を講ずるよう求めることが必要とされている。

本指針は、このような背景を受けて競争的資金等に係る研究活動の不正行為に、厚生労働省本省並びに厚生労働省所管の独立行政法人、国立試験研究機関及び国立高度専門医療センター等の資金配分機関、研究機関が適切に対応するため、それぞれの機関が整備すべき事項等について指針を示すものである。各機関においては、本指針に沿って、研究活動の不正行為に対応する適切な仕組みを整えることが求められる。また、各競争的資金等を所管する課及び厚生労働省所管の国立試験研究機関、国立高度専門医療センター及び独立行政法人においては本指針を実効あるものとするため、競争的資金等の公募要項や取扱規程、委託契約書等に本指針の内容を反映させることとする。

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2 研究活動の不正行為等の定義

  1. 1対象となる不正行為
    本指針の対象となる研究活動は、厚生労働省が所管する競争的資金並びに国立高度専門医療センターが所管する委託費及び助成金を活用した研究活動であり、本指針の対象となる不正行為は、論文作成及び結果報告におけるデータ、情報、調査結果等の捏造、改ざん及び盗用に限られる。なお、根拠が示されて故意によるものではないと明らかにされたものは不正行為には当たらない。
    1. (1)捏造
      存在しないデータ、研究結果等を作成すること。
    2. (2)改ざん
      研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。
    3. (3)盗用
      他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研究者の了解もしくは適切な表示なく流用すること。
  2. 2対象となる競争的資金等
    本指針における「競争的資金等」とは、「資金配分主体が、広く研究開発課題等を募り、提案された課題の中から、専門家を含む複数の者による、科学的・技術的な観点を中心とした評価に基づいて実施すべき課題を採択し、研究者等に配分する研究開発資金」として、内閣府において「競争的資金」と整理されている研究資金のうち厚生労働省所管のもの及びそれに類似する競争的要素を有するものであり、当面以下に掲げるものとする。これに変更があった場合には、その都度明示するものとする。
    1. [1]厚生労働省において競争的資金の範疇に数え上げられているもの、すなわち、厚生労働科学研究費補助金及び独立行政法人医薬基盤研究所所管の保健医療分野における基礎研究推進事業。
    2. [2]その他、課題採択過程において競争的な要素を有するもの、すなわち、国立高度専門医療センター所管の委託費及び助成金。
  3. 3対象となる研究者及び研究機関
    本指針の対象となる研究者は、上述の競争的資金等の配分を受けて研究活動を行っている研究者である。また、本指針の対象となる研究機関は、それらの研究者が所属する機関、又は対象となる競争的資金等を受けている機関であり、厚生労働省の施設等機関、地方公共団体の附属試験研究機関、学校教育法に基づく大学及び同附属試験研究機関、民間の研究所(民間企業の研究部門を含む。)、研究を主な事業目的としている民法第34条の規定に基づき設立された公益法人等、研究を主な事業目的としている独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条の規定に基づき設立された独立行政法人等が該当し、これらを本指針では単に「研究機関」という。
  4. 4対象となる資金配分機関
    本指針の対象となる資金配分機関は、厚生労働省本省、国立医薬品食品衛生研究所、国立保健医療科学院、国立がんセンター、国立循環器病センター、国立精神・神経センター、国立国際医療センター、国立成育医療センター、国立長寿医療センター及び独立行政法人医薬基盤研究所であり、これらを本指針では、単に「資金配分機関」という。

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3 告発等の受付

  1. 1告発等の受付体制
    1. [1]研究機関及び資金配分機関(以下III及びIVにおいて「研究機関等」という。)は、研究活動の不正行為に関する告発等を受け付ける窓口(以下「受付窓口」という。)を各々設置するものとする。なお、このことは必ずしも新たに部署を設けることを意味しない。
    2. [2]研究機関等は、設置する受付窓口について、その名称、場所、連絡先、受付の方法などを定め、機関内外に周知する。
    3. [3]研究機関等は、告発者が告発の方法を書面、電話、FAX、電子メール、面談など自由に選択できるように受付窓口の体制を整える。
    4. [4]研究機関等は、告発等の受付や調査・事実確認(以下単に「調査」という。)を担当する者が自己との利害関係を持つ事案に関与しないよう取り計らうものとする。
    5. [5]告発等の受付から調査に至る体制について、研究機関等はその責任者として例えば理事、副学長等適切な地位にある者を指定し、必要な組織を構築して企画・整備・運営する。また、これらに係る内部規程を定め、公表する。
  2. 2告発等の取扱い
    1. [1]告発は、書面、電話、FAX、電子メール、面談などにより、研究機関等の受付窓口に直接行われるべきものとする。
    2. [2]原則として、告発は、顕名により行われ、不正行為を行ったとする研究者・グループ、不正行為の態様等、事案の内容が明示され、かつ不正とする科学的合理的理由が示されているもののみを受け付ける。
    3. [3][2]にかかわらず、匿名による告発があった場合、研究機関等は告発の内容に応じ、顕名の告発があった場合に準じた取扱いをすることができる。
    4. [4]告発を受けた研究機関等が調査を行う研究機関等に該当しないときは、IV1により調査を行う研究機関等に当該告発を回付する。回付された研究機関等は当該機関に告発があったものとして当該告発を取り扱う。また、IV1により、告発があった研究機関等に加え、他にも調査を行う研究機関等が想定される場合は、告発を受けた研究機関等は該当する機関に当該告発について通知する。
    5. [5]郵送等による書面での告発など、受付窓口が受け付けたか否かを告発者が知りえない方法による告発がなされた場合は、研究機関等は告発者(匿名の告発者を除く。ただし、調査結果が出る前に告発者の氏名が判明した場合は、以後、顕名による告発者として取り扱う。以下同じ。)に受け付けたことを通知する。
    6. [6]報道や学会等の研究者コミュニティにより不正行為の疑いが指摘された場合は、不正行為を指摘された者が所属する研究機関に匿名の告発があった場合に準じて取り扱うものとする。
    7. [7]告発の意思を明示しない相談については、相談を受けた機関はその内容に応じ、告発に準じてその内容を確認・精査し、相当の理由があると認めた場合は、相談者に対して告発の意思があるか否か確認するものとする。これに対して告発の意思表示がなされない場合にも、当該研究機関等の判断で当該事案の調査を開始することができる。
    8. [8]不正行為が行われようとしている、あるいは不正行為を求められているという告発・相談については、当該告発・相談を受けた研究機関等はその内容を確認・精査し、相当の理由があると認めたときは、被告発者に警告を行うものとする。ただし、当該告発・相談を受けた研究機関等が、被告発者の所属する機関でないときは、当該研究機関等は被告発者の所属する機関に事案を回付することができる。被告発者の所属する機関でない研究機関等が警告を行った場合は、当該研究機関等は被告発者の所属する機関に警告の内容等について通知する。
  3. 3告発者・被告発者の取扱い
    1. [1]告発を受け付ける場合、個室で面談したり、電話や電子メールなどを窓口の担当職員以外は見聞できないようにしたりするなど、告発内容や告発者(前記2[7]及び2[8]における相談者を含む。以下、3において同じ。)の秘密を守るため適切な方法を講じなければならない。
    2. [2]研究機関等は、受付窓口に寄せられた告発の告発者、被告発者、告発内容及び調査内容について、調査結果の公表まで、告発者及び被告発者の意に反して調査関係者以外に漏洩しないよう、関係者の秘密保持を徹底する。
    3. [3]調査事案が漏洩した場合、研究機関等は調査中かどうかにかかわらず必要に応じて調査事案について公に説明することができる。
    4. [4]研究機関等は、悪意(被告発者を陥れるため、あるいは被告発者が行う研究を妨害するためなど、専ら被告発者に何らかの損害を与えることや被告発者が所属する機関・組織等に不利益を与えることを目的とする意思をいう。以下同じ。)に基づく告発を防止するため、告発は原則として顕名によるもののみ受け付けることや、告発には不正とする科学的合理的理由を示すことが必要であること、告発者に調査に協力を求める場合があること、調査の結果、悪意に基づく告発であったことが判明した場合は、氏名の公表や機関の内部規定に基づく処分等がありうることなどを所属する研究者にあらかじめ周知する。
    5. [5]研究機関等は、悪意に基づく告発であることが判明しない限り、単に告発したことを理由に告発者に対し、解雇や配置転換、懲戒処分、降格、減給等を行ってはならない。
    6. [6]研究機関等は、相当な理由なしに、単に告発がなされたことのみをもって、被告発者の研究活動を全面的に禁止したり、解雇や配置転換、懲戒処分、降格、減給等を行ったりしてはならない。

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4 告発等に係る事案の調査

  1. 1調査を行う機関
    1. [1]研究機関に所属する(どの研究機関にも所属していないが専ら特定の研究機関の施設・設備を使用して研究する場合を含む。以下同じ。)研究者に係る研究活動の不正行為の告発があった場合、原則として、当該研究機関が告発された事案の調査を行う。
    2. [2]被告発者が複数の研究機関に所属する場合、原則として被告発者が告発された事案に係る研究を主に行っていた研究機関を中心に、所属する複数の機関が合同で調査を行うものとする。ただし、中心となる機関や調査に参加する機関については、関係機関間において、事案の内容等を考慮して別の定めをすることができる。
    3. [3]被告発者が所属する研究機関と異なる研究機関で行った研究に係る告発があった場合、所属する研究機関と研究が行われた研究機関とが合同で、告発された事案の調査を行う。
    4. [4]被告発者が、告発された事案に係る研究を行っていた際に所属していた研究機関を既に離職している場合、現に所属する研究機関が、離職した研究機関と合同で、告発された事案の調査を行う。被告発者が離職後、どの研究機関にも所属していないときは、告発された事案に係る研究を行っていた際に所属していた研究機関が、告発された事案の調査を行う。
    5. [5]上記[1]から[4]によって、告発された事案の調査を行うこととなった研究機関は、被告発者が当該研究機関に現に所属しているかどうかにかかわらず、誠実に調査を行わなければならない。
    6. [6]被告発者が、調査開始のとき及び告発された研究を行っていたときの双方の時点でいかなる研究機関にも所属していなかった場合や、調査を行うべき研究機関による調査の実施が極めて困難であると、告発に係る研究に対する研究費を配分した資金配分機関又は厚生労働省本省が特に認めた場合は、当該研究機関の同意を得て、当該資金配分機関又は厚生労働省本省が調査を行う。この場合、当該研究機関は、当該資金配分機関から協力を求められたときは、誠実に協力しなければならない。
    7. [7]研究機関は、他の研究機関や学協会等の研究者コミュニティに、また、資金配分機関は告発された研究の分野に関連がある研究機関や学協会等の研究者コミュニティに、調査を委託することもしくは調査を実施する上での協力を求めることができる。このとき、III3[1]から[3]及びIVは委託されたもしくは調査に協力する機関等に準用されるものとする。
  2. 2告発等に対する調査体制・方法
    各研究機関等は、調査の具体的な進め方について、この項を参考に、各研究機関等の実情等に応じて適切に定めるものとする。
    1. (1)予備調査
      1. [1]IV1によって調査を行う研究機関等(以下、「調査機関」という。)は、告発を受付けた後速やかに、告発された行為が行われた可能性、告発の際示された科学的合理的理由の論理性、告発された研究の公表から告発までの期間などの告発の合理性、調査可能性等について予備調査を行う。期間の合理性を判断する際には、生データ、実験・観察ノート、実験試料・試薬など研究成果の事後の検証を可能とするものについての各研究分野の特性に応じた合理的な保存期間、あるいは被告発者が所属する研究機関が定める保存期間が、各研究分野の特性に応じた合理的な保存期間あるいは被告発者が所属する研究機関が定める保存期間を超えるか否かなどを配慮するものとする。調査機関は、以下(2)[2]の調査委員会を設置して予備調査に当たらせることができる。
      2. [2]告発等がなされる前に取り下げられた論文等に対する告発等に係る予備調査を行う場合は、取下げに至った経緯・事情を含め、不正行為の問題として調査すべきものか否か調査し、判断するものとする。
      3. [3]調査機関は、予備調査の結果、告発された事案が本格的な調査をすべきものと判断した場合、本調査を行う。調査機関は告発を受け付けた後、概ね30日以内に本調査を行うか否か決定するものとする。
      4. [4]本調査を行わないことを決定した場合、その旨を理由とともに告発者に通知するものとする。この場合、調査機関は予備調査に係る資料等を保存し、資金配分機関や告発者の求めに応じ開示するものとする。
    2. (2)本調査
      1. [1]通知・報告
        • ア)本調査を行うことを決定した場合、調査機関は、告発者及び被告発者に対し、本調査を行うことを通知し、調査への協力を求める。被告発者が調査機関以外の機関に所属している場合は、これに加え当該所属機関にも通知する。告発された事案の調査に当たっては、告発者が了承したときを除き、調査関係者以外の者や被告発者に告発者が特定されないよう周到に配慮する。
        • イ)調査機関が研究機関であるときは、当該調査機関は当該事案に係る研究に配分された競争的資金等の配分機関に本調査を行う旨通知する。当該資金配分機関が厚生労働省本省でないとき(国立試験研究機関及び国立高度専門医療センターが資金配分を行う場合を含む)は、当該資金配分機関は当該通知を厚生労働省本省に報告する。
        • ウ)本調査は、決定後相当の期間(例えば概ね30日)内に開始されるべきものとする。
      2. [2]調査体制
        • ア)調査機関は、本調査を行うに当たっては、当該研究分野の研究者であって当該調査機関に属さない者を含む調査委員会を設置する。この調査委員は告発者及び被告発者と直接の利害関係(例えば、不正行為を指摘された研究が論文のとおりの成果を得ることにより特許や技術移転等に利害があるなど)を有しない者でなければならない。
        • イ)調査機関は、調査委員会を設置したときは、その旨及び調査委員の氏名や所属を告発者及び被告発者に示すとともに、告発者及び被告発者が、調査委員会の委員の構成等についてあらかじめ調査機関が定めた期間内に異議申立てをすることができる旨、告発者及び被告発者に通知する。異議申立てがあった場合、調査機関は内容を審査し、その内容が妥当であると判断したときは、当該異議申立てに係る委員を交代させるとともに、その旨を告発者及び被告発者に通知する。
        • ウ)調査委員会の調査機関内での位置づけについては、調査機関において定める。
      3. [3]調査方法・権限
        • ア)本調査は、指摘された当該研究に係る論文や生データ、実験・観察ノート等の各種資料の精査や、関係者のヒアリング、再実験の要請などにより行われる。なお、調査の実施に際し、被告発者に弁明の機会を与えなければならない。
        • イ)被告発者が調査委員会から再実験などにより再現性を示すことを求められた場合、あるいは自らの意思によりそれを申し出た場合は、その再実験の実施が、調査機関における経費の確保等の問題により困難な場合を除き、原則としてそれに要する期間及び機会(機器、経費等を含む。)が調査機関により保障されなければならない。ただし、被告発者により同じ内容の申し出が繰り返して行われた場合において、それが当該事案の引き延ばしを主な目的とすると調査委員会が判断するときは、当該申し出を認めないことができる。
        • ウ)上記ア、イに関して、調査機関は、調査委員会の調査権限について定め、関係者に周知する。この調査権限に基づく調査委員会の調査に対し、告発者及び被告発者などの関係者は誠実に協力しなければならない。また、調査機関以外の機関において調査がなされる場合、調査機関は当該機関に協力を要請する。協力を要請された機関は誠実に協力しなければならない。
      4. [4]調査の対象となる研究
        調査の対象には、告発等に係る研究のほか、調査委員会の判断により調査に関連した被告発者の他の研究をも含めることができる。
      5. [5]証拠の保全措置
        調査機関は本調査に当たって、告発等に係る研究に関して、証拠となるような資料等を保全する措置をとる。この場合、告発等に係る研究が行われた研究機関が調査機関となっていないときは、当該研究機関は調査機関の要請に応じ、告発等に係る研究に関して、証拠となるような資料等を保全する措置をとる。これらの措置に影響しない範囲内であれば、被告発者の研究活動を制限しない。
      6. [6]調査の中間報告
        調査機関が研究機関であるときは、告発等に係る研究に対する資金を配分した機関の求めに応じ、調査の終了前であっても、調査の中間報告を当該資金配分機関に提出するものとする。また、当該資金配分機関が厚生労働省本省でないとき(国立試験研究機関及び国立高度専門医療センターが資金配分を行う場合を含む)は、当該資金配分機関は当該報告を厚生労働省本省に報告する。
      7. [7]調査における研究または技術上の情報の保護
        調査に当たっては、調査対象における公表前のデータ、論文等の研究または技術上秘密とすべき情報が、調査の遂行上必要な範囲外に漏洩することのないよう十分配慮する。
  3. 3認定
    1. (1)認定
      1. [1]調査委員会は、本調査の開始後、相当の期間(例えば概ね150日)内に調査した内容をまとめ、不正行為が行われたか否か、不正行為と認定された場合はその内容、不正行為に関与した者とその関与の度合、不正行為と認定された研究に係る論文等の各著者の当該論文等及び当該研究における役割を認定する。
      2. [2]不正行為が行われなかったと認定される場合であって、調査を通じて告発が悪意に基づくものであることが判明したときは、調査委員会は、併せてその旨の認定を行うものとする。この認定を行うに当たっては、告発者に弁明の機会を与えなければならない。
      3. [3][1]又は[2]について認定を終了したときは、調査委員会は直ちにその設置者たる調査機関に報告する。
    2. (2)不正行為の疑義に対する説明責任
      1. [1]調査委員会の調査において、被告発者が告発に係る疑惑を晴らそうとする場合には、自己の責任において、当該研究が科学的に適正な方法と手続に則って行われたこと、論文等がそれに基づいて適切な表現で書かれたものであることを、科学的根拠を示して説明しなければならない。そのために再実験等を必要とするときには、その機会が保障される(IV2(2)[3]イ)。
      2. [2][1]の被告発者の説明において、被告発者が生データや実験・観察ノート、実験試料・試薬等の不存在など、本来存在するべき基本的な要素の不足により証拠を示せない場合は不正行為とみなされる。ただし、被告発者が善良な管理者の注意義務を履行していたにもかかわらず、その責によらない理由(例えば災害など)により、上記の基本的な要素を十分に示すことができなくなった場合等正当な理由があると認められる場合はこの限りではない。また、生データや実験・観察ノート、実験試料・試薬等の不存在が、各研究分野の特性に応じた合理的な保存期間や被告発者が所属する、または告発等に係る研究を行っていたときに所属していた研究機関が定める保存期間を超えることによるものである場合についても同様とする。
      3. [3]上記[1]の説明責任の程度及び[2]の本来存在するべき基本的要素については、研究分野の特性に応じ、調査委員会の判断に委ねられる。
    3. (3)不正行為か否かの認定
      調査委員会は、上記(2)[1]により被告発者が行う説明を受けるとともに、調査によって得られた物的・科学的証拠、証言、被告発者の自認等の諸証拠を総合的に判断して、不正行為か否かの認定を行う。証拠の証明力は、調査委員会の判断に委ねられるが、被告発者の研究体制、データチェックの方法など様々な点から故意性を判断することが重要である。なお、被告発者の自認を唯一の証拠として不正行為と認定することはできない。
      被告発者の説明及びその他の証拠によって、不正行為であるとの疑いが覆されないときは、不正行為と認定される。また、被告発者が生データや実験・観察ノート、実験試料・試薬等の不存在など、本来存在するべき基本的な要素の不足により、不正行為であるとの疑いを覆すに足る証拠を示せないとき(上記(2)[2])も同様とする。
    4. (4)調査結果の通知及び報告
      1. [1]調査機関は、調査結果(認定を含む。以下同じ。)を速やかに告発者及び被告発者(被告発者以外で不正行為に関与したと認定された者を含む。以下IVにおいて同じ。)に通知する。被告発者が調査機関以外の機関に所属している場合は、これらに加え当該所属機関に当該調査結果を通知する。
      2. [2]調査機関が研究機関であるときは、当該調査機関は、[1]に加えて当該事案に係る研究に対する競争的資金等の配分機関に当該調査結果を通知する。告発等がなされる前に取り下げられた論文等に係る調査で、不正行為があったと認定されたときは、取下げなど研究者が自ら行った善後措置や、その措置をとるに至った経緯・事情等をこれに付すものとする(上記[1]の後段の場合も同様とする。)。当該資金配分機関が厚生労働省本省でないとき(国立試験研究機関及び国立高度専門医療センターが資金配分を行う場合を含む)、当該資金配分機関は当該調査結果を厚生労働省本省に報告する。
      3. [3]厚生労働省本省以外の資金配分機関が調査したときは、当該資金配分機関は厚生労働省本省に報告する。
      4. [4]悪意に基づく告発との認定があった場合、調査機関は、告発者の所属機関にも通知する。
    5. (5)不服申立て
      1. [1]不正行為と認定された被告発者は、あらかじめ調査機関が定めた期間内に、調査機関に不服申立てをすることができる。ただし、その期間内であっても、同一理由による不服申立てを繰り返すことはできない。
      2. [2]告発が悪意に基づくものと認定された告発者(被告発者の不服申立ての審査の段階で悪意に基づく告発と認定された者を含む。この場合の認定については、上記(1)[2]を準用する。)は、その認定について、[1]の例により不服申立てをすることができる。
      3. [3]不服申立ての審査は調査委員会が行う。ただし、不服申立ての趣旨が、調査委員会の構成等、その公正性に関わるものである場合には、調査機関の判断により、調査委員会に代えて、他の者に審査させることができる。
      4. [4]不正行為があったと認定された場合に係る被告発者による不服申立てについて、調査委員会([3]ただし書きの場合は、調査委員会に代わる者)は、不服申立ての趣旨、理由等を勘案し、当該事案の再調査を行うか否かを速やかに決定する。当該事案の再調査を行うまでもなく、不服申立てを却下すべきものと決定した場合には、直ちに調査機関に報告し、調査機関は被告発者に当該決定を通知する。このとき、当該不服申立てが当該事案の引き延ばしや認定に伴う各措置の先送りを主な目的とすると調査委員会が判断するときは、調査機関は以後の不服申立てを受付けないことができる。
        再調査を行う決定を行った場合には、調査委員会は被告発者に対し、先の調査結果を覆すに足る資料の提出等、当該事案の速やかな解決に向けて、再調査に協力することを求める。その協力が得られない場合には、再調査を行わず、審査を打ち切ることができる。その場合には直ちに調査機関に報告し、調査機関は被告発者に当該決定を通知する。
      5. [5]調査機関は、被告発者から不正行為の認定に係る不服申立てがあったときは、告発者に通知する。調査機関が研究機関であるときは、加えて当該事案に係る研究に対する資金を配分した機関に通知する。不服申立ての却下及び再調査開始の決定をしたときも同様とする。
      6. [6]調査委員会が再調査を開始した場合は、相当の期間(例えば概ね50日)内に、先の調査結果を覆すか否かを決定し、その結果を直ちに調査機関に報告し、調査機関は当該結果を被告発者、被告発者が所属する機関及び告発者に通知する。調査機関が研究機関であるときは、加えて当該事案に係る研究に対する資金を配分した機関に通知する。当該資金配分機関が厚生労働省本省でないとき(国立試験研究機関及び国立高度専門医療センターが資金配分を行う場合を含む)、当該資金配分機関は厚生労働省本省に当該審査結果を報告する。
        調査機関が厚生労働省本省以外の資金配分機関であるときは、その結果を被告発者、被告発者が所属する機関及び告発者に通知し、加えて厚生労働省本省に報告する。
      7. [7]悪意に基づく告発と認定された告発者から不服申立てがあった場合、調査機関は、告発者が所属する機関及び被告発者に通知する。調査機関が研究機関であるときは、加えて当該事案に係る研究に対する資金を配分した機関に通知する。
      8. [8][7]の不服申立てについては、調査委員会([3]ただし書きの場合は、調査委員会に代わる者)は相当の期間(例えば概ね30日)内に再調査を行い、その結果を調査機関に報告するものとする。調査機関は、この審査の結果を告発者、告発者が所属する機関及び被告発者に通知する。
        調査機関が研究機関であるときは、加えて当該事案に係る研究に対する資金を配分した機関に通知する。当該資金配分機関が厚生労働省本省でないとき(国立試験研究機関及び国立高度専門医療センターが資金配分を行う場合を含む)、当該資金配分機関は当該審査結果を厚生労働省本省に報告する。
        調査機関が厚生労働省本省以外の資金配分機関であるときは、その結果を告発者、告発者が所属する機関及び被告発者に通知し、加えて厚生労働省本省に報告する。
    6. (6)調査資料の提出
      資金配分機関は、調査機関に対して事案の調査が継続中であっても、当該事案に係る資料の提出または閲覧を求めることができる。調査機関は、調査に支障がある等、正当な事由がある場合には、これを拒むことができる。資金配分機関は、提出された資料について、下記V及びVIのために使用する他に使用してはならない。
    7. (7)調査結果の公表
      1. [1]調査機関は、不正行為が行われたとの認定があった場合は、速やかに調査結果を公表する。公表する内容には、少なくとも不正行為に関与した者の氏名・所属、不正行為の内容、調査機関が公表時までに行った措置の内容に加え、調査委員の氏名・所属、調査の方法・手順等が含まれるものとする。ただし、告発等がなされる前に取り下げられた論文等において不正行為があったと認定されたときは、不正行為に係る者の氏名・所属を公表しないことができる。
      2. [2]調査機関は、不正行為が行われなかったとの認定があった場合は、原則として調査結果を公表しない。ただし、公表までに調査事案が外部に漏洩していた場合及び論文等に故意によるものでない誤りがあった場合は、調査結果を公表する。公表する場合、その内容には、不正行為は行われなかったこと(論文等に故意によるものでない誤りがあった場合はそのことも含む。)、被告発者の氏名・所属に加え、調査委員の氏名・所属、調査の方法・手順等が含まれる。悪意に基づく告発の認定があったときは、告発者の氏名・所属を併せて公表する。

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5 告発者及び被告発者に対する措置

告発者及び被告発者等に対する、調査中あるいは、認定から資金配分機関による措置等がなされるまでの間などにおいて、研究機関または資金配分機関がとる措置は以下のとおりとする。ただし、不正行為との告発等がなされる前に取り下げた論文等に係る被告発者については、これ以外の措置をとることを妨げない。

  1. 1調査中における一時的措置
    1. (1)研究機関
      被告発者が所属する研究機関は、告発された研究に係る研究費が機関に対して支払われていた場合は、本調査を行うことが決まった後、調査委員会の調査結果の報告を受けるまでの間、告発された研究に係る研究費の支出を停止することができる。また、当該研究機関は、被告発者に対して、告発された研究に係る未使用の研究費を使用しないよう指導する。
    2. (2)資金配分機関
      1. [1]IV2(2)[6]による中間報告を受けた資金配分機関は、本調査の対象となっている被告発者に対し、調査機関からの調査結果の通知を受けるまでの間、当該事案に係る研究費の使用停止を指導することができる。
      2. [2]IV2(2)[6]による中間報告を受けた資金配分機関は、本調査の対象となっている被告発者に対し、調査機関から調査結果の通知を受けるまでの間、被告発者に交付決定した当該研究に係る研究費の交付停止(既に一部交付している場合の未交付分の交付停止を含む。)や、既に別に被告発者から申請されている競争的資金等について、採択の決定、あるいは採択決定後の研究費の交付を保留(一部保留を含む。)することができる。
  2. 2不正行為が行われたと認定された場合の緊急措置等
    1. (1)競争的資金等の使用中止
      不正行為が行われたとの認定があった場合、不正行為に係る研究に資金を配分した競争的資金等の配分機関と、不正行為への関与が認定された者及び関与したとまでは認定されないが、不正行為が認定された論文等の内容について責任を負う者として認定された著者(以下「被認定者」という。)が所属する研究機関は、当該被認定者に対し、直ちに当該競争的資金等の使用中止を命ずるものとする。
    2. (2)研究機関による対処
      研究機関は、所属する被認定者について、内部規程に基づき適切な対処を行うとともに、不正行為と認定された論文等の取下げを勧告するものとする
  3. 3不正行為は行われなかったと認定された場合の措置
    1. [1]不正行為は行われなかったと認定された場合、告発された研究に係る資金を配分した機関及び被告発者が所属する研究機関は、本調査に際してとった研究費支出の停止や採択の保留等の措置を解除する。証拠保全の措置については、不服申立てがないまま申立て期間が経過した後、または、不服申立ての審査結果が確定した後、すみやかに解除されなければならない。
    2. [2]調査機関は、当該事案において不正行為が行われなかった旨を調査関係者に対して、周知する。また、当該事案が調査関係者以外に漏洩している場合は、調査関係者以外にも周知しなければならない。
    3. [3]告発された研究に係る資金を配分した機関及び被告発者が所属する研究機関は、上記[2]に準じて周知をするなど、不正行為を行わなかったと認定された者の名誉を回復する措置及び不利益が生じないための措置を講じなければならない。
    4. [4]告発が悪意に基づくものと認定された場合、告発者が研究機関に属する者であるときは、当該研究機関は、当該者に対し、内部規程に基づき適切な処置を行わなければならない。

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6 不正行為と認定された者に対する資金配分機関の措置

競争的資金等に係る研究活動において不正行為が行われたと認定された場合、当該認定に係る者に対し、厚生労働省及び当該競争的資金等の配分機関は、以下の指針に沿って措置をとるべく、規程等を整備することとする。

  1. 1措置を検討する体制
    1. (1)措置を検討する委員会
      厚生労働省は、競争的資金等に係る研究活動における不正行為に関する被認定者への競争的資金等に係る措置(以下「措置」という。)を検討する委員会(以下「委員会」という。)を厚生科学審議会科学技術部会の下に設置するものとする。
    2. (2)委員会の役割
      委員会は、厚生労働省の求めに応じて、被認定者に対してとるべき措置を検討し、その結果を厚生労働省に報告する。
    3. (3)委員会の構成
      委員会は、原則として、不正行為と認定された研究に係る研究分野の研究方法や、不正行為について的確な判断を下すために必要な知見を持ち、被認定者や当該不正行為に係る研究に直接の利害関係を有しない有識者で構成される。また、原則として、被認定者が所属する研究機関に属する者は委員としない、あるいは、当該被認定者に係る審議に参加させないものとする。
      ただし、研究分野の特性等により、他に適任者が見当たらず、かつ、公正な審議が確保できると判断されるときは、この限りではない。
  2. 2措置の決定手続
    1. (1)委員会における検討
      1. [1]委員会は、厚生労働省の求めがあったとき検討を開始する。
      2. [2]委員会が措置を検討するに当たっては、調査機関に対するヒアリングなどを行い、調査結果を精査し、調査内容、調査の方法・手法・手順、調査を行った調査委員会の構成等を確認し、不正行為の重大性、悪質性、被認定者それぞれの不正行為への関与の度合や不正行為があったと認定された研究(グループ)における立場、不正行為を防止するための努力の有無などを考慮した上で、速やかに措置についての検討結果を厚生労働省に報告する。
    2. (2)措置の決定
      資金配分機関は、委員会の報告に基づき、被認定者に対する措置を決定する。資金配分機関は、決定に当たっては委員会の報告を尊重するものとする。なお、被認定者の弁明の聴取及び措置決定後の不服申立ての受付は行わない。
    3. (3)措置決定の通知
      資金配分機関は、決定した措置及びその対象者等について、各資金配分機関に通知する。不正行為が行われたと認定された研究に資金を配分した機関は、措置の対象者及びその者が所属する機関に通知する。通知を受けた資金配分機関は、決定された措置に沿った対応をとるものとする。また、厚生労働省は、当該措置及びその対象者等について、国費による競争的資金及びそれに類似する競争的要素を有する研究費の配分制度を所管する各府省に情報提供する。
  3. 3措置の対象者
    措置は次の者が対象となる。
    1. [1]不正行為があったと認定された研究に係る論文等の、不正行為に関与したと認定された著者(共著者を含む。以下同じ。)。
    2. [2]不正行為があったと認定された研究に係る論文等の著者ではないが、当該不正行為に関与したと認定された者。
    3. [3]不正行為に関与したとまでは認定されないものの、不正行為があったと認定された研究に係る論文等の内容について責任を負う者として認定された著者。
  4. 4措置の内容
    資金配分機関は3に掲げる者に対して、以下の措置のうち一つあるいは複数の措置を講じる。原則として措置の内容は以下を標準とし、不正行為の重大性、悪質性、個々の被認定者の不正行為への具体的な関与の度合や不正行為があったと認定された研究(グループ)における立場、不正行為を防止するための努力の有無等により、事案ごとに定められるものとするが、委員会が特に必要と判断するときは、以下によることのない措置をとることを妨げない。特に告発等がなされる前に論文等を取り下げていた場合に係る被認定者に対する措置は、3[3]に掲げる者に対してはとらない。また、3[1]に掲げる者に対しても、情状によって適切な配慮がなされるものとする。さらに、告発等がなされた後、直ちに当該論文等を取り下げた場合、3[3]に掲げる者に対しては措置をとらないことができる。
    1. (1)競争的資金等の打ち切り
      1. [1]3に掲げるすべての者に対して、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律又は委託契約等に基づき、不正行為があったと認定された研究に係る競争的資金等の配分を打ち切り、当該競争的資金等であって、不正行為の認定がなされた時点で使用されていない残りの分の研究費及び次年度以降配分が予定されている研究費がある場合は、以後配分しない。なお、不正行為があったと認定された研究が研究計画の一部である場合、当該研究計画に係る研究全体への資金配分を打ち切るか否かは、措置対象者以外の研究者の取扱いを含めて、事案ごとに委員会が判断するものとする。
      2. [2]3の[1]及び[2]に掲げる者に対して、不正行為があったと認定された研究に係る競争的資金等以外の、現に配分されているすべての厚生労働省所管の競争的資金等であって、不正行為の認定がなされた時点において未だ使用されていない残りの分の研究費及び次年度以降配分が予定されている研究費がある場合は、以下のとおりとする。
        • ア)3の[1]及び[2]に掲げる者が研究代表者となっている研究については打ち切りとし、以後交付しない。
        • イ)3の[1]及び[2]に掲げる者が研究分担者又は研究補助者となっている研究については、当該者の研究費使用を認めない。
    2. (2)競争的資金等申請の不採択
      1. [1]厚生労働省所管の競争的資金等で、不正行為が認定された時点で3に掲げる者が研究代表者として申請されているものについては採択しない。
      2. [2]厚生労働省所管の競争的資金等で、不正行為が認定された時点で3に掲げる者が研究分担者又は研究補助者として申請されているものについては、当該者の差し替えがなければ採択しない。また、採択後に、差し替えがなく採択されたことが判明した場合は、その採択を取り消すことができる。
    3. (3)不正行為に係る競争的資金等の返還
      不正行為があったと認定された研究に配分された研究費(間接経費もしくは管理費を含む。以下この(3)において同じ。)については、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律又は委託契約等に基づき、その一部又は全部の返還を求める。返還額については、以下の[1]及び[2]を原則としながら、不正行為の悪質性や研究計画全体に与える影響等を考慮して定められるものとする。
      なお、[1]、[2]いずれの場合も研究機関と契約する研究の場合は、研究機関が第一次的な責任を負う。研究機関は、被認定者や不正行為と認定された当該研究グループに対して求償するものとする。
      1. [1]未使用研究費等の返還
        • ア)当該研究全体が打ち切られたときは、当該研究グループに対し、未使用の研究費の返還及び契約済みであるが、納品されていない場合の契約解除や、未使用の場合の機器等の物品の返品とこれに伴う購入費の返還を求める。なお、違約金の支払い義務が発生した場合は当該研究グループの自己負担とする。
        • イ)当該研究全体が打ち切られていないときは、3に掲げるすべての者に対し、これらの者に係る未使用の研究費の返還及び契約済みであるが、納品されていない場合の契約解除や、未使用の場合の機器等の物品の返品とこれに伴う購入費の返還を求める。なお、違約金の支払い義務が発生した場合は、3に掲げるすべての者の自己負担とする。
      2. [2]研究費全額の返還
        研究の当初から不正行為を行うことを意図していた場合など極めて悪質な場合は、3の[1]及び[2]に掲げる者に対し、これらの者に係る当該研究に対して配分された研究費の全額の返還を求める。なお、不正行為があったと認定された研究が研究計画の一部である場合、当該研究計画に対して配分された研究費の全額の返還を求めるか否かは、事案ごとに委員会が判断するものとする。
    4. (4)競争的資金等の申請制限
      3に掲げるすべての者に対して、厚生労働省所管のすべての競争的資金等の申請を制限する。制限期間については、不正行為の重大性、悪質性及び不正行為への関与の度合に応じて委員会が下記の区分に従い定める。なお、他府省所管の競争的資金等を活用した研究活動に不正行為があった者による申請も、他府省等が行う不正行為の認定に応じて同様に取り扱うものとする。
      1. [1]3の[1]に掲げる者
        すべての厚生労働省所管の競争的資金等に対する研究代表者、研究分担者(共同研究者)及び研究補助者としての応募について、不正行為と認定された年度の翌年度以降2年から10年。
      2. [2]3の[2]に掲げる者
        すべての厚生労働省所管の競争的資金等に対する研究代表者、研究分担者(共同研究者)及び研究補助者としての応募について、同じく2年から10年。
      3. [3]3の[3]に掲げる者
        すべての厚生労働省所管の競争的資金等に対する研究代表者、研究分担者(共同研究者)及び研究補助者としての応募について、同じく1年から3年。
  5. 5措置と訴訟との関係
    資金配分機関が行う措置と調査機関の認定に関する訴訟との関係については以下のとおりとする。
    1. (1)措置後に訴訟が提起された場合
      資金配分機関が措置を行った後、調査機関に設置された調査委員会が行った不正行為の認定について訴訟が提起されても、認定が不適切である等、措置の継続が不適切であると認められる内容の裁判所の判断がなされない限り、措置は継続するものとする。
    2. (2)措置前に訴訟が提起された場合
      措置を行う前に、調査機関に設置された調査委員会による不正行為の認定について訴訟が提起された場合についても、訴訟の結果を待たずに措置を行うことを妨げない。措置を行った後の取扱いについては上記(1)によるものとする。
    3. (3)措置後の訴訟において認定が不適切とされた場合
      1. [1]措置を行った後、調査機関に設置された調査委員会による不正行為の認定が不適切であった旨の裁判が確定したときは、直ちに措置は撤回される。措置により研究費の返還がなされていた場合は、資金配分機関は、その金額を措置対象者に再交付することができる。
      2. [2][1]のとき、措置により研究費の打ち切りがなされていた場合は、資金配分機関は打ち切りの対象となった研究の状況に応じて交付を再開するか否か判断するものとする。
  6. 6措置内容の公表
    資金配分機関は、措置を決定したときは、原則として、措置の対象となった者の氏名・所属、措置の内容、不正行為が行われた競争的資金等の名称及び当該研究費の金額、研究内容と不正行為の内容、調査機関が行った調査結果報告書などについて速やかに公表する。ただし、告発等がなされる前に取り下げられた論文等における不正行為に係る被認定者の氏名・所属を公表しないことができる。なお、告発者名については、告発者の了承がなければ公表しない。
  7. 7措置内容等の公募要領等への記載
    資金配分機関は、不正行為を行った場合に資金配分機関がとる制裁的措置の内容や措置の対象となる者の範囲について、競争的資金等の公募要領や委託契約書(付属資料を含む。)等に記載し、研究者がそれをあらかじめ承知して応募あるいは契約するように取りはからうものとする。

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