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全般コード化情報の分析について

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全般コード化情報の分析について



1 全般コード化情報の収集状況


  報告施設数 : 78施設



 インシデント収集結果

項目 件数
総事例数 2,406件
有効事例数 2,069件
無効事例数 337件


    無効事例内訳

内容 件数
入力内容が不足していた 12件
入力ミスがあった 283件
コード変換ミスがあった 42件


※入力内容不足の原因は、インシデントの内容(M)が不足していたためである。

※入力ミスとは、インシデントが発生した場面(L)とインシデントの内容(M)が対応していなかったものである。

※コード変換ミスとは、コード表に存在しないコードに変換されていたものである。



2 分析方針


 今回の分析は、以下の方針に基づき実施した。

1)収集した事例について、頻度を単純集計した(別紙1)。なお、患者の年齢、勤続年数、部署配属年数については、年代別など範囲を設定して集計した。

2)収集した事例について、発生場面と内容の相互関係が重要と考えられるため、それらのクロス集計を行った(別紙2)。

3)その他の重要な項目として、発見者、当事者の職種・勤務年数・部署配属年数、発生時間帯及び発生要因等についてクロス集計を行った(別紙2)。



3 分析項目


 以下の項目について、単純集計、クロス集計を行い、この結果を集計表グラフに整理した。

<単純集計>

 以下の項目について単純集計を行った。

  • インシデント総数(有効件数)
  • 発生月(A)
  • 発生曜日(B)
  • 発生時間帯(C)
  • 発生場所(D)
  • 患者の性別(E)
  • 患者の年齢(F)
  • 患者の心身状態(G)
  • 発見者(H)
  • 当事者の職種(I)
  • 当事者の勤続年数(J)
  • 当事者の部署配属年数(K)
  • インシデントが発生した場面(L)
  • インシデントの内容(M)
  • インシデントが発生した要因(N)
  • 間違いの実施の有無およびインシデントの影響度(O)

クロス集計

 下記の項目について、クロス集計を行った。また、各クロス集計を行う際の分析の視点を以下に示した。

集計項目(カッコ内はコード番号) 分析の視点
発生場面(L)
×発生内容(M)
インシデントの発生場面と、インシデントの発生内容にはどんな関係があるか
発見者(H)
×当事者の職種(I)
インシデントを起こした当事者の職種と、インシデントの発見者にはどんな関係があるか
当事者の勤続年数(C)
×当事者の職種(I)
インシデントを起こした当事者の職種とその勤続年数に傾向はあるか
当事者の部署配属年数(K)
×当事者の職種(I)
インシデントを起こした当事者の職種と部署配属年数にはどんな関係があるか
発生場面(L)
×発生要因(N)
インシデントの発生場面と、インシデントの発生要因にはどんな関係があるか
発生場所(D)
×発生時間帯(C)
インシデントの発生時間帯によって、インシデント発生が起こりやすい場所はどこか


4 分析結果


1)インシデントの発生状況(単純集計:11/19報告数2,069件)

(1) 発生月では、10月が最も多かった。

(2) 発生曜日は、火曜日から金曜日が多く、次いで月曜日、土曜日であり、日曜日は少なかった。また、平日が大部分を占めた。

(3) 発生時間帯では、午前10時から11時をピークとして、午前中が多かったが、他の時間帯にも分布していた。

(4) インシデント報告が多い発生場所は、「病棟」、「集中治療室」、「薬局」、「放射線撮影室・検査室」、「検査室」の順であり、「手術室」、「分娩室」は少なかった。

(5) 患者の性別は、男性がやや多く、年齢では60歳代、70歳代が多く、平均は54.41歳であった。

(6) 患者の心身状態は、「障害なし」が最も多く、以下、「床上安静」、「意識障害」、「歩行障害」の順であった。

(7) 発見者の5割は当事者本人であり、次いで同職種者、他職種者の順であったが、患者本人、家族、他の患者が発見者の事例もみられた。

(8) インシデントの当事者は、「看護婦・士」が最も多く、以下「医師」、「薬剤師」、「臨床検査技師」の順であった。

(9) 当事者の勤続年数では、約3分の1が「1年未満」であり、「3年未満」が約半数を占めていた。

(10) 当事者の配属年数では、45%が「1年未満」であった。

(11) インシデントの発生場面では、「処方・与薬」が最も多く、「その他の療養生活の場面」、「ドレーン・チューブ類の使用・管理」、「療養上の世話」、「検査」の順であった。

(12) インシデントの発生内容は、「処方・与薬」では「与薬量間違い」、「無投薬」、「投与速度間違い」、「時間・日付間違い」、「薬剤間違い」、「患者間違い」が多かった。「ドレーン・チューブ類の使用・管理」では「自己抜去」が圧倒的に多かった。「その他の療養生活の場面」では、「転倒」、「転落」が多かった。

(13) インシデントの発生要因では、「確認」が最も多く、以下「観察」、「勤務状況」、「判断」、「連携」の順であった。

(14) 影響度は、「小さい」が最も多かったが、「中等度」、「大きい」もみられた。また、「その他」とするものも多かった。


2)インシデントの発生場面と発生内容のクロス集計

(11/15報告数920件)

(1) 「処方・与薬」では「注射」及び「内服」ともに、「与薬量間違い」、「時間・日付間違い」、「無投薬」が多かった。また、「注射」では、「投与速度間違い」が多かった。

(2) 「ドレーン・チューブ類の使用・管理」では「自己抜去」が圧倒的に多かった。

(3) 「療養上の世話」では、「患者観察」での「転倒」・「転落」が、「その他の療養生活の場面」では、「移動中」での「転倒」・「転落」が多かった。


3)その他のクロス集計等

(1) 看護婦・士は当事者による発見が多いが、医師や薬剤師は他職種者による発見が多い。

(2) 医師のインシデントは、勤続年数1年未満のものが約3分の2を占めていた。

(3) 看護婦・士、薬剤師、臨床検査技師は部署配属年数の長短には関係なくインシデントが報告されていた。

(4) 発生要因の「連携」についてみると、「看護職間の連携不適切」が最も多かったが、「医師と看護職の連携不適切」も多かった。「連携」と発生場面のクロス集計では、「看護職間」及び「医師と看護職間」とも、「与薬・処方」、「情報伝達過程」が多かった。



5 考察及び今後の収集・分析について


 今般初回ながら、傾向について一定の結果が得られたのは大きな成果といえる。あわせて、全般コード化情報の収集システムがより一層有効に機能するために、いくつかの改善点に関する示唆も得られた。

1)今回の結果について

 今回は初回の集計であるにもかかわらず、2000例以上もの事例が収集されたのは、対象医療機関の熱心な参加意欲を示すものと言えよう。
 また、国としてのこのようなインシデント事例収集は、世界的にも初めてであるが、興味深い結果が示されたことから、今後より多くの事例を収集し、インシデント事例の発生状況を明らかにしていくことが望まれる。

2)報告数・参加医療機関数を増加させること

 今後、報告数及び参加医療機関数を増やし、より正確な結果を得ることが必要である。また、このためには、コード化情報の入力方法やコードの解釈等に関するマニュアルを充実するなど、医療機関が参加しやすい条件の整備に努める必要がある。

3)医療機関への情報のフィードバック

 参加医療機関が参加することのメリットとして、他施設の情報と比較した自施設でのインシデントの特徴を把握でき、医療安全対策への取り組みが進められることが考えられる。
 このためには、全国的な集計結果を提供するだけではなく、参加医療機関が自らの目的にあった加工ができるよう、集計プログラムを配布する等の取組が必要である。

4)分析方法の確立

 今後は、インシデント発生の現状をより明確にする分析手法を開発する事が重要である。


以上


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