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社会保障審議会介護保険部会資料(2004.2.23)


平成15年度全国介護支援専門員実態調査結果報告(中間報告要旨)

全国介護支援専門員連絡協議会 会長 木村 隆次


はじめに
 平成14年10月現在、全国に24,394の居宅介護支援事業所が存在し、67,346人の介護支援専門員が働いている実態がある。介護保険制度の要として導入されたケアマネジメントを行う介護支援専門員の実態が、今回の調査を通して見えてきた。
 今回の調査は、全国規模で、昨年11月~12月にかけて、事業所を介さず、3,543人の介護支援専門員に対して、直接、居宅介護支援業務(ケアマネジメント)の実態や介護支援専門員の意識を調査したところに大きな意義がある。
 調査の概要は、中間報告書の1頁に記載したとおり、3,543人に調査票を配布し、1,871人から回答を得た。回収率は、52.8%と高い数字となっており、調査票に書ききれないほどの「意見」や「考え」が色濃く反映された調査結果となっている。
 本日は、中間報告であるが、介護支援専門員を取り巻く様々な課題が見えてきたので、こうした課題を解決するための方向性について報告したい。


論点

 介護支援専門員は、利用者への訪問を重要な項目と考えているが、現状は、いろいろな業務に忙殺されて、本来の業務ができていない実態がある。

 介護支援専門員は、居宅介護支援(ケアマネジメント業務)において、利用者宅への訪問について、93%が重要と考え、計画見直しのための訪問を86.4%が重要と考えている。また、サービス担当者会議についても、81.5%が重要と考えていることがわかった。
 しかし、実態は、担当者会議の開催ができている割合は、37.7%にとどまっており、その、理由として31.8%の人が、時間がないことを挙げている。
 一方、勤務実態をみると、47.8%の人が休日出勤を行っており、69.9%の人が時間外勤務を行っている実態があることから、運営基準にしたがって、居宅介護支援業務を行うために、休日出勤や残業等を行いながら、なんとか業務を行っている姿が浮かびあがってきた。

 今後の方向性
 ○生活の場の訪問を中心にケアマネジメントの充実を図る。
 ○介護支援専門員の勤務時間の正常化を図る。
 ○介護支援専門員の担当者数を30人とする。

 ケアマネジメントの質を高めるためには、業務範囲の明確化、担当利用者数の制限と報酬のアップが必要と考えている。

 介護支援専門員は、60.6%の人がやりがいを感じているが、一方で、制度に関する悩みを35.4%の人が持っており、現在の報酬額について、59%の人が不満を持っていることがわかった。その理由として挙げられるポイントが2点ある。

 (1) 業務の範囲が明確でない。
何でもかんでも介護支援専門員の仕事になってしまう風潮があり、どこまでが介護支援専門員の仕事なのか、利用者のことを考えればやらざるを得ない実態がある。
 (例)本来、保険者の仕事である処遇困難事例もケアマネにくる。

 (2) 50人以上の担当者を持たないと自立できない。
50人以上の担当者を持たないと、自立できない。しかし、50人以上の担当者を持つと、適切な居宅介護支援業務ができないジレンマがある。

今後の方向性
 ○ケアマネジメント業務の範囲を明確にする。
 ○30人で自立できる介護報酬を設定する。
 ○困難事例の相談機関を設置する。 →基幹型在宅介護支援センター機能の強化

 利用者本位のケアマネジメントを実践するために、公平・中立な視点が重要であると考え、自立したいと考えているが、実態はそこまでいたっていない。

 →介護支援専門員は、公正・中立に仕事を行いたいと考えているが、併設事業所が多く、介護報酬が少ないために自立できない現状があり、47.5%の人が独立したほうが良いと考えている。独立しなくても良いとする意見の中にも、現在の報酬における経営の困難さを挙げ、独立しなくても良いと考えている人が多い。

 →居宅介護支援事業所が自立しないと公平・中立なケアマネジメントはできないとする意見が多かったが、自立するためには、介護支援専門員のスキルアップを図る必要があり、研修の義務化や研修カリキュラムの見直しなどを求める声が多く見られた。

  今後の方向性
  ○公平・中立なケアマネジメントが実施できる環境をつくる。→事業所の自立
  ○介護支援専門員の教育を充実させる。→研修カリキュラムの見直しと義務化
  ○居宅介護支援業務に就く人の研修をきちんと行う。→更新時研修の義務化


介護支援専門員の声(集約)

 「事業所としての独立」については、「したほうが良い」と答えた人は「したほうが良いが、現在の報酬では経営上難しい」と考え、一方「しなくても良い」と答えた人は「現在の報酬では経営上難しいので、しなくても良い」と考える人が多い。

 ケアマネ一人当たりの担当数を30人に減らしてほしい。
 個々の利用者に対してゆとりを持って対応できる。
 研修を受ける時間も生まれる。
 ケアマネの質の向上につながる。

 事務処理に時間を取られすぎて、個々の利用者に対してゆとりを持って対応できない。

 受験資格を厳しくしてほしい。だれでも受験できるような状況は好ましくない。

 研修については介護保険の知識だけではなく、対人援助や面接技法、ケアマネの倫理にまで踏み込んでほしい。

 困難事例について相談できるような機関がほしい。



平成15年度介護支援専門員の実態に
かかる全国調査結果(中間報告)


-介護支援専門員の質の向上に向けた現状と課題の把握-



平成16年2月19日


全国介護支援専門員連絡協議会



目次

第1章 調査結果概要
 調査目的
 調査方法及び内容
 回収結果
 調査実施都道府県

第2章 介護支援専門員実態調査結果(単純集計)
 介護支援専門員の男女比
 介護支援専門員の年齢
 介護支援専門員の経験年数
 介護支援専門員になる前の勤務先
 介護支援専門員が持っている資格
 介護支援専門員の雇用形態
 介護支援専門員の兼務実態
 事業所の総利用者数
 1人の介護支援専門員の担当者数
10 介護報酬を請求した件数
11 休日出勤の実態
12 時間外勤務の実態
13 サービス残業の実態
14 介護支援専門員の報酬
15 報酬への満足度
16 希望する報酬額
17 居宅介護支援業務の実施状況
18 妥当な担当件数
19 妥当な報酬額
20 居宅介護支援業務の重要な項目
21 不正請求につながる不適切な指示
22 ケアプラン作成における不適切な指示
23 管理者の介護支援専門員の資格
24 事業所の独立
25 介護支援専門員としてのやりがい
26 現在の悩み

第3章 介護支援専門員の声
 事業所の独立に関する意見
 ケアマネジメントの質を高めるための意見

資料
 平成15年度 介護支援専門員(居宅)全国調査票
 調査研究委員会委員名簿


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